ゲームの世界
「いたたたたた…………」
叶汰はそう言いながら目を開けた……
あたりは一帯霧で覆われて何も見えない。
(なんだったんだ一体…もぅ……)
そして地面についてある手を動かすと……
(なんだこれ……カサカサしてんなぁ……)
叶汰はその手元を見てみるとそこには草が生えているのであった。
(なんだ草かよ………って草!?)
慌てながらもう一度その手を見る。
そしてそれは確かに草であった。
そして辺りの霧が晴れて来たので周りを見渡すとここは…………大自然の真っ只中だった。
(えーーーー!嘘だろおい………どこだここは?)
叶汰は戸惑う。
そして口をがび〜んとしながらただ唖然と開けるのだった。
ここに広がる景色は人知を超えていた。
(俺は夢でも見ているのかなぁ?さっきまで確かに自室に居たはずなんだけど……)
叶汰は頬を思いっきり叩いた。
「あれ……痛くない。」
叶汰は頬を叩いても何も痛みを感じないのであった。
(なんだよ…驚かせんなよ……ここは夢の中なのね……
はぁ〜〜……成る程成る程。ここは夢の世界か)
叶汰が安心してそう思っている所に…………
「そんな訳ないじゃ無いですか。」
叶汰の後ろには猫耳を付けた可愛い女性がいるのであった。
「うわっ…誰だよ。ってか何で俺の心が読めるんだよ。」
「心が読めるのって当たり前じゃないですか。」
「当たり前なわきゃね〜〜だろ!」
「ヘェ〜人間って不自由なものですねぇ〜」
「お前何言ってんの?お前も人間だろ……ってあれ?」
叶汰はその女性の方を見てみると彼女の後ろには羽があるのであった。
「え〜〜〜〜〜〜〜ってなんでやねん。ふぅん、この私がそんな事に驚くとでも……それはどうせコスプレなんでしよ。まぁ〜見たところ君のコスプレは俺に対するサプライズって奴ですかね。そんなの俺には効きませんよ。寧ろ俺にとってそれはサービスに見えます。」
叶汰はキメ顔を決めながらそう言う………
「いや、私はゲームアドバイザーですから…」
「なるほどなるほど、あなたはゲームアドバイザー………
ってえーー!ゲームアドバイザー!?」
「そうですよ。私はこのゲームのゲームアドバイザーで、君にここの世界の説明をする為にここに来ているんです。」
「オウ、マイ、ゴットゥ………つ、つ、つ。」
叶汰は女性に指でちっちっちっとしながら……
「お嬢さんそんな嘘はいけないよ。」
しかし女性は真顔で……
「嘘ではないです。本当です。」
「…………………………………」
「嘘だ〜〜〜〜〜〜」
叶汰はそう言いながら地面に跪き、顔を地面に向けた。
「じゃあここはゲームの中だと言いたいのか…」
「はい、ここは………」
(そうか……確かにそれじゃあ辻褄が合う。この女性がいるのも、この世界が自室ではないことも…そして痛みが無いということも………
あ〜あ〜あ〜考えたくない〜〜〜〜。)
暫く叶汰はそうして俯いているのだった。
少し時間が経った後……
「ちなみにこのゲームってどういったものなんでしょうか?」
叶汰は立ち上がり、態度を改めて言うのであった。
「そうですね……そろそろ本題に入ってゲームの説明をさせて貰いますね。」
女性は笑顔を叶汰の方に作るのであった。
「改めまして、始めまして。そう言えばあなたの名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」
「あ……そうですね。僕の名前はとお〜……」
(ちょっと待て待てぇ〜い。これはいつもながらのあれではないのか?あれでは……キャラネームを決める、あれ。
そうだよなここは……クロス………何にしようかなぁ?)
すると女性が………
「有難うございました【とお〜】さん。そしてあなたのキャラネームは【クロス】ですね。了解しました。」
「ちょっと待てぇ〜い。なんで俺が決めようとしていたのに、勝手に事を進めてるんですか!
しかも何気に僕の心読まないで貰えますかね?」
「すいませんでした。てっきり私に話しかけているものかと……」
「はぁ〜〜まぁいいですよ。変更すればいいんですから。」
すると女性は真顔で……
「えっもうあなたの登録は終わりましたよ…」
「登録は終わったんですか…はい、はい………ってえー!
終わったんですか……」
「はい、とお〜さんのキャラネームはクロスです。
そしてこれはもう決定事項ですので変更出来ません」
「なんてこった……ゲームを始める際に一番大切であり、そしてワクワクさせられるのはキャラネーム作成なのに……俺としたことがここで最初からしくじるとは……ああ、なんて運の見放された男なんだ俺は……」
とお〜は、とてもガックリするのであった。
*
「私の名前はメルカと申します。」
(メルカさんかいい名前ですね。)
「そしてこらからゲームの説明に入りたいと思います。」
(あれ?ちょっと待てよ………)
「メルカさん、少し聞いてもよろしいでしょうか?」
「なんでしょうか?」
「僕の心の中が読めているんですよね……」
「あ……あ、言うのを忘れてました。今さっき心理読み機能をOFFにさせてもらったのですが……付けた方がよろしいですかね?」
「いやいや、とんでもない。そうしてください。ってかそれ早くしてもらえませんでしたか?」
「すいません。」
「はぁ〜。まぁいいですよこれはこれで…それよりもゲームの説明を早くして下さい、メルカさん。」
叶汰は呆れた顔を作りながら地面に腰を掛けた。
「では改めましてゲームの説明をしたいと思います。
このゲームは至って簡単でイクサイティングなゲームです。」
(あなたの方がイクサイティングですよ……)
「そして超現実世界な世界観に…」
(そう言えば俺はこのセリフに踊らされてここに来たんだよな…
でも確かに世界観は言っているように凄いし、尚且つ美人が目の前にいる……うふふふふふ)
「あの………クロスさん大丈夫ですか?」
「えっ、何がですか?」
「顔が可笑しくなっていましたよ。」
「すいません。これは何もないんです。あははははは。」
叶汰は頭をかきながらの取り繕うのであった。
「まあ、それならいいんですけど……」
(ふぅ〜〜〜間一髪だったぜ。こんなの知られたらこのあと何も出来なくなるところだったぜ。危ない、危ない)
「まあ、ここの説明を再開させて貰いますね。
まずここはゲームの中です。
そしてあなたたちプレイヤーにやってもらうことは一つで、このゲームを攻略してもらうことです。
そしてその攻略方法は各地にあるダンジョンの中にいる宝石を持つモンスターを倒す事です。」
(単純だな、どのゲームでもこのぐらいのシナリオはあるもんだよな…俺も幾多とゲームを点々と歩き渡って来たけど……所詮それらは子供騙しのもので……倒してもまた生き返ったりする奴だろどうせ……。)
「そしてそれらの宝石を全て取り、ある場所にそれらをセットすれば終了です。そして見事ここから出る事が出来るというわけです。」
(手間のかかるゲームだこと…………って、えーこれを見事終わらせればここを出られる?!)
「そして戦闘方法なの………」
「待て……少し質問がある。」
「はいなんでしょうか?」
「聞きたいことは山のようにあるんだけど……今さっきメルカさんは攻略すれば晴れて現実世界へ帰れるみたいなこと言っていましたけど………まさか僕たちって攻略しないとここから出られないって訳では無いですよね……」
「いえ、その通りで攻略しないとここから出る事は出来ませんよ……」
(お〜〜重い一言だ〜〜それは……
マジか!ここのゲームを攻略しないとダメなのかよ…
俺にはまだ青春が来ていなくともこれから来るかもしれないんだ。多分……
まだ俺にはあの世界でやり残していることがあるんだよ。
)
そんな彼の元に…………
グルルルル………グルルルル…グルルルル……ドシン、ドシン、ドシン………
(ちょっと待てよなんだこの嫌な感じは………)
ゆっくりと叶汰は顔を上げてみるとそこには……
いかにもBOSS級の見たところ強そうなドラゴンが立ってこちらに迫って来ているのだった。
「うあーーーー」
二人は驚きの声をあげるのだった。