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局面打開の糸口

 数日後、ディラン様と私はアンナさんのお宅に再びお邪魔していた。


「親戚の方達が居ないと、何だかスッキリした様な感じね」

 ミリエンヌは屋敷を見回しながら言った。


「ええ。自分たちの取り分が無いと知ったら、それこそ潮が引くように」

「良かったと言いたいところだが、その義弟が到着したらまた来るんだろうな」

 ディラン様の言葉に、アンナさんは仕方が無いと笑った。


「それで先日お話を伺おうとしたのだけど、当時の被害状況とアンナさんなりの考え、そして調べて貰いたい事があるのよ」

 ミリエンヌがメモするノートを取り出しながら言った。


「当時の事を思い出すのは分かりますが、調べて欲しい事って?」

「それはお話を伺ってから説明するわ」

 羽根ペンとインクを執事に借りながらミリエンヌは答えた。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 それからアンナさんの記憶を頼りに、当時の聴き取りをしながら、時系列毎にまとめていった。

 最初はあやふやの部分も、ディラン様と記憶をすり合わせる事で、思い出すことも多かった。


 嫌がらせの始まった時期。

 些細な記憶や小さな思い付きや、気が付いた事、感じた事。

 ディラン様の記憶も合わせて、それら全てをメモしていった。


 小さな嫌がらせから拾い上げていった。

 意外にも人はやられた事はよく覚えている。

 勿論、ミリエンヌとてそうだ。

 その情景とセットで周りに居た人物もよく覚えている。

 だからアンナさんにもその時同席した者とセットで思い出して貰った。


 そして嫌がらせがエスカレートした時期。

 つまり見知らぬ他人が介入した時期。


 何処に行く時、男達がついてきていたのか。パターンがあったと思うか?

 何人程だったか。

 顔ぶれはいつも同じだったか?特徴は?


 屋敷を襲った強盗に似た背格好の者はいなかったか?

 使用人で不自然な辞め方をした者は居なかったか?

 強盗目的で無いと何故感じたのか?


「ありがとう。疲れたでしょう。思い出したくも無い事を……」

「いいえ。これは私の為でもありますから」

「当時の記憶を掘り起こすのはいいとして、それをどうするの?」

 ディラン様はピンとこないらしい。


「ロレーヌ様が襲われたと新聞で読みましたでしょう?彼女と話を擦り合せるのです」

 溜息混じりにミリエンヌは答えた。

「そうか。同じ犯人なら共通点があるかも知れない」


「でも何故、使用人を?」

「それが調べて欲しい事。アンナさんの生家で当時の使用人全員に犯人からの接触が無かったか」

「それは無いと思います」

 アンナさんはキッパリ言った。


「何故?」

「そんな事を私にする者はおりませんし、当時捜査が行われて使用人も調べられました」


「判らないわよ?本人がそうとは知らず、協力者になっているかも知れないから」

「そんな!」

 蒼白になったアンナさんに、先日の事を話して聞かせた。


 するとそれまでダンマリだったディラン様の顔色も、みるみる変わった。

「それが真実なら、狡猾で卑怯な奴らだ!」


「そうね、私はたまたまメイドが報告してくれたから、罠を張ることができたけど」

「そうとは気が付かず、犯行の手助けをした者が居るかもと?」

「もし本人がその時なり、後ででもいいわ。気が付いたらどうすると思う?」

「居た堪れずに辞めたかも知れないと?」

「まぁ、そのまま勤めてる可能性もあるけどね」


 アンナさんはブルブル震えながら、ドレスを無意識に握り締めていた。

「家の者を使うなんて、卑怯者め!」

 そこには気の弱かったアンナさんはもう居なかった。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 アンナさんのご両親はまだ滞在して居られたので、お呼びしてお話をする事にした。

 今までの状況をお話して、伯爵がお亡くなりになった今、再びアンナさんにも危険が迫るかも知れないと言うと、ホワイト伯爵夫人はショックで取り乱された。


 なのでフォローのつもりで、

「一番は私が危ないのですけどね!」

 と言うと、アンナさんが慌てて言った。


「すみません。母には刺激が強かった様です」

「ミリエンヌ嬢も怖いでしょうに、お強いですな」

 アンナさんのお父様であるホワイト伯爵が言った。

「強い訳ではありません。降り掛かった火の粉を払っているだけですわ」


「頼りにならなくて済まない」

 ディラン様が頭を下げた。

「頼りないのはなんとなく、分かっていましたよ。これからは頼りにしますからね」

 ミリエンヌの両親が不在の今、頼れるのはディラン様だけだ。

 私の言葉が嬉しかったのか、ディラン様の表情が何か変わった気がした。

 本当に頼みますよ、しっかりして下さいよ……ミリエンヌは心の中で祈る様に言った。


 アンナさんのご両親に使用人について聞くと、

「そう言えば、メイドがひとりあの後辞めましたわね」

 夫人が言った。

「実家の母親が病気でとか言ってなかったか?」

 ホワイト伯爵が夫人に確認する。

「……確かそうですわ。名前は……ジョリーンじゃなかったかしら?」

「ジョリーンなら覚えていますわ。ウチで5年ぐらい勤めたのではないかしら?」

 アンナさんも思い出したらしい。


「ジョリーンさん……とご実家とかって分かりますよね」

 ミリエンヌはメモにしっかり書き留めて言った。

「身元調査は雇う時に念入りにやっているから、引っ越していなければ分かるでしょう」

「じゃあ、住所教えて下さいね、それとなく呼び出せますか?」

「仲の良かったメイドにやらせましょう。お任せください」


「じゃあ、ディラン様はロレーヌ様のお見舞いを、私と一緒に行く手配をお願いします」

「分かった」

「それと皆さんお分かりかと思いますが、監視が付いていますので気が付かない振りで普段通りに過ごして下さい」

「普段通りですか?」

「ええ。相手に調べている事を知られる訳にはいきませんから」

 皆頷いて、お開きとなった。



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