鉄壁の守り
人は本当に驚いた時、思考自体が付いていかないものなのか。
それはミリエンヌとメイドのネネにも言える事だった。
手は痙攣を起こしたように小刻みに震えるが、体は固まったかの様に、暫く動かなかった。
「お、お、お嬢様、わた、わた、私達は誘拐されたのでしょうか?」
「そ、その様ね」
お互いやっと強張りを解いた手を握り合えた。
「きっと大丈夫よ。従者が直ぐに衛兵の所に駆け込んでくれているから」
そう励ますしかない絶望的な状況に、ミリエンヌの頭の中には、愛しいノア様の姿しか浮かばなかった。
「きっと助けて下さるわ」
その言葉は、自分を励ます意味でもあった。
それにしても、この誘拐は計画的なもの?
犯人の目的は何?
人目の多い街中で拉致するなんて、強引に事を進めたのは何故?
私を狙ったの?それとも貴族令嬢なら誰でも良かったの?
混乱でよく回らない頭でミリエンヌはひたすら考えた。
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「ネネ、鎧戸の2箇所の鍵を閉めて、窓に鍵を掛けて頂戴」
ネネはやっと正気に戻ったらしく、無言でてきぱき行動を始めた。
「それとドアを破られない様に、鍵を掛けて上下に閂を……ドアノブを念の為此れで固定して頂戴」
そう言ってストールを渡す。
実はこの馬車は特別製。
母パトリシアはこういった特許をたくさん持っていて、この馬車もそうだ。
商売上狙われる事も多い為、自衛手段が取れるように改造されていた。
移動の時が最も危ないからだった。
ネネはドアの取っ手にストールを巻き、固く結んだ。
「この端はどうしましょう?」
「そうね、閂に噛ませましょうか。これは特別な糸で編まれた、丈夫なストールなのよ」
二人で協力して閂部分に噛ませた。
押したり引いたりするがびくともしない。
そして最後に床にあったカーペットを捲り、角の目立たない所にある小さな板をずらした。
「お嬢様それは?」
「息が出来ないと困るでしょう?空気穴よ」
「そうなんですか」
「但し見つからないようにする為にここにあるの」
「それは何故ですか?」
「これを知られて、煙で燻されでもしたら大変だからって」
「わぁ、頭が良い!」
「すべてお母様の考案した物よ、この馬車自体燃えにくい素材で作られているしね」
「安心しました、一時はどうなるかと思いましたけど」
「これで時間が稼げるわ」
自分達で出来る事はやった。守りは鉄壁だ。
此れで諦めてさっさと去ってくれればそれが一番だが、時間が稼げて人目につけばそれも良し。
でも私が公爵令嬢と知ってこんな事を?
何だか自分が狙われた事に、違和感が付きまとった。
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「お嬢様、馬車が止まる様です」
「あれからそう時間は経っていないわね、案外近場だったかも」
ゆっくり馬車が停止した。
そして男の声がする。
「おい、降りて来い!」
「お嬢様⋯⋯」
「大丈夫、このままゆっくりしていましょう!」
「お、おい!聞こえないのか!」
「⋯⋯」
業を煮やした男が、馬車のドアに手を掛けて開けようと力を込めたが、びくともしない。
「どうなってんだ!」
「早く開けなさいよ!全くグズなんだから!」
「女の声がしたわ」
私の耳に確かに、甲高い女の声が聞こえた。
「お嬢様、犯人には女も居るのですね」
小声でネネが言う。
「そうみたい。それにしても、あの声と口調どこかで⋯⋯?」
「早くなさい!開かないなら蹴破ればいいでしょう!」
「そんな簡単に!」
ドンドン馬車が横揺れする。
しかし、ドアはびくともしなかった。
「鍵を開ければいいでしょう、誰か鍵開け出来ないの?」
外では揉めている様だ。
今ある状況で、犯人は複数。
リーダーはあの甲高い声の女、男の協力者が複数。
「やってみます!」
そう男の声が聞こえて、今度は鍵穴をガチャガチャやっている。
そして暫くして、ガチャと音がした。
「開きました!」
そう言ってドアを開けようとするが、びくともしないのだ。
「くそっ、どうなっているんだ!」
馬車全体が『鉄壁の要塞』の様になっている。
段々時間が経ち、犯人グループも焦っているようだ。
「何をしているのよ、早くして頂戴。ここはまだ王都に近いのよ。人目に付くじゃないの!」
その声を聞いて、
「もしかして、あのエリー何とかって言う人じゃありませんか?」
ネネがそう言った。
「確かにその様ね。まさかこんな強硬手段に出て来るなんて!」
ミリエンヌは油断した自分を、責めた。
「ごめんなさいね、ネネをこんな事に巻き込んで」
「お嬢様は何も悪くありません!」
ネネは涙を浮かべた眼差しで、しっかりと頷いた。
「大丈夫、ノア様が必ず見つけて下さるわ」
二人で身を寄せて、神に祈った。
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今日の題名『鉄壁の守り』
私の大好きな漫画から〜分かるかな?
そう、某バレー漫画より頂きました♪
サブタイトルが一番苦手、なのです〜( ̄+ー ̄)
その次が人物名!
お気づきの方いらっしゃるでしょうか、多治見市から取ったタジミール!
センスがないので苦し紛れです!




