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おごり高ぶり

 エリーはトレードマークである黄色いドレスを、汗でじっとり湿った震える手で握りしめた。

 そしてエリーは心の中で思った。

『今言えばまだ大丈夫かも』

 だって、別に人が死んだ訳でも無いし。

 ただちょっと誘拐された事実を利用しただけ。

 成功報酬は約束したけど、こんなに注目されたら無理だって分かるだろうし。

 諦めるよね。

 誘拐したのだって、あいつらだし。


『私はただ助かりたかっただけ』

 被害と言っても、我が家が出した二倍のお金だけ……。


『奴隷商に売ると脅されて、その場で吐いた嘘を犯人達が気に入って採用しただけ』

 うん、真実に少しの嘘を混ぜただけで、大丈夫な気がしてきた。

『そうだ、言えば命はないぞって脅されたと言えば良いんじゃないかしら』


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


「分かりました、本当の事をお話します」

「それで?」

「実は、私達脅されていたんです」

「正直に話して頂けるのですね」

「怖くて……口を噤むしか方法がありませんでした」

「さぞ怖かったでしょう」

「それはもう。あの日スペンサー家から帰る時に、誘拐されましたの」

「それはどこでですかな」

「あの日、お友達の店舗を探していて、道に迷ってしまったんです。そこで囲まれて」

「それから?」

「気が付いたら地下室みたいな所に押し込められて、酷い扱いを受けて。奴隷商に売りつけるって」

「それをどうやったのですか?」

 エリーはこのまま騙し通せると思った。

 しかし話している内に、犯人達を納得させた自慢が顔に出ていた。


「最初は怖かったのです。沢山泣きました。でもメイドが冷静で、励ましてくれたんです」

「⋯⋯」

「でもあいつら、高値で奴隷商に売るって⋯⋯」

「⋯⋯」

「それをお父様なら幾らでも出すからって」

「ほう、それで?」

「ついでに二重取りしてはどうかって言ったら、ようやく心が動いた様で」

「因みに二重取りとは?」

「婚約者のノア様からも取れますよって⋯⋯」

「成程、その提案に乗った訳ですな」

「そうなんです!」

「それならなぜ病院でその旨を言わなかったのですか?」

「そ、それは⋯⋯犯人グループが怖かったのですわ」

「そうですか」

「言えば命はないぞと脅されて。それでです!」

「成程」


「はい。これで私の容疑は晴れましたね。では帰らせて頂きます」

「いや、まだお帰り頂く訳にはいかないのですよ」

「だって誰にも迷惑かけずに、解決したじゃありませんか。捕まったのでしょう?お金だって私の父が出したのだし」

「それはそうと、誰が捕まったか、気になりませんか?」

「どうせあの4人の誰かでしょう?」

「4人?」

「えーと、ハイドン、カーター、ジェイ、リックだったかしら?」

 指を折りながら、エリーは答えた。

「よく名前まで覚えていましたね」

「そうでしょう?自慢じゃないけど、記憶力は良いの。捕まったなら良かったわ」


 取り調べ官はサラサラメモを書いて、控えの取り調べ官に渡した。

 そのメモを持ち取り調べ官が部屋を出て行く。


「今、何を渡しましたの?」

「お嬢様からお聞きした犯人達の名前です」

「捕まったのでしょう?」

「ええ、捕まえましたよ。身代金の伝言役の子供をね」


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


 その頃、犯人グループのアジトでは、不穏な空気が漂っていた。


「あの女、成功報酬を約束しながら、知らん顔を決め込みやがったな!」

 犯人グループのリーダーハイドンは、怒り心頭だった。

「待てども待てども、連絡が無い!騙しやがったか、共犯の癖に」


「ハイドンー。俺、何だか嫌な予感がするよ。ずらかった方がいいと思う。金持って逃げようよ!」

 ジェイが不安そうに言う。

「そうだよ、何だか上手くいき過ぎたって思ってたけど、新聞が大々的に載せただろう?手にした金だって大っぴらに使えないじゃ無いか」

 カーターからの不満は分かっていた。

「大金を手にして豪遊しようかと思ったら、ハイドンからストップが掛かるし」

 リックも不満タラタラだ。


「あの女、成功報酬を約束したんだ。それを貰わねえうちは、動けねぇ」

「あの女、隣国に帰るんだろう?だったら途中で頂けばいいじゃんか!」

「そうだよ、この国じゃ注目されて身動き取れねえのさ。却って移動中の方が人目も少ないんじゃ?」

「そうだな、あの女の両親脅してたんまり頂くとするか。娘が俺達と共犯だって知ったら、口止め料も兼ねて何倍も取れるんじゃねえか?」

「そうだよ、そうしよう!」

 成功報酬について盛り上げっている内に、捜査の手がそこまで来ているとは気が付かないハイドン達だった。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


「それで供述は取れましたか?」

 取り調べを担当している取り調べ官が数人で相談している。

「メイドのカリーも似た様な供述です」

(あらかじ)め相談していたと⋯⋯」

「多分そうだろう」

「それと、この話をする時に自慢げに話すんですよ、あのお嬢さん」

「ただ犯人グループを捕まえて、共犯関係を立証しないと何時迄も引き止められません」

「そうだな、適当に話を合わせて引き延ばすか」

「そうしよう、隣国に逃げられたら手が出せん」

「共犯を疑われているのに気が付かないか、余程自信があるのか?」


 その場に居合わせた取り調べ官は、多分後者だと思った。

 いずれにしろ、犯人グループを捕まえれば済む話だった。



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