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2-4話




徹の唐突な申し出に智琉は思わず目を丸くした。

智「どういう意味だ?」

徹「お前さんが見出したその情報は、言うなれば案山子男を攻略する突破口だ。そこは否定しない。今までもそこを突かれて敗北に追いやられた事もあるからな。つまり俺にとってそれを知られるのは非常にまずい。だからこそ、それを知った相手には手ごころなんざ加えないって事だ」

徹の不敵な笑みに一瞬怯みはしたが、智琉の意思は変わらない。

智「構わない。今の俺にとっては強い相手と戦うのが理想だ。それにあんたのアンノウンの弱点が分かった今、どんな脅しにも屈する気は起きない」

智琉の真っ直ぐな瞳に徹は智琉の心情を理解した。

徹「そうかそうか、そりゃ失礼な事したな。んじゃ、さっさと終わらせてやるよ」

そう言うと徹は右手の人差し指を立て天を指した。

智「?」

徹「案山子男が変えられる重力の向きは六種類ある。まず東西南北の四方向。お前さんが今立っている重力は東に向いている。そして残りの二つは上下だ。下はこの世界の本来の重力の向き、上はその逆」

智琉は即座に徹の立てた人差し指の意味を理解した。と同時に辺りの壁や床を見回した。が、突起やへこみなど掴まれそうなものは一切なかった。

徹「なかなか感が良いな、俺が今から何をするか分かったみたいだな。今この場でお前さんの重力を上に変えるとどうなるか、掴まる壁も無けりゃ着地する床も無い広い青空を延々落ち続ける事になる。そして俺が連れてきたこの場所はあらかじめそういった掴めそうなものは取り除かせてある。この辺一帯を仕切っている俺だから出来る芸当でな」

智琉はレッド・ドラゴンを自分の前に立たせ防御の態勢をとった。

徹「無駄だ。案山子男が物体の重力を変えるのに触れる必要は無い。視界に映る物ならその場で変えられる。それに忘れたか?アンノウンを使う者は自分のアンノウンと繋がっているってのを。レッド・ドラゴンで防御したとしても、レッド・ドラゴンの重力を変えれば繋がっているお前さんにも重力の影響は同じ様に働く。どうあってもお前さんは俺の攻撃を防ぐ手段は残されていないって訳だ」

智「たしかに、防ぐ方法に関しては全く無いかもしれない。だが、攻める事に関しては別だ」

智琉がそう言った瞬間、徹の周囲にレッド・ドラゴンのエネルギー弾が突如現れた。

智「あんたにバレないようにひっそり仕掛けるのは神経使ったが、随分と長く話してくれたおかげでその時間はあった。地面を這うようにしてレッド・ドラゴンのエネルギーをあんたの足元に蓄積させ、そして今発動させた。防ぐ手段が無いのはあんたの方だ」

智琉が徹の周りを覆うエネルギー弾を徹に向けて放った瞬間、全てのエネルギー弾は徹の足元に勢いよく落ちていった。

智「!?」

徹「知ってたよ、お前さんのやってた事は。俺も伊達に修羅場潜っちゃいないからなあ」

言葉を失った智琉に対し、なおも徹は笑みを浮かべながら語り続けた。

徹「お前さんは案山子男が重力の力までは変えられないと思ってるみたいだがそれは違う。厳密に言うと出来るんだよ。ただしかなりの時間を要する事になる。だから必要だったんだよ、その時間が」

智「あんたがさっき、あんなに長く話していたのは……」

徹「さっきも言っただろ、それは案山子男の弱点だと、今までそこを突かれてきたと。だからその対策を考えた。そして出来たのがこれだ。話しを聞かせれば相手の注意もぼやけるし、お前さんの貼った智雑な罠にも対応できる」

智琉は思わず後ずさりをして逃げの姿勢をとった。

徹「もう遅い。さっきの間に重力の力を強めたのはお前さんの貼った罠だけじゃない。お前さん自身の重力も……」

その言葉を聞いてゾッとした智琉は自分の足が離れていくのを感じた。

智「ま、待って!」

徹「さよなら」

呼びかけもむなしく、智琉はそのまま真っ逆さまに空に落ちていった。

智「あああぁぁぁぁぁ……」

天に向かって落ちていった智琉の叫び声は地上にいる徹にはすぐに聞こえなくなった。誰もいなくなった路地裏で徹は一人で呟いていた。

徹「ま、心配すんな。見捨てたりはしねーよ。少しすりゃまた重力を戻してやるさ。さてと……」

徹はスマホを取り出し電話をかけた。

徹「ああ、俺だ。またいつもの頼むわ……ああ、落ちてくる奴を受け止めるクッション…………ああ、いつもの場所に。それと……」

電話中の徹は背後に誰かの気配を感じた。何故だかわからないが徹は気配のする方を振り向けずにいた。後ろの気配に神経がいき電話の会話は全く耳に入ってこなかった。

智「俺のレッド・ドラゴンってさ、翼が生えてんだよ。龍に翼なんて珍しくもないから特に何も思わなかったけど、今になって思ったんだ。翼があるなら飛べるんじゃないかってさ」

背後から聞こえたのは智琉の声だった。徹は思い切って声のする方を振り返った。そこには翼を広げ宙を飛んでいるレッド・ドラゴンと、それに乗っている智琉の姿があった。

智「そしたらこの通り、空中に飛べた訳だ。まあ、そう長くは飛べないよ、それは感覚で分かる。もって二、三分が限界だ。けどそれだけあればあんたに勝つぐらいは出来る筈だ」

徹はこの現状に思わず笑ってしまった。

徹「まさかな。稀にいるんだよなあ、空を飛べたり常時浮遊してるアンノウンが。そういうのには案山子男の能力は効きにくいんだが、まさかお前さんのもそうだったとは」

智「結局、あんたの案山子も役に立つ案山子じゃなかったな」

智琉はレッド・ドラゴンの口にエネルギーを溜め込み臨戦態勢を整えた。しかし、智琉とは対照的に徹は案山子男を自分のカードに戻してしまった。

智「え!?」

徹「もういいよ、合格だ。このまま続けても俺に勝ち目は無いだろうしな」

徹に戦う意思が無い事を悟り、智琉もレッド・ドラゴンをカードに戻した。

智「合格って事で良いんだよな?」

徹「そう言っただろ、合格だ」

徹から認めてもらえ、智琉の顔から笑みがこぼれた。そんな智琉に徹は尋ねた。

徹「そんじゃ改めてお前さんに質問だ。お前さんの目的は何だ?お前さんは何をしたい?」

その問いかけに智琉は一瞬考えたがすぐに答えを出した。

智「俺はまだアンノウンの事を知らな過ぎるって事が分かった。だからもっとアンノウンの事を知る必要がある。その為にも、いろんな奴とアンノウンで戦うのが今の俺の目的だ」

智琉の回答を聞いて徹はほとんど驚かず、むしろどこか納得した表情を浮かべていた。

徹「オーケー、把握した。そういう事なら丁度良い奴がいる。今のお前さんにピッタリかもな」

智「いるのかそんな奴?」

徹「ああ、こっからちょっと離れた所にいる。案内してやるよ」

徹は智琉をどこかへと案内した。




続く



UCアンノウンカード紹介》

案山子男 身長1.6m

持ち主:廟木 徹

能力:人物や物体の重力の向きを変える事が出来る。変えられる向きは東西南北上下の六通りで、触れなくても狙いを定めるだけで発動出来る。又、変えた重力の力の増幅も可能であるが効果が出るまでに掛かる時間はあまり実戦的ではない。


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