ヲタク女子の攻略法
「あのね!!それでね!アレク様がね!ほんとにもうかっこよくてね!!」
「そうだな。…はい、これ、あーん」
「あーん」
とある喫茶店の角にある席。高校生らしき男女が仲睦まじく?いちゃいちゃしていた。彼女はだれだかわからないアレク様とやらの魅力を語り、彼氏はそれに相槌をうちながら彼女にチョコがかかっているいちごを食べさせている。
「アレク様がね、途中でね、壁ドンしてね、『俺以外の見るな』とか言っているの!!!もうほんとにかっこよくてー!」
「そうだね。…はい、これで最後。あーん」
「あーん。…ん、おいしい」
彼女は彼氏があーんというとおとなしく口を開ける。まるでひな鳥のエサやりみたいだ。安心しきった顔で彼氏のいう事を聞いていて、かわいい。
「そういえば、みか。この間までルーク様がかっこいいって言ってなかったっけ?」
「うん!!ルーク様も俺様ですてき!!押し倒されたい…!」
彼女と彼氏の会話は続く。ルーク様とアレク様とやらは乙女ゲームが原作のテレビアニメに出てくる王子様らしい。2人の会話からわかった。
「…あ、みか。口にチョコついてる」
彼氏は、今度はルーク様のかっこよさ?について語り始めていた彼女の顔を覗き込んだ。
「え…。どこ?」
話を中断して、口についているチョコをぬぐおうとする彼女。それを彼氏が遮って、手でぬぐう。そして、そのまま彼女の口のすぐ横についていたチョコをなめた。
「―――――」
彼氏が彼女の頭を抱き寄せ何かを言った。途端に彼女の顔が赤くなった。こくこくとうなづいている。
「ほら」
彼氏が彼女の頭を開放すると、そのまま電子辞書を取り出して何か操作をしだした。
そして、その電子辞書を彼女に見せると、彼女は先ほどよりも真っ赤になる。気のせいかもしれないが、恥ずかしすぎてかうれしすぎてかすこし涙が出ている。
彼女は、彼氏から少し離れたと思いきやうれしそうにだきついた。
《 …王子様じゃなくて、俺のことを見ろ。『俺以外見るな』 》
彼氏は、彼女の興味が自分に移って満足そうに、そしていとおしそうに彼女を抱きしめ返した。
……彼女が甘えたくて彼氏に王子様のはなしをしていると気付きながら。