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あばんちゅーる!!  作者: 碧梨まひる
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《番外編》  『まばらな空に、月明かり』

可惜(あたら)さんって、(まばら)さんのご友人なんですよね」

 

少女―――――命思(みこと)は、ハーブティを飲みながらそう言った。可惜さん、と呼ばれた青年・可惜は、傍らで漫画を読む疎を見やる。


「うん、子供のころからねー。疎はわりとあっさりしてるから付き合いやすいし。…そういえば、なんで仲良くなったんだっけー?」


 ねえねえ疎、と彼を揺すり、疎が漫画を閉じたのを見てから疑問を口に出す。


「…覚えてないな」

「気付いたらいたもんねー。気になるなー」


 それきり、可惜も疎も黙って思考に耽ってしまったようだった。それを暇に思った命思は、傍で微笑んでいる怜悧(れいり)に声を掛けた。


「怜悧さん、(とばり)さんを呼んでいただけますか?…彼の能力なら、ふたりのなれ初めも分かりますよね?」

(かしこ)まりました、お待ちくださいませね、命思さま♪」

「よろしくお願いします!!」


 帳。彼は『真実』を操ることができる能力を持っている。帳ならふたりの手助けができる、、!


「なるほど。んじゃ、命思さまもみんなも、目ぇ瞑って」


 帳はそう言うと変幻したようだった。能力の気配が漂い、命思は無意識に気を張りつめた。


「…命思さま、どうかそう気を張らないでくださいませ」

「あっ、怜悧さん…。帳さんの能力を見るのは初めてだか…ら…」


 言葉を紡ごうとして、意識が遠退く感じがし―――――


        ☆


「可惜さま!」

「わーっ?」

「可惜さま、屋上に来られるなら、事前に私か(ゆき)に仰ってください」


 抱きかかえられた少年―――――碧崎(あおさき)可惜とは、名門である碧崎家の次男であり、心優しく丁寧な人柄からか、使いの者からの人気も併せ持っている。彼は碧崎の光だ。能力を持たない兄はそんな可惜を恨んだが、両親は裏腹に、可惜を宝のように気に入っていた。


「可惜さまを新しいご両親にお任せ致すまで、私たちは可惜さまを命懸けで守らねばなりません」


 兄である碧崎の長男に嫌われてしまっては、もうこの家にいることは叶わない。それを悟った可惜は、まったく知らない普通の家・八重(やえ)家に養子として出ることにしたのである。

 残りにしてあと今日のみ、碧崎を名乗ることになる。最後にこの屋敷から見える風景を目に刻んでいたのだ。


「大丈夫だよー、俺は死なないから」


 そう言って屋上の花畑に出る。

 夜にしか咲かない、妖の花。それを見つめる可惜の顔は、とても幼いそれではなかった。


「可惜さま、お荷物は整えてありますよ」

「うん、もう出ようかなー、ここ」


 使いが身を翻して屋上から姿を消した。


「八重、可惜………ね」


 ぼそりと呟いてから、可惜は妖の花畑を後にした。


「今日から御世話になります、可惜といいますー。よろしくお願いします」


 手短に挨拶を済ませ、今日から住むことになる部屋の案内を受ける。疎と名乗った案内係は、眠そうにしながら可惜を連れて家を歩き回る。


「可惜は何が好きだ?ハンバーグか?ウインナーか?唐揚げか?」

「疎、だよねー?俺は食えればなんでもいい人間だからねー」

「食への冒涜だ、好物ぐらい作れ」


 これが、疎と可惜の交わした、最初の会話だった。

 それからは下らないことも嬉々として話せるような仲に―――時間は多少要したものの―――なっていった。それはふたりが就職活動をしなければならない年齢まで続いていた。


「可惜は、どこで働くんだ?」


 疎は既に、碧崎に雇われた身として、八重家で可惜の世話役として働いていた。だが、可惜がこの家を出ていったら疎も仕事をなくすことになるのだ。


「俺は、子供のころから憧れてた、執事になるんだー。杜若(かきつばた)家って知らないかなー?そこのお嬢様が、能力者の使いを探してるんだってー」

「杜若家って、、名家じゃないか」

「じゃあさー、疎も来るー?杜若家の御世話係ーっ」

「は?」


        ☆


「そういえばそうだねーっ。八重の世話役だったんだー、疎」


 命思たちは可惜の言葉で現実に戻った。


「まさかそんな軽いノリで世話役を、、」

「うん、まーねっ。でも、命思さまと郡さん、奥さまには感謝してるよー。疎と俺を、一緒に雇ってくれたから」

「こちらこそ、いつもありがとうございます、可惜さん、疎さん」


 妖力も満ち足りた感じがする。帳の能力には催眠もあるらしく、心なしか気分もいい。


「ありがと、帳」

「ああ、よかったな。大事な記憶なんだろ」

「ん。可惜と会えて、おれはちょっと、嬉しかったんだな」


 照れ臭そうに微笑む疎に、可惜がにこにことこの上ない笑みをかける。

 このふたりの友情が永く続くように、命思はそっと願った。


END


初めまして!中原 里々郁と申します。

あばんちゅーる!!番外編をお読みいただき、ありがとうございます☆


なんと本編投稿前の短編番外編です!新しいスタイルですね!

急ぎ足で作品紹介を!

あばんちゅーる!!は、能力者のお嬢様と個性溢れる執事さんたちのはちゃめちゃラブコメです。

8/24現在、本編の方は1話1章の半分まで書きあがっていて、葉月さん(担当さん)に急かされている状況です(笑)

主人公は杜若(かきつばた)命思(みこと)ちゃん。真面目でちょっと天然な可愛い娘です。


魅力的な7人の執事さんの中から、ぜひ、貴女の推しを見つけてみてくださいね♪

ちなみに可愛い主人公とお姉さん執事もいます。男性の貴方も大丈夫!!


何度も励ましてくれた担当の葉月さん、キャラデザを手伝ってくださった架子ちゃん、もけおたん。今お読みくださってるあなたに、大きな感謝を♡


中原 里々郁

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