外に出てみたらペットができました。
ギシッ
軽く扉を押してみたがきしむ音がするだけで全く動かない。
閂でもしてあるのかね?
「んっ!
ふんっ!」
扉を押す力を強くしてみたが更にギシギシと言うだけだった。
壊れている?
よく見ると蝶番が内側にあった。
って事は内開きの扉だったのね……。
失敗失敗……。
軽く内側に引くと案外簡単に開いた。
外は見えず土の壁があるだけ……。
埋まっているようだ。手で掘ってみるが土がホールの中に入るので鬱陶しい。
しばらく家にしなけりゃいけないのに。
うーん、面倒くさいなぁ。
本気のパンチを土の壁に入れた。
ゴッと言う音とともに拳大の穴が開く。
おっと上手くいった。穴を通して外が見える。
位置を変え数発……すべての穴から光が入ってくる。
残った土を除去しようと触ると、ガラガラと言う音とともに崩れ、俺が十分通れそうな道ができていた。
パンチのが入った位置から放射状に土が飛んだらしくパンチの位置から遠いほど土が無くなっていたようだ。
出来上がった道を通って外に出ると、鬱蒼とした森林地帯だった。
本当に何もない。
夕方だろうか朝だろうか空が焼けていた。
「情報何も無いなぁ」
そう独り言を言って空を眺める。
時間が経つにつれ空が暗くなってきた。
夕方だったようだ。
「まっ、明日だな」
俺はそう言って、ホールに戻った。
次の日の朝、
「ん?」
外に何かの気配がした。レーダーにも数個の光点。
「……!」
「……!」
「……」
何かの声もする。
気になって俺は起き上がり外に出ると、ちっちゃな人が俺を見て逃げていくのが見えた。
物語のガリバーの気分はこんな感じなのかもしれない。
人と俺の大きさを比較すると大体十倍かな。
「おーい、俺の言っていることわかるか?」
声をかけてみたが恐れているのか、声を出したとたんに逃げ出した。
しばらく待ったが、結局戻っては来なかった。
俺も取って食う気も無いのでそのままホールに戻る。
俺どうすりゃいいんだろ……。
ホールの天井を見て考える。
しかし何も思い浮かばない。
この大きさじゃなぁ。
世界に溶け込むのも難しそうだ。
不意に立てかけてあった鎧を見た。
俺、これ着けられるんだろうか?
試しに付けてみたが、意外とやり方がわかる。
とりあえずそこら辺の知識も俺には入っているようだ。
せっかくなので兜もつける。
おぉ巨〇兵。
「薙ぎ払え!」ってか?
俺が口から魔法を吐けばそんな感じになりそうだ。
レーダーに反応、赤が二つ。
赤は敵性反応って事で俺の敵?
俺の家の前で何やってるんだろ?
一応剣を取り外に出る。
外に出ると、俺の胸の高さ位あるティラノサウルスっぽいのと体高で膝よりちょっとあるデカい犬? 狼? が闘っていた。
カッコいいから狼にしておくか……。
狼のほうが劣勢、すでに狼の首にティラノサウルスが噛みつき窒息させようとしていた。
んー、ペットとしては狼のほうがいいよな。
爬虫類ならドラゴンのほうがカッコいいし。
ティラノサウルスじゃ、頭悪そうだしなぁ……。
すでに狼を飼い慣らす気になっていた。
俺は気配を消してティラノサウルスに近づくと大剣を振るい首を飛ばした。
剣の型とかは体に覚え込まされているのか首を飛ばす時には流れるような動きができた。
剣の切れ味も凄い。
ティラノサウルスは立ち往生したのだった。
俺は狼に近寄り治癒魔法であるオールヒールを使う。
魔法は……勝手に思い浮かんだ。
すると狼の傷は消え綺麗な毛並みの狼に戻る。
信じられない事なのか狼は目を開けキョロキョロと自分の体を見て傷が消えていることに驚いていた。
周囲を見ると首なしで立っているティラノサウルスに気付いたようだ。
そしてそれを倒したのが俺だと言う事も……。
狼は俺を見ると服従のポーズ(って奴?)で俺に腹を向けて寝転がった。
俺は狼の腹を撫でる。
おぉ、気持ちいい。モフモフって奴なんだろうな。
狼も目を瞑り気持ちよさそうにする。
「おっと、チ〇コないねぇ。お前メスか?」
「ワウ」
質問に吠えて返す狼。
「お前頭いいな。返事できるのか」
「ワフ」
「やるのう」
「ワフ」
会話になっていない会話ができるだけでも俺は嬉しかった。
話し相手が居るって素晴らしいねぇ。
撫でるのをやめると、俺の横に座り込む狼。
「お前名前要る?」
と聞くと狼は、
「ワフ」
と吠えて、ブンブンと尻尾を振る。
名が欲しいようだ。
「ポチ」
「クゥーン」
あからさまに嫌な顔をする狼。
尻尾に元気がなくなる。
「じゃあ、タマ」
まさかねこの名でも……と思って言ってみたが、
「クゥーン」
再び狼は嫌な顔をした。
俺は無い頭を振り絞って考える。
「日本語の奴はダメか? うーん、灰色だからグレアってのは?」
と聞いてみた。
「ワウ!」
グレアの大きな同意の返事と共に、何かが繋がったような感じがした。
「ご主人様」
若い女の子の声が聞こえる。
「ん?」
「ご主人様」
やはり聞こえる。
目の前にはお座りをしてブンブンと尻尾を振っているグレア。
「グレアか?」
俺が声をかけると
「そうです、グレアです。
先ほどは助けていただいてありがとうございました。
あのままだったら死んでいました」
グレアが礼を言ってきた。
俺を見ているだけだが俺には言葉が聞こえてくる。
「どういう事?」
そう考えた時、頭に『パスシステム』と言う言葉が浮かんだ。
特定の人や動物と意思疎通ができるという物だった。
巨人は大きすぎて、エルフたちの声が届かない可能性があった。
そのためマスター的なエルフと俺は『パス』を繋ぎ、念話で意思疎通する予定だったようだ。
グレアに名前を与えたことでパスがつながったって事かな?
よくはわからんが、まあ貴重な同居者ができただけでも良しとするか。
「グレア、あれどうする?」
「ご主人様、走竜の肉は美味しいと言われています。
食べましょう!」
期待しているのだろう、グレアは尻尾をブンブンと振っている。
「じゃあ、俺んちで食うか?」
「はい!」
俺は走竜の体を担ぎ、頭を右手に持つとホールに向かって歩き出した。
そして、その後を追うように、俺なのか、肉なのかを見上げながらグレアがついて来るのだった。
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