日が昇る
世界大戦、それは大国同士の戦争。そして戦場となった大自然は消えた。
大自然に住まう動物や、森の民も地図から消えてしまった。
これは幸か不幸か生き残ってしまった森の民の四人の子供たちのお話。
20年後。
ランタンが1つしかない薄暗い地下室で、男は歓喜に震えていた。
「やったぞ!!おれの仮説は正しかった!実験は成功だ!」
地下室に男の声が響く。
目の前のデスクの上には 散乱した書類や、実験器具、そして大きな瓶。
男の目は瓶へ向けられていた。
正確には、瓶の中身へ…。
彼の名はダン。歳は30。国直属の機関に勤める研究員だ。
ダンが地上へ出ると、空は青くなり始めたところだった。
「んんーまいったな。まぁーたこんな時間か。これじゃ今日も寝坊だな。またマリー君に怒られちゃうな」
深くため息をつくと彼はいつものように宿舎へと帰っていく。朝焼けに照らされた彼の顔には深く、濃い隈がある。
それもそのはず。彼はほぼ毎日、夜な夜な宿舎を抜け出しては研究に没頭していたのだから。10年もの間。
しかし睡眠時間を削り続け、疲労が相当溜まっているはずの彼の足取りはいつもり軽い。
口元は緩みきっており、口笛まで吹いている。
「だが、これで遅刻は最後だ…」
地平線から日が昇る。
「ようやくだ。ようやく、おれの、おれ達の物語が始まる」
どこか遠い所を睨みながら呟く。
彼の顔からは、微笑みは消えていた。