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2-3話




智琉は自分のカードからレッド・ドラゴンを出現させた。

徹「さっきはチラッとしか見てなかったが、こうして見てみるとお前さんのアンノウンはなかなか強そうな見た目をしてるな。だが言っておく。アンノウンを強さは決して見た目で判別は出来ないってな」

そう言うと徹も自らのアンノウンを出してきた。

徹「UC(アンノウンカード)"案山子男(かかしおとこ)"」

智琉の前に現れたのは、綿の詰められた顔にボロボロの麦わら帽子、薄汚れたシャツを着用し木の柱一本でけんけん立ちをしている、どこから見ても案山子としか見えないアンノウンだった。その姿に智琉は少し拍子抜けしてしまった。

徹「随分な顔してんな。たしかに俺のアンノウンって見た目はちゃっちいよな。けど言った筈だ、アンノウンの強さは見た目で決まらねえと」

徹の言葉を聞いて、智琉はすぐに自分の心を律し気持ちを引き締めた。

徹「時に智琉よ、お前さんは案山子についてどう思っている?」

智「どうって、別にどうとも」

徹「田んぼや畑なんかを荒らす鳥を近づけさせないのが案山子の役目なんだけどよ、はっきり言ってその役目は果たせてるとは思えないよなあ。遠ざけるどころか案山子に鳥が止まってるなんてのも見た事あるぞ俺」

智「……何が言いたい?」

徹「大体の人間の脳にはイメージ付いてんだよ、案山子は役立たずの無能ってイメージが。そんな心構えでこいつを相手すると痛い目見るって事だ。俺の案山子男は役に立つぞ」

脅しにも聞こえる様な徹の言葉にも、智琉は全く動じずにいた。

智「そうかい、まあその方がいい。俺もどんな相手でも舐めてかかるつもりは無い。どんなアンノウンでも」

智琉はレッド・ドラゴンを案山子男に向けて突撃させた。パペット・マスターとの戦いでも幾度か使った攻撃法だが、アンノウンの戦いの経験か壊滅的に少ない今の智琉にとってはこの攻撃法が最も信頼できるやり方であった。

レッド・ドラゴンの攻撃が案山子男に到達する寸前、レッド・ドラゴンが急に右側の建物の壁に叩きつけられた。と同時に、智琉自身もレッド・ドラゴン同様に壁に叩きつけられた。

「ぐはっ!」

突然の事に驚きながらも立ち上がった智琉の目には理解しがたい光景が映った。徹と案山子男が左側の壁に垂直に立っていたのだ。しかし、智琉はすぐに気づいた、壁に立っているのは智琉自身だという事に。叩きつけられた壁を地面にして智琉は真っ直ぐに立っていた。

徹「どうだ、面白いだろ。こんな体験ができるのもアンノウンの能力あっての事だぞ」

智琉は即座には理解出来なかった。自分に起きている現象が一体何なのかを。

徹「智琉、お前さんの重力は今西に向かっている。その建物がなけりゃお前さんは西側の方面に落ちていく。一応気い付けとけよ」

智「重力?」

徹「なんとなく分かっただろ。案山子男の能力はあらゆる物の重力の向きを変えられる。触れる必要は無い、相手に狙いを定め変えたい方向を念じる、ただそれだけだ。こんな風に」

智琉の足が今立っている地面からふわっと浮き上がった。かと思うと、智琉は自分の上にある壁に、徹から見れば左から右の壁にそのまま叩きつけられた。同様にレッド・ドラゴンの重力も変わり壁に向かって落ちていった。

智「痛っったあ!」

徹「受け身ぐらいとらないと危険だぞ。ちなみに、アンノウンを使う者はアンノウンと精神で繋がっている。レッド・ドラゴンの重力を変えるとお前さんの重力も同じ方向へ変わる。逆もまた然りだ」

智「く、くそ」

体中に痛みを感じながらも智琉はレッド・ドラゴンの口からエネルギーを出すと、数発の光弾に形状を変えて徹に放った。それらの弾は徹に当たる直前に急に勢いを失った。スピードの落ちた弾は徹に簡単避けられ一発も命中しなかった。

徹「遠距離攻撃持ちか。多少厄介だが対処出来ないって程じゃないな。飛び道具なんかは今みたいに向かってくる方向と逆に重力を落とせば勢いは格段に低下する。そうなりゃ避けるのも簡単だ。どうした、もっと攻撃してきてもいいんだぞ」

レッド・ドラゴンの攻撃が全く当たらず余裕の徹だが、そんな状況において智琉は非常に冷静でいた。

智「たしかに、あんたの言ってた通りだな」

徹「ん?何の事だ?」

智「案山子男の能力は重力の向きを変えるってとこ」

徹「たしかに言ったが、それで?」

智「変えられるのは向きだけであって重力の力は変えられないって事だ。それが出来るならあんたに向けて撃った攻撃は撃った側の俺にそのまま向かっていかせる事だって出来る。それをせずわざわざ避けたって事は重力を増強させる類いの能力は持ってない証拠だ」

智琉の推察に徹の顔から余裕が少し消えた。

徹「…………ご名答、お前さんの推察通りだ。案山子男が出来るのは物の重力の向きを変える、それ以外は何も出来ない。正に弱点とも言える。それを見抜いた今のお前さんだからこそ警告する。降参しろ」




続く


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