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温泉はあったけど熱かったんです。

 グレアの後を追う。

 しばらく針葉樹林の森を縫うように歩くと硫黄の匂いがしだした。

「おっと、温泉の匂い」

「凄く臭いんです」

 嫌そうな声が俺の頭に響いた。

「グレアは鼻がいいからこの匂いはきついかもしれないな」

「そうなんです」

 グレアは前足で鼻を押さえようとするが、さすがに狼では難しいようだ。

「そんなに臭いならここで待ってるか?」

「いいえ、ご主人様と行きます!」

 と俺を見て答えた。


 忠犬だなグレア。



 硫黄の匂いがする方へ近づいて行くと広々とした池が見えた。

 表面からは湯気が上がり見るからに熱そうだ。

 周囲にも何カ所か源泉があるのか立ち上る湯気と池に入る小川が何本かあった。

「おお、温泉だねぇ」

「ご主人様ここで良かったのですか?」

「ああ、ここで問題ない」

 俺は池に手を浸けたが、熱くてすぐに手を引いた。

「しかしちょっと湯が熱すぎるな」

 小川を流れてきたにしては熱すぎる。

 何でだ?

 そんなことを考えていると地面が震えだした。池の中央が盛り上がっている。


 ん?なんで?あっ、これヤバい奴だ……。

 思い浮かぶのはひとつ。


 俺はグレアを抱え、急いで池から離れる。

 すると、ほどほど離れたところで後ろから、

「ゴゴゴゴゴゴゴ…………バシュッ」

 と言う音とともに温泉が天高く昇っていった。

「ここはデカい間欠泉だったか」

 周囲に水滴が舞い、俺たちの居たほうの空には虹が見える。

「綺麗です」

 グレアは虹をじっと見ていた。

「確かに綺麗だが、あのまま居たら大ヤケドだ。

 魔法で何とかなるとはいっても痛い事には変わりない」

 俺が呟くと、

「ごめんなさい」

 尻尾を下げしゅんとするグレア。

「ん?

 別に怒ってないぞ?

 知らなかったんだから仕方ないだろ。

 それに何ともなかったんだ気にするな」

 俺はグレアの頭を撫でる。

「わかったのですぅ」

 尻尾の振りが再開。

「それにしても、ご主人様は何で知っているのです?」

 首を傾げるグレア。

「んー、ちょっとした知識だ。

 頭の中に入っていたんだ。

 その辺の事は今度話すよ。

 それよりも温泉だな」


 とはいうもののテンションが上がってここまで来ただけなので当然ノープラン。

 俺はちょっと考える。

 俺の傍でお座りでちょこんとグレアが待つ。


 池の中の温度では熱すぎる。

 何とか適温にしたい……。

 ホールまで湯を引けばその道中で冷えるかね?

 冷えなければ途中に池を作って時間を調整するかな?

 だったらどうすればいい?

 どっちにしろ川か何かを作らなきゃいけない訳だが……。

 ふとディトと言う魔法が頭に思い浮かんだ。


 戦場に窪地を作る魔法?

 塹壕か何かか?


「ディト」

 実際に唱えてみると俺の前に塹壕が五十メートル程度できた。

 幅は二メートル、深さ一メートル五十センチ程度だろうか……。


 この中に温泉を流せばいい感じで俺んとこまで来るかな?

 ただこのままだと泥を巻き込むか。


「メイス?」

 頭の中に浮かびふと唱えた言葉。すると塹壕の表面が石化する。

「リメイス」

 塹壕が土に戻った。

「リディト」


 おお、塹壕が消える。

 

 俺は決戦兵器と言う事だから、俺で戦場の土木工事に従事する予定があったのかもしれない。


 しかし地味だな。

 まあ、お陰で温泉用水路作成の目処が立った。 


 俺を見上げて尻尾を振って待機状態のグレアが居た。

「グレア、温泉に入りたいか?」

 俺はグレアに声をかけてみた。

 だだグレアは意味がわからないのか首を傾げる。

「私は温泉と言ものに入ったことがありません。

 でもご主人様が入るのなら付き合います」

「おう、すまん」

 言葉が通じるから気にはしていなかったがグレアは狼だ。

 人の生活を知るはずがない。

「グレア、ホールの前に風呂を作って一緒に入るか」

「はいです」

俺の中で「家の前に温泉を引く計画」が発動した。

読んでいただきありがとうございます。

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