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走竜(ティラノサウルス)を食う。

 ホールの出口の前で走竜(ティラノサウルス)を降ろした。

 お座りしているグレアの尻尾はフリフリである。

 相当期待しているのだろう。

 俺は正直あまり期待していない。


 塩さえない状態じゃなぁ……。


 爬虫類特有の鱗のついた皮をナイフで剥く。

 ナイフの切れ味もよく、サクサクと作業が進んだ。

「ほい」

 後ろ足辺りの太い部分をグレアに投げるとグレアは見事にキャッチ。

「あー、美味しいです。生き返ります」

 グレアは前足で肉を押さえると、あむあむと肉を食べ始めた。

「お前、飯食ってなかったの?」

 俺は聞く。

「走竜に襲われて……んぐっ。

 ずっと逃げてたんです」

 グレアは食べながら言った。

 

 相当腹が減っていたようだ。

 

「結局捕まって大変だったな」

 俺がグレアの頭を撫でると食べるのをやめ、

「ご主人様に会えたから良いんです。

 仲間が居なくなってずっと一人でしたから」

 と俺を見上げて言った。

 


「それはそうと、ご主人様は食べないので?」

「こんなに美味しいのに」とでも言うように、グレアが俺に聞いてきた。

「俺は、生肉をあまり食べたことがないんだ。

 グレアって、焼き肉食った事あるのか?」

 俺はグレアに聞いてみた。

「ご主人様、焼き肉とは?

 生肉しか食べたことがないので……」


 首を傾げる狼ってのもちょっと可愛いかも。


「そのもの、焼いた肉だな。

 ちょっと待ってろ」

 俺は、大剣で何本かの木を斬り倒すと魔法で火を着けた。


 あー、生乾きだから煙がすごい。

 火災発生と勘違いされそうだ。

 近所の村から様子を見に来そうだな。


 俺も、グレアもゴホンゴホンと咳き込んだ。それでも何とか火が安定して燃え始め、その炎の上で俺は走竜のもう一本の足を焼きだした。

 油が焦げる芳ばしい匂いが漂う。

「凄くいい匂いです」

 隣に座ったグレアの口からヨダレが落ちる。


 グレアは待ての状態なのだが、待ちきれなくてたまらないって所かな?

 俺は肉の焼けた部分をナイフで削ぎグレアの前に置くと、チラチラ俺を見る。

 ああ許可がほしいのか。

 

「食べていいぞ」

 俺がそう言うか言わないかのうちに、グレアは肉に飛び付いた。

 熱いのかハフハフと言いながら肉を頬張る。

「おいしー!肉の味が濃くなって脂の味が凄くします。

 こんなの初めてです!」

 グレアの尻尾がブンブン振られる。

「そりゃ良かった。まだ肉は要るか?」

「はい!」


 結局グレアが残った肉をすべて食べきった。


 まあ、俺は食べなくても大丈夫らしいので別に問題は無いのだが……食い過ぎだろう。


「あぁ、お腹いっぱいです。

 幸せです」

 腹を上に向けてダランとするグレア。

 その腹は大きく膨らんでいた。

 俺はグレアの横に座りグレアの腹を摩ると、

「どんだけ食べるんだお前?」

 苦笑いしながら聞いた。

「私は食い溜めができますから。

 結構な間食べなくても大丈夫です。

 でも、有れば有ればで食べますし、有ったほうが嬉しいですけどね。

 でも、ご主人様は食べないので?」

 気になったようでグレアが質問を返してきた。

「お前が全部食べただろ?」

 と俺が言うと、怒ったのと勘違いしたのか、グレアの耳が伏せられ尻尾が動かなくなる。

「怒っちゃいないよ」

と俺が言うと、再びブンブンと尻尾が振られた。

「グレア、俺は食べても食べなくても大丈夫なんだよ。

 そういう体のつくりらしい。

 あとで、ホールの周りの捜索もするついでに、狩りでもするか?」

「はい、ご主人様と一緒なら。

 食いっぱぐれは無いかと思っています」


 現金だねえ……。

 魔物なんだ、あくまでも食中心なのかね。


「でも、ご主人様は好きです」

 そう言って起き上ると、ベロベロと俺の顔を舐るグレア。


 前世でもあまり言われたことのない言葉、ちょっと嬉しかった。 


読んでいただきありがとうございます。

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