お付き選び
少し短いのですが、キリが良いのでアップします。
第四章 お付き選び
三年に一度、春分の日が近づくと、神学校卒業間際の男子学生や去年一昨年神学校を卒業した男子はソワソワしだす。
お付き選びが近づくからだ。
お付きは、ミコーヤの神官たちにとって最高かつ最短の出世コースだ。神学校に在籍する以上、お付きになることを夢見ない男子はいない。まあ、今年は、例外中の例外、カイがいるが。
どうして女子ではダメなのか、ミコーヤ最大の謎だが、少なくとも現行制度がそうなっている以上、誰も気にしない。
と言うか、もし、女子がお付き選びに参加できるようになったら、ライバルが増えるだけだ。建前では男女平等を唱える男子学生も、ライバルが増え、お付きになる確率が下がるのは面白くない。確率でお付きになれるわけでもないのだが……。
理論的には不合理な制度だと思っていても、見て見ないふりをするというか、気が付かないふりをすることになる。
女子学生たちは、自分たちがお付きになれないことを面白くないと思いつつも、男子学生が繰り広げるゴマすり合戦の馬鹿馬鹿しさを間近で見ているのだ。むしろ、交ぜてもらわなくて結構だという気にさえなっている。
とにかく、お付きなることは、女子には道がなく、男子には出世の近道なのだ。
一説に、お付き選びには三ヶ月かかるという。候補者の神学校における成績、性格等を比較検討して十人ほどに絞り込み、シーナさまがその中から好みで選ぶと言われている。
だが、事前に絞りこまれた候補者だけじゃなく、最終的に全員の面接を行なって決めるので、神官たちの思惑が外れることもある。
これまでの例では、巫女との対面が逆転ホームランとなって、絞りこまれた候補者以外の者に決まったこともあるという。
事実、先代お付きのアムルは成績優秀で、品行方正、他の生徒たちの信望も厚かったが、先々代のお付きのキラは、成績は良いものの、どちらかと言うと癖のある性格で、彼を支持する者と悪く言う者が半々というところだった。
興味深いことに、そのキラはお付き時代の記憶を残して先達となった。
当代お付きのアムルが先達になれるかどうかは、分からない。何しろ、お付きの任期が終わるまで結論が出ないからだ。
無責任な噂では、アムルはお付きとしては優秀だが先達になれないんじゃないかという。
キラの先代は、成績優秀で神官や神学生たちから厚く信頼されていたが、お付きのときの記憶を留めることができなかった。つまり、先達になれなかった。アムルはキラの先代に似ているというのだ。
お付きになった者の中で、お付き時代の記憶を留める者は少ない。しかも、記憶を留めるには、どういう基準があるのか全く分からない。そもそもお付き自体、どういう基準で決められるのか分からないのだ。
お付き候補にとって、先達になれるかなれないか以前に、少なくとも、お付きになれなければ何も始まらない。
テーベのようなお付き希望者は、とりあえず、当代お付きのアムルに取り入り、お付きを通じてシーナさまと接触しようと試みる。
成功した者はいないのだが。
勢い、アムルが何かしようとすると、お付き候補の連中が先を争って手伝おうとする。
口の悪い連中に言わせると、次代お付き候補たちが先を争ってゴマをするから、お付きの希望者が増えるのだという。
真理である。
年が明けて春分の日が近づくと、とってつけたような善行のバーゲンセールが行われる。つまり、あっちでもこっちでもお付き候補たちの善行が見られるようになるのだ。
お年寄りの買い物に付き合ったり、体の不自由な人の外出に付き添ったり、神殿や公共スペースの掃除をしたり、親たちが仕事をしている間、子供たちの面倒を見る施設へ手伝いに行ったり等々枚挙に暇がない。
男子学生が必死に善行合戦するのを尻目に、お付きになる権利のない女子学生は、平然と兵役義務に備える。お付き選びの年、ミコーヤの兵役は女子でもっている、と言われるほどだ。
女子はお付きになる資格がないが、下手をすると(下手をしなくても)、男子より成績優秀な者もいる。兵役では親衛隊に入隊する者が多いが、中にはミコーヤの国防軍の中枢である国軍本体に入隊する者もいるほどだ。
女たちにとって、お付きという肩書きに振り回される男たちが馬鹿に見えることだろう。
ところで、ミコーヤでは、合理的に説明できない戒律がもう一つある。
それは、他国民との婚姻禁止で、婚姻に繋がりかねない恋愛までも禁止されていることだ。つまり、ミコーヤの民は、ミコーヤの民と恋愛し結婚しなければならないのだ。
神官、商人、農民、職人といった全ての民の平等を説くミコーヤの教義は、他国との交流を認め、他国民の権利をも認めている。
それなのに、こと婚姻や恋愛といった局面になると、寛容さとは程遠い。一説に、行かず後家のシーナさまの嫌がらせだという。
ミコーヤ教の特徴を2点説明させていただきました。




