自転車の整備はちゃんとしましょう。
更新は大体です。殴り書き的になると思います。
俺はアリヨシ。
山を削って作った団地の家の一つに両親と住んでいた。
家からふもとにあるコンビニへ向かういつもの下り坂をチャリンコで下る途中、長年乗りっぱなしだった整備不良のチャリンコのブレーキワイヤーが前後ともにブチ切れる。
「へっ?」
何日か前から利きが悪いと思っていたブレーキ。
ここにきて破綻したらしい。
怖いんっす。
止まらないってのは!
「あーーーーー!」
焦って足で踏ん張るもカッコつけてサドルを上げていたせいで足が届かない。
結局停止できず、下りきったところにあるT字路のガードレールに当たり、慣性で俺だけ飛んだのは覚えている。
壁にぶつかってでも止まれば良かった、と飛びながら思っても後の祭り。
三十五歳独身人生終わったかな?
しかし今居るのは何かの培養槽のようなものの中。
体を丸くして浮かんでいた。
色々な色のケーブルが取り付いているのがわかる。
体は未発達なのか動かない。
ガラス(?)越しに見えるのは眼鏡をかけたエルフ美人。
エルフって初めて見た。
美人だ。
ニコッと笑って俺を見る。
他にも白衣を着たエルフたちがディスプレイのような画面を見ていた。
データを取っているのかバインダーのようなものを持ち俺を見ながらメモを取る。
「……………………」
何を言っているのかはわからないが、笑いながら声をかけてきた。
そのあと周囲が赤くなりエルフ美人が焦った顔をする。
何かの衝撃があったのか俺の周りが揺れた。
そしてその後の俺の意識は無い。
どのくらい経ったのだろう……。
俺は目を覚ます……周りは真っ暗。俺が目を覚ますとすぐに「起動準備中」の言葉が視界に映った。
暫くすると「起動OK」の文字が……。
俺の視界に表示される文字がわかるのはなぜ?
そんなことを考えていると周りにあった液体が排水される。
そのあと「あなたとこの世界の知識を注入しますか?」の質問と「はい」「いいえ」の選択。
当然「はい」を選択した。
状態を表すゲージが徐々に伸びる。
パソコンのインストール画面みたいだな。
すべての色が変わり百パーセント(?)になった瞬間、情報の解凍が始まったのかゲージが跳ねる。
とたんに脳の負荷が上がったのか俺は頭が痛くなった。
そして「終了」の表示が出ると頭痛が引き解放された。
俺って誰?
そう自分に問うと、
「戦闘用汎用巨人」
と答えがすぐに思い浮かんだ。
俺の事がわかるようになったって事でいいのだろうか……。
身長十八メートル。
体細胞は過去の神話級巨人族の体組織を利用。
変な数値が出ているが当社比みたいなもんだろうか?
通常エルフらしき人とのグラフの比率を見る。
ざっと五十万対一の差があると言う事だ。
戦略的・戦術的魔法使用可能。どんな魔法だそりゃ?
インストールされた知識では、対国家戦闘用の兵器として開発されたようだ。
えーっと「人族よりも数が少ないエルフが生き残るために必要な兵器」って事らしい。
人とエルフの戦争が続いていたらしく、エルフ側のほうが負けそうだったみたいだね。
ふと、旧ドイツ帝国のマウス重戦車が思い浮かんだ。
急に視界が開ける。
「暗視モードになりました」
と視界の左下に小さく表示された。
そして右上には円形の小さな何か……中央に三角形がある。
三角形の中央には俺?
ああレーダーか。
周囲には何も表示されていなかった。
周囲を見回すと、多くのディスプレイのような物、分析機器のような物が散乱していた。長年の埃が堆積しており、それらが使えそうな感じはしない。いったいどのくらい放置されていたのだろうか?
手を伸ばそうとしたが培養用のガラスのようなカバーが邪魔だった。このままでも仕方ない。
手を無理やり伸ばしカバーを押しのけようとすると、
「プシュー」
と言う音とともに煙が上がり、意外とすんなりカバーが開いた。
立ち上がろう……って思うが、こりゃ無理だな。
這って動くぐらいの隙間しかないや。
制作者もどうやって俺をここから出そうと思ったんだ?
おっ、トンネルの中にレールがあるから培養槽ごと移動する予定?
俺が気付くのは「ココじゃないどこか」って事だったようだ。
とりあえずトンネルの中をレールの上を這って進んだ。
暗視モードのため先がよくわかる。
しばらくすると俺が立ち上がっても大丈夫そうな大きなホールに出た。
正面に俺サイズの扉がある。
立ち上がって周囲を見回すと俺の身長ほどもある大剣とナイフ、フルプレートの鎧と兜、そして下着的な何かが数着準備してある。
おっと、俺の息子がモロ見えじゃないか!
誰も見ていないのに、そそくさとタンクトップとトランクスっぽい下着を着る。
そこら辺の事はエルフが考えてくれていたらしい。
放置されていた割には着心地はよかった。
この世界でわざわざストーリーキングする気も無いし、体がデカいからサイズがデカくなったって訳で、体と息子の比率はどうなっているのかわからなかった。
若干、山下清をモデルとしたドラマの格好に近いが、このサイズの服を作るのは並大抵のことではないだろう。
文句は言えないか……。
食い物はどうすりゃいい?
自問自答すると、インストールされた知識が浮かび上がり、
「食べ物は魔力。魔力生成炉があるので魔力欠乏の心配は無用。ただ、食べようと思えば食べられる」ってことらしい。
自分で作って自分で消費できる訳か。
巨人サイズの人間を食わすのって難しいだろうから、自己生産ができるように改良されているのかもしれないな。
さて、外の世界を見てみるか。
俺はホールにある扉に手をかけ開けようとした。