出生の秘密
『邪悪な娘が怖い』
ケイトリンの母はさも簡単に人を傷つけたり、陥れたりする娘を怒れていた。
そして⋯⋯昔を思い出していた。
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モナーク侯爵夫人は、出産時に出血と長時間の陣痛で暫く死線を彷徨った。
回復の兆しを見せた時は、もう既に一ヶ月余り経っていて娘に会った時に違和感で一杯になった。
生後一ヶ月は、こんなに大きかったかしら?
一年程前に従姉妹が出産し、二ヶ月後にお祝いのパーティーが身内で開かれた。
その子と比べての違和感、そして顔つきや指、爪の形さえも全く違う。
母の勘とでもいうのだろうか?
その思いは時間の経過と共に確信へと変わった。
そして成長するに従って生えてきた頭髪がショッキングピンク!
産毛の時は細くまばらで、気が付かなかった
余りの違いに、夫の落ち着きも次第に無くなってきた。
夫も私も落ち着いた色の栗色の直毛だ。
夫の家系にも私の家系にも似た髪色、髪質は存在しなかった。
「あなた。この子は本当に私達の子供ですか?」
言ってはいけない言葉だと分かってはいた。
でも聞かなければならないと強く思った。
「……」
主人はダンマリを続けて顔を背けた。
「私たちの子にしては大きかったですわ」
「私達の子だ」
「それにあの髪色、普通ならば私の不貞が疑われるでしょうがそれも無い。どういう事でしょうか」
「……」
「またダンマリですのね。取替えでもしたのでしょう!私が意識を失っている間に!」
「……」
「私の子は何処ですか?何処に居るの!」
「済まない。子供はダメだった、亡くなったんだ」
「なぜ黙っていたの!」
「ショックを受けるかと思って……」
「お墓は何処ですか!」
それからは、泣いて喚いて暴れて⋯⋯倒れた。
お墓に行けたのは数日後、私の可愛いあの子はここに寂しく眠っている。
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『ケイトリン』
そう名付けた養女。
何処をどう見ても似ても似つかない。
「何処からの養女ですか?」
「⋯⋯」
出自のハッキリしない子供。
でも思わぬ所から思わぬ形で知らされた。
それは夫の親戚が滞在した時の事。
私が眠れずにバルコニーで涼んでいた時の事。
親戚と夫の声が建物に反射して、風に乗って聞こえて来た。
部屋が離れているので、油断したのだろう。
「それで上手く誤魔化せたのか?」
親戚の声だ。誤魔化せた?
私はその言葉に反応して、もっとよく聞こうと急いで身を乗り出した。
「誤魔化せたかは⋯⋯分からん。でもあの子の墓には連れて行った」
「そうか、ショックを受けただろう」
「それは当然だ。我が子が死んだのだ、でも母として良くやってくれている」
「ケイトリンをねぇ。出自を知ったら大変じゃないか」
「わざわざ言うつもりは無い。心労を掛けるだけだ」
「それにしても流石だね。自分の子じゃないと気づくのだから」
「あの髪では、時間の問題だった。両方の一族にあの髪の者は居ないからな」
「まさか生えてきてみたら、派手なピンク色だもんな。あの女にそっくりだ」
「それは口が裂けても言うな!」
「娼婦だからか?」
私の血の気が下がった。
「あの女が、私の子だと言うのだ。幾ら何でも相手は一人じゃ無い筈なのに」
「他人の子供かもしれんのに、タイミングが良かったのか」
「1〜2ヶ月ぐらい誤魔化せると思った」
「罪作りな⋯⋯夫人は大事にしてやるんだぞ」
「あぁ。もう子は望めないと医者から言われたから、周りは妾を勧めるのだが」
「妾囲うのか?」
「いや。あの子を育てさせるんだ、妾を持つつもりは無い」
大声を上げなかった私は自分の腕を噛んでいた。
歯が夜着を通して腕に食い込む。
何て事、夫の子かも分からない娼婦の子?
私の大事な子は亡くなって、あの冷たい墓の下で寂しい思いをしてるのに?
あのピンクの怪物は生きているの?ぬくぬくと?
その時私は決意したのだ。
じっと時を待つ事を⋯⋯。
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其れから、実家の執事を通して詳細を調べ上げた。
心配した高齢の両親は、離婚を勧めた。
でも実家は兄夫婦に代替わりし、私が帰っても居場所が無い。
再婚も子が産めぬのなら無理だろう。
私は何食わぬ顔で、結婚生活を続ける道を選んだ。
そして月日は流れ、あの怪物を親身になって教育するのは止めにした。
私が幾ら躾けても実の母親にそっくりの性格で、欲望に貪欲で手段を選ばない。
その実の母親はまんまと裕福な商人の後妻に収まり、贅沢三昧しているようだ。
ただ、あの容姿だ。
何処かですれ違ったりすればお互い親子と気が付くだろう。
幸か不幸か、今まで偶然に会った事は無いようだ。
あちらは裕福とはいえ平民。
棲み分けが出来ていて、とても残念だ。
でもそろそろ時期が来たのかもしれない。
待ちに待った時期が。
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一生懸命この身を削って書いてます!
それにしては……痩せないなぁ⋯⋯?( ̄+ー ̄)
それと建物から反射の声は私の実体験です!
まるで隣で喋っているかの如く、詳細に6階まで聴こえてきました、皆さんもご注意を!




