表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/74

エリー逃亡

「お嬢様、いけませんわ」

 モデリアーノ家のエリー付きのメイドは慌てて言った。

「これしか無いのよ。明日にはここを引き払って、隣国へ帰る事になるのよ!」

 エリーは必死の形相で言った。

「でも……」


「やるだけやらないと、きっと一生後悔するわ。ねえお願い、協力して!」

「それでも、旦那様を欺いてここから抜け出すなんて、無理です!」

「大丈夫、ここは治安の良い王都よ。人に紛れれば何とかなるでしょう。ねえ、お願い!」

 エリーお嬢様の命令で、今迄は疑問も持たずにただ従ってきた。

 しかしいくら王都とはいえ、護衛も付けず二人だけで抜け出すのは無謀と思える。


「ノア様を如何(どう)しても諦められないの!」

「お嬢様の一途なお気持ちは、痛いほど分かります。でも旦那様の決定に従わないと……」


「先程ね、報告書が届いたの。ノア様に群がる害虫を炙り出す為の。そしたらあの悪名高き女の娘がチョッカイを出していたのよ」

「それはどういった……?」

「ロザリンドって、この国では有名な悪女なんですって。その娘がノア様に接近して、色仕掛けをしているらしいの」

「それは大変です!」


「でね、その女絡みの事件で、ノア様が協力されたのを良い事に図に乗って。何だかノア様優しいから、つい同情されたのね。だから私からはっきり言ってやろうと思うの」

「何をですか?」

「いい加減に、ノア様を解放して頂戴って。もう事件も解決して平穏が戻ったのだからって。婚約者から婚約破棄されたからって、ノア様に手出しをしないで下さいって」

「そうですね、それが事実なら言って目を覚まさせないと!」

「でしょう?」

 お嬢様はにっこりと自信有り気に笑っていらした。


「それと面白い事に、何とその婚約破棄された相手、先日お会いしたハンサムな方いらしたでしょう?」

「あの馬車の方ですか?」

「そうそう。あの方氷の貴公子って、有名なプレーボーイらしいのね。あの方だったのよ!」

「まぁ!」

「ね、びっくりでしょう?あの事件で紳士お二人、仲良くなったのね」

 メイドは詳しくなかったが、事件があって怪我を負わされた令嬢達の訴えで、事件は解決した位の知識しか持っていなかった。

 何せ隣国の出来事で、興味も無かった。


「あの、ではそのロザ……何とかの娘が、お二人を狙っているのですね!」

「正解!だんだん読めて来たでしょう?母娘って似るのね」

「それならば、危険を教えて差し上げないと」

「男性はそういう所、疎い所がお有りになるから。気を利かせて教えて差し上げれば、ねっ、いい考えでしょう?」

「お嬢様、流石です!」

 メイドは盲信する余り、感心して何度も頷いていた。

 その時には、当初の目的だった『お嬢様の暴走を止める』という事をすっかり忘れていた。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 エリーの借りた一軒家は、短い期間だったにもかかわらず、彼女の悪癖『買い物中毒』の為に荷物で溢れ返っていた。

 気に入った物を我慢するという概念が無く、手当たり次第に買いまくった所為でもあった。

 家を引き払うに当たって、使用人達はその荷物の整理や梱包に追われて慌ただしく、エリーから注意が逸れていた。

 父親は書斎にこもり、執事と謝罪についての打ち合わせを行っていた。

 母親と姉は隣国の珍しい品を求めて買い物に行っており、エリーにとっては今が絶好のチャンスと思われた。


「お嬢様、今なら大丈夫です」

「さぁ、行くわよ!」

 護衛も連れず、二人で手を繋いで裏口からそっと出る。

 食材搬入用の木戸を抜けて、人波に紛れて見事に脱出に成功した。


「お嬢様、これからどうなさるおつもりで?」

「大丈夫、ちゃんと考えてあるの」

 そう言うと、なるべく人目に付かないように、二人で手を繋いで急ぎ足で乗合馬車に向かった。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


「失礼ですが、どちら様でしょうか?」

 門番がほとほと困ったと言って、執事に連絡を入れて来た。

 執事が出迎えて対応したが、女性が二人で護衛も付けずに、ミリエンヌお嬢様に会わせろと(らち)があかなかった。


「私はエリー・モデリアーノ。隣国の貴族よ。こちらのミリエンヌ?に会いたいの」

「今、私どものお嬢様を呼び捨てになさいましたか?」

「ああ、ごめんなさい。つい!ミリエンヌさんに是非ともお会いしなきゃいけないの。いいから取り次ぎなさい!」

「お約束も、先触れも頂いておりません。そのような方をお通しする訳には……」

「通らせてもらうわよ!」

「ちょっと、困ります!何をなさるんですか?」

 隣にいたメイドがすかさず、執事を押しのけた。

 打ち合わせ通りに。


「ミリエンヌさんー!どちらにいらっしゃるのぉー!出ていらして!」

 大声で二階に駆け上がり、それらしき方向へと進む。

 しかし公爵家は広く、ドアもずらりと並んでいた。

 広い廊下で騒いでいると、聞きつけたメイドや使用人達がわらわら出て来た。


「ミリエンヌさんのお部屋は?いらっしゃるんでしょう?」

 仁王立ちで鼻息も荒く、メイドの一人に睨みを利かせて言う。


「侵入者です!取り押さえて!」

 執事の声が響いた。

 エリーの連れて来たメイドは取り押さえられて、青い顔でウンウン言っていた。



評価、ブックマークお願いします(V)o¥o(V)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ