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 坂道を登りきったところで道はアスファルトからクッション性の高いゴムのような黄土色の舗装に変わった。緩やかな坂道は木製に見立てた柔らかな素材でできた手摺が柵がわりに誂えられ、ところどころでごく低い段差が付けられている。

 透明なビニル傘のまま空を見上げる。晴れた夏の日であれば手入れの行き届いた木々が陽射しを和らげるのだろうが、向こうに見えるのは灰色の雨雲だけだった。しとしとと雨は降り続き、透明なビニルを雫が流れていく。

 標高とも呼べない低い山は絶好の散歩コースで、しかし幾らも進まないうちに彼はいた。手摺の向こう側を見つめる視線は、今はもう取り壊されてしまった防空壕のあった辺りを捉えていた。

 ――よくもまあ、覚えていたものだ。

 激しい雨ではないものの、降り始めからずっと雨晒しだった体はびしょ濡れで、このままでは風邪をひいてしまう。

 もつれそうな足で遊歩道を急ぐと、足音に気付いた彼が振り返った。

「いっくん」

 雨の中、裏山で英介は逸郎の名を呼ぶ。

 今も昔も変わらない、永遠の理だった。


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