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犬になりたかった猫

作者: 悠紀

僕は、雄猫のゴー。ゴーは進むという意味で、僕は自分の名前に誇りを持っている。年齢は2歳8ヶ月。毛の色はグレー。ただ耳に少しだけピンク色の毛が混ざっているって飼い主はエマは言う。気が短くて少々ケンカっぱやい時もあるが、強く逞しい雄猫だ。

しかし、こんな僕にも悩みはある。気付けばいつも目の前にいる、無口で大人しいが大型犬の彼。彼が僕の今の唯一の悩みだ。


僕たちの飼い主のエマは、寝る前に必ず犬のリッキーのもとへ行き、リッキーの背中を撫でる。リッキーは気持ちよさそうに目を閉じている。リッキーは夜も外でずっと自分達を守ってくれているからだと言いながら。僕はエマと一緒に寝ることもできるのだけど…リッキーが眩しく見える。

僕も犬だったら良かったのに…っと思う。


リッキーはいつも骨付きの肉や野菜を美味しそうに頬張って食べている。それはエマが僕に与えてくれるキャットフードとは違っている。

僕が犬だったら、キャットフード以外の物が食べられるのかな?今まで食べたことのない物を、お腹いっぱい食べてみたいよ。


エマは毎日、必ずリッキーの散歩を欠かさない。リッキーは首輪が付いているにも拘わらず、誇らしげにエマとの散歩に向かう。好きな時に好きな所へ行ける僕とは正反対なのに、何故か幸せそうだ。

僕も犬となって、エマと散歩に行きたいな。エマの見ている風景を、自分も一緒に見てみたい。


リッキーには大きな自分の家がある。エマがリッキーが我が家にやって来た時に買ってあげた家だ。僕はエマと、エマの旦那さんと一緒に暮らしている。どの部屋へ行ってもエマは怒らないが、でも僕も自分の家が欲しいな。自分だけのお城があるって、どんな気分がするのかな?僕が犬だったら、きっと大きな家をエマが用意してくれるだろう。


ある時、僕はリッキーに言った。

「君が羨ましいよ。」

リッキーは不思議そうな顔で、

「僕だって君が羨ましいよ。」と言った。

僕が「え?」っとリッキーを見上げると、リッキーは続けた。

「君は、エマや旦那さんと一緒に寝る事もできるし、キャットフードも美味しそうだ。それに好きなときに好きな所へ出掛けられるだろ?誰からも恐れられないし、自由だ。首輪に繋がれたまま、家でたった独りで寝るのは寂しいものだよ。」

そうだったんだ。

お互いがお互いを眩しく思っていたんだね。

ゴーという、世界に一匹しかいない猫は、僕のままで良いんだ。

リッキーがそうであるように、ただ自分という存在で、僕は既に特別なのだから。

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