血雨
高い壁が聳え立つ。
いつのまにかどんどんと高くなる壁。
果てを見ようと顔を上げると天辺は雲に隠されている。
ドォン。
遠雷の音が聞えた。
それに遅れてから頬にポツリ、一滴の雨が落ちた。
それは赤い雨。
頬を伝わってポタリと地面に染みを作り上げる。
どうしてこうなってしまったのだろうか?
繋いでいた手は何時の間にか先がなくなっていた。
笑っていた顔は憤怒に染まっていた。
優しい言葉は罵声に。
握っていた手は切り落とされ。
思いやる心を置いてお互いに傷つけあう。
声を掛けてもそれは耳にも、心にも届かない。
振り続ける雨の音が全てを声をかき消してしまう。
繰り返して繰り返して。
壁はどんどん高くなっていって。
外に出ることも出来ず。
声を届けることも出来ず。
赤い雨が降り続ける中で過ちを繰り返す。
遠雷が聞こえる。
ドォン。ドォン。ドォン。
赤い雨が降る。
それは命の雨。
軽くなった命の雨。