表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/96

2-1話




家があった田舎からバスに乗り、都会のバス停で下車した智琉の目には、都会の風景はとでも騒がしく映って見えた。

智「都会には来た事無い訳じゃ無いが、やっぱりこういう所は苦手だな」

都会とはいっても、東京などの中心的大都市と比べると智琉が今いる町は多少見劣りしてしまうのだが、智琉にとってはこのくらいでも十分な都会だった。

智「さて、どうしようか。じいちゃんは世界を見て来いって言ってたけど……」

見知らぬ町を歩き回っていると、急に智琉の腹が鳴りだした。時刻は昼前に差し掛かっていた。日も出てない朝からあまりにもいろんな事があり、つい忘れていたが智琉は朝から何も口にしていなかった。腹が鳴るのも無理はない。

智「とりあえず何か食べとかないとな」

智琉は自分の空腹を満たせる場所を探した。しかし、しばらく都会と呼べそうな町から離れ、祖父と田舎で二人暮らしを続けていた智琉にとってはどこに入れば良いのか全く分からなかった。

歩き続けていると、建物と建物の間の狭い路地でとある光景に遭遇した。三人の男が一人の女性に無理矢理絡んでいた。女性の方は明らかに嫌そうな顔をしている。智琉は気がつけばその男達のもとに向かっていた。正義感から体が動いたと言えば間違いないではない。が、自分が初めて目にする出来事に対する好奇心が優っていた言う方が正しい。それに、レッド・ドラゴンという自分のアンノウンの存在が、大人の男三人が相手でも問題無いという考えを後押しした。

智「おい」

智琉は女性に絡む男達に啖呵を切る様に言った。

「あ、なんだ?」

智「その人嫌がってるだろ。今すぐやめろ」

「何言ってんだガキ?」

「生意気ほざいてんじゃねえぞ!」

男達の威圧的な態度にも一切臆せず、智琉は慣れた手つきで手にカードを具現化させ、そしてレッド・ドラゴンを出そうとした。その時一瞬、智琉の頭にちょっとした疑問がよぎった。自分はまるで当たり前の様にアンノウンを出そうとしているが、昨日まではその存在すら知らない状態だった。そして今目の前にいる人達はどうだろうか。もし知らないとすれば、無闇にアンノウンを出すのはまずいのではないか。しかし、その考察が終わらない内に智琉は、レッド・ドラゴンを彼等の前に現してしまった。

「な、何だこれ!?」

「あ……え……」

突然の事に男達は、昨晩の智琉と同じ様な反応をしていた。言葉が出ず、ただ目の前の存在に圧倒されていた。

「ひいっ!」

急に体の自由が戻ったかの様に、男達は一斉にその場から逃げ出した。智琉の悪い予感は的中した。

智「やっぱり、いきなりレッド・ドラゴンを出すのはまずかったかな」

智琉は男達が完全に立ち去ったのを確認すると女性の方を振り向いたが、女性の表情はさっきの男達同様に強張っていた。

智「あ、あの……」

「き、きゃあああああ」

女性は大きな悲鳴をあげながら逃げていった。智琉は少し自分の行いを反省した。

智「はあ、これからはもう少し慎重にいかないとだな」

?「随分やんちゃな事してるなあ」

背後から不意に聞こえた声に智琉は振り向いた。振り向くとそこには一人の男が立ってこちらを見ていた。

智「誰だあんた?」

徹「俺の事は後で色々教える。その前に一つだけ、お前さんに重要な事を質問する」

智「……何だ?」

徹「お前さん、何を企てている?」

智「……どういう意味だ?」

徹「この町で何をするつもりかを聞いている」

智「何って、俺は別に……」

智琉の反応を見て、(とおる)は呆れつつも安堵の表情を浮かべた。

徹「どうやらお前さんにはまだこの質問は早かったみたいだな」

その時また、智琉の腹から大きな音が鳴った。

徹「とりあえずついてきな。当てがあるなら別にいいが」




徹のあとをついて行った智琉は、とある定食屋のテーブルに座っていた。向かいには徹が座る。昼時だというのに店内には客は智琉と徹しかいなかった。

徹「入り口が通りに面してなくて路地から入るしかないからなのか、この店はいつもこんな感じだ。でも味は美味いから心配すんな。何が食いたい?奢ってやるよ」

智「……どうしてこんなに親切にしてくれるんです?」

徹の異様な対応に智琉は少し疑心の念を抱いていた。

徹「見たところ、お前さんはアンノウンが使えるみたいだが、それに関して知っている知識は初歩の初歩、初心者とすら言えない。そんな状態の奴をほったらかしにするのは色々危険でな。そういう奴にはこうしてほんの少し面倒を見てやろうっていう俺の良心だ」

そこに定員が注文を聞きに来た。

「ご注文は何になさいますか?」

徹「俺は味噌かつ定食で。お前さんは?」

智「じゃあ同じのを」

「かしこまりました」

胡散臭くは思うが、ひとまず智琉は徹に対して信用する事にした。

徹「とりあえず自己紹介だ。俺は徹」

智「智琉だ、よろしく」

二人はかなり遅めの自己紹介を済ませた。

徹「さて、何から話せばいいか…………。智琉、お前さんがアンノウンを持ったのはいつ頃からだ?」

智「六、七時間くらい前だったかな」

徹「はあ!?ついさっきじゃねえか!」

智「そうともとれるかもしれないけど」

徹「じゃほぼ何も知らないんじゃないか?」

智「多分そうかも」

徹「……まあいい、誰だって最初はそうだ。生きる上で学ぶって事は非常に大切な事だ。アンノウンについてくらいなら俺が教えてやる」

智「ああ、よろしく頼む」




続く


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ