おごり高ぶり
エリーはトレードマークである黄色いドレスを、汗でじっとり湿った震える手で握りしめた。
そしてエリーは心の中で思った。
『今言えばまだ大丈夫かも』
だって、別に人が死んだ訳でも無いし。
ただちょっと誘拐された事実を利用しただけ。
成功報酬は約束したけど、こんなに注目されたら無理だって分かるだろうし。
諦めるよね。
誘拐したのだって、あいつらだし。
『私はただ助かりたかっただけ』
被害と言っても、我が家が出した二倍のお金だけ……。
『奴隷商に売ると脅されて、その場で吐いた嘘を犯人達が気に入って採用しただけ』
うん、真実に少しの嘘を混ぜただけで、大丈夫な気がしてきた。
『そうだ、言えば命はないぞって脅されたと言えば良いんじゃないかしら』
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「分かりました、本当の事をお話します」
「それで?」
「実は、私達脅されていたんです」
「正直に話して頂けるのですね」
「怖くて……口を噤むしか方法がありませんでした」
「さぞ怖かったでしょう」
「それはもう。あの日スペンサー家から帰る時に、誘拐されましたの」
「それはどこでですかな」
「あの日、お友達の店舗を探していて、道に迷ってしまったんです。そこで囲まれて」
「それから?」
「気が付いたら地下室みたいな所に押し込められて、酷い扱いを受けて。奴隷商に売りつけるって」
「それをどうやったのですか?」
エリーはこのまま騙し通せると思った。
しかし話している内に、犯人達を納得させた自慢が顔に出ていた。
「最初は怖かったのです。沢山泣きました。でもメイドが冷静で、励ましてくれたんです」
「⋯⋯」
「でもあいつら、高値で奴隷商に売るって⋯⋯」
「⋯⋯」
「それをお父様なら幾らでも出すからって」
「ほう、それで?」
「ついでに二重取りしてはどうかって言ったら、ようやく心が動いた様で」
「因みに二重取りとは?」
「婚約者のノア様からも取れますよって⋯⋯」
「成程、その提案に乗った訳ですな」
「そうなんです!」
「それならなぜ病院でその旨を言わなかったのですか?」
「そ、それは⋯⋯犯人グループが怖かったのですわ」
「そうですか」
「言えば命はないぞと脅されて。それでです!」
「成程」
「はい。これで私の容疑は晴れましたね。では帰らせて頂きます」
「いや、まだお帰り頂く訳にはいかないのですよ」
「だって誰にも迷惑かけずに、解決したじゃありませんか。捕まったのでしょう?お金だって私の父が出したのだし」
「それはそうと、誰が捕まったか、気になりませんか?」
「どうせあの4人の誰かでしょう?」
「4人?」
「えーと、ハイドン、カーター、ジェイ、リックだったかしら?」
指を折りながら、エリーは答えた。
「よく名前まで覚えていましたね」
「そうでしょう?自慢じゃないけど、記憶力は良いの。捕まったなら良かったわ」
取り調べ官はサラサラメモを書いて、控えの取り調べ官に渡した。
そのメモを持ち取り調べ官が部屋を出て行く。
「今、何を渡しましたの?」
「お嬢様からお聞きした犯人達の名前です」
「捕まったのでしょう?」
「ええ、捕まえましたよ。身代金の伝言役の子供をね」
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その頃、犯人グループのアジトでは、不穏な空気が漂っていた。
「あの女、成功報酬を約束しながら、知らん顔を決め込みやがったな!」
犯人グループのリーダーハイドンは、怒り心頭だった。
「待てども待てども、連絡が無い!騙しやがったか、共犯の癖に」
「ハイドンー。俺、何だか嫌な予感がするよ。ずらかった方がいいと思う。金持って逃げようよ!」
ジェイが不安そうに言う。
「そうだよ、何だか上手くいき過ぎたって思ってたけど、新聞が大々的に載せただろう?手にした金だって大っぴらに使えないじゃ無いか」
カーターからの不満は分かっていた。
「大金を手にして豪遊しようかと思ったら、ハイドンからストップが掛かるし」
リックも不満タラタラだ。
「あの女、成功報酬を約束したんだ。それを貰わねえうちは、動けねぇ」
「あの女、隣国に帰るんだろう?だったら途中で頂けばいいじゃんか!」
「そうだよ、この国じゃ注目されて身動き取れねえのさ。却って移動中の方が人目も少ないんじゃ?」
「そうだな、あの女の両親脅してたんまり頂くとするか。娘が俺達と共犯だって知ったら、口止め料も兼ねて何倍も取れるんじゃねえか?」
「そうだよ、そうしよう!」
成功報酬について盛り上げっている内に、捜査の手がそこまで来ているとは気が付かないハイドン達だった。
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「それで供述は取れましたか?」
取り調べを担当している取り調べ官が数人で相談している。
「メイドのカリーも似た様な供述です」
「予め相談していたと⋯⋯」
「多分そうだろう」
「それと、この話をする時に自慢げに話すんですよ、あのお嬢さん」
「ただ犯人グループを捕まえて、共犯関係を立証しないと何時迄も引き止められません」
「そうだな、適当に話を合わせて引き延ばすか」
「そうしよう、隣国に逃げられたら手が出せん」
「共犯を疑われているのに気が付かないか、余程自信があるのか?」
その場に居合わせた取り調べ官は、多分後者だと思った。
いずれにしろ、犯人グループを捕まえれば済む話だった。
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