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白百合の君  作者: 九月
第三章 16歳の私 〜ディプトリス学園魔法学科1学期〜
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風紀委員の仕事。2

やっぱり廊下等で出会ったら挨拶は礼儀としてすべきだろう。しかしそれを親衛隊の人たちに見られたら・・・憂鬱な気分に浸っていると、そういえば、と委員長が呟いた。


「後1ヶ月ぐらいしたら新入生歓迎会やから、いそがしなるな。」


「新入生歓迎会ですか?」


「そやで、新入生に楽しんで貰おうってゆう企画やねんけどな。」


「何をするのですか?」


テッドが首を傾げながら聞く。


「学園内のスタンプラリーや。高等部は異常に広いから、新入生達には楽しみながら学園内を覚えて貰おうってことやな。毎年これやし。」


なかなか面白そうだなと思う。まだ私はこの学園が一体どうなっているのか把握していないし、楽しみながら学園内を探検できるのはありがたい。すぐに場所と位置を覚えられそうだ。テッドの目もキラキラしている。しかし、次の委員長の言葉にテッドの表情は固まった。


「風紀委員には猫の手も借りたい思うほど働いてもらわなあかんからな、楽しみやわ、ホンマ。」


言葉の内容はぞっとするものだが、表情が全てを裏切っていた。ニンマリとまるで楽しくて仕方が無いと言わんばかりの委員長の表情。


「あれが今年もやってくるんですか。」


二年生以上の委員たちのげっそりした表情に、私とテッドは顔を見合わせる。


「さすがに一年生の君たちは、当日はスタンプラリー楽しんでや。」


「当日は、ですか。」


委員長の含みのある言い方に思わず眉をしかめてしまう。


「そら君たちも風紀委員やからな。準備は手伝ってもらうで。人手は多いほうがいいからな。」


「俺たち一年が内容知ったらダメなんじゃないですか?」


テッドが焦ったように言うと、委員長は右手を振った。


「どこにスタンプがあるかはさすがに教えへんよ。SSクラス主催の出し物とかもあるしな。そこらへん手伝ってもらうわ。」


「SSクラスの出し物ですか?」


そんなことをするのかと驚く。ということはシアたちも何かをするのだろうか。一体どんな出し物をするのだろう。


「そやで。毎年ステージ上でSSクラス生が一人ずつ魔法を使った出し物すん、おっとこれは一年生には言ったらあかんやつやったな。まあ、誰にも洩らさへんやろう?」


薄い唇に骨張った人差し指を当ててしーと言いながらにっこりと笑うが、どこか目が笑っていない。私とテッドは必死にコクコクと何度も頷いた。


「あの、そんなに忙しいのですか?」


何とか話を変えようと、ふとさっき思ったことを聞く。


「クソ忙しいぜ。新入生がこの無駄に広い学園内を探索するんだからな。迷子にならないかとか、魔法を使わないかとか、危険な行動をしないか、危険な目にあってないかとかを見張らないといけないからな。しかも前日に危険箇所のチェクもしないといけないんだぜ。猫の手も借りたいとはこのことを言うんだなと、俺は始めての新歓の準備と当日の警備で思い知った。」


答えてくれたのは3年生の赤茶色の髪をウルフカットにしているガイル先輩だ。


「そういうことや。」


委員長もニコニコとその言葉に同意する。


「しかも俺らの体は2個もねぇんだよ。目も2個しかねぇんだよ。手も2本しかねぇんだよ!

なのにこいつが人をまるで物のように扱うからな。余計に忙しいし、しんどいんだよ。」


「なーんや、ガイルは今年の新歓率先して働いてくれるんかー。悪いなー。ありがとーな。ほんま助かるわ。」


にっこぉりという形容詞が思い浮かぶほど笑みを深めた委員長が、感情が高ぶってきたのかガイル先輩が指差した先にいた。その顔を見た途端、さっと顔色が青に変わる。


「みんな良かったなー。ガイル先輩が人一倍働いてくれるって。俺らの分までしてくれはんねんて!」


既にガイル先輩の指先がへにょりと下がっている。顔色は既に青を通り越して白になっていた。周りの委員長達の哀れみの目が哀愁を誘う。


委員長の逆鱗に触れることだけはしてはならないと私は学んだ。それがここで生き抜くために最重要事項だろう。











前方の空は既に夜が迫ってきている。


「じゃあテッドは中等部の頃も風紀委員をしてたんだ。」


「まあね。それで委員長に誘われて高等部も風紀委員になることにしたんだ。」


委員会が解散になり、私はテッドと一緒に帰路の道に着いていた。


「じゃあ同い年でも、私より先輩だ。」


そう言うとテッドはにかみながら頬をかいた。


「そんなことないよ。俺が行ってた中等部はこんなに生徒数の多い学校じゃなかったし、風紀の体制もここみたいにしっかりしてなかったから。アリエルとあんまり変わんないよ。」


「それでも私より詳しいと思うわ。風紀委員って具体的にはどんなことをするの?」


「うーん、そうだなあ。簡単に言うと、この学園は授業中以外は魔法の使用を禁止してるから、それの取り締まりとかかな。そう言えば、魔法をこの学園の敷地内で使うと風紀委員室に連絡が入るらしいよ。どこで魔法が使用されたのか分かるんだって。俺はまだ実際に見たとこも体験したこともないけど。」


「それは凄いわね。」


感心したように呟くとテッドが自分の右手を前にだし、自分の銀色のブレスレットを眺めた。


「俺はこのブレスレットが関係してるんじゃないかと思ってる。これ色々な機能ついてるし。」


私もつられて左腕にはめられた自分の金色のブレスレットを見る。


「金色のやつもかっこいいなあ。俺、初めて見たよ、金色のブレスレット。」


どこか羨ましそうに私のブレスレットを見つめる。


「私も初めて見た、銀色のブレスレット。銀色も綺麗ね。」


ありがとうとテッドは笑った。


「あ、そう言えば知ってるアリエル?委員長のブレスレットは琥珀なんだって!」


サーシスが入学式の時に言っていたことだなと思い出す。


「ああ、友人から聞いたわ。確かSSクラス生は一人一人違うんだっけ?」


「そうそう!あ、じゃあ二つ名はその人の性格や気性を表してるってことも知ってる?」


「うん、まあね。生徒会長は穏やかな性格の方だから平和の花言葉を持つ雛菊だとかは聞いたわ。」


「委員長は四片だっけ?俺四片なんて花知らないなあ。」


まあなかなか花の事なんて知らないだろう。


「四片は紫陽花の別称。花言葉は家族団欒、仲良し、友達、団結だったかな。」


「風紀をまとめる立場として団結とかいい花言葉だね。」


テッドの感心したような言葉に思わず目を細めてしまう。


「そうだね。じゃあ、私はここで。送ってくれてありがとう。」


「いいってことよ!じゃあ、またあした!」


女子寮へと続く小道でテッドとは別れた。元気良く去っていくテッドの後ろ姿が見えなくなるまで手を振る。夜は危ないからとテッドが気を利かせて私を送ってくれた。女子寮は男子寮とは真反対なのに。申し訳なかったが、女の子が一人で帰るのは危ないと他の風紀委員達にも言われ、厚意を受けとることにした。


一人小道を歩きながら考える。


テッドには言わなかったが、紫陽花の花言葉はもっと別の意味がある。あまり良くない言葉だし、何故かテッドにその花言葉を告げるのに抵抗を感じて言わなかったが。


紫陽花、四片の本当の花言葉は、

移り気、浮気、冷酷、無情、冷淡、高慢。


女子寮の前に着き、ふと今まで歩いてきた小道を振り返ると強い風が吹き荒れた。

森の上には既に夜の星々が瞬いている。


委員長は優しく、いつも笑顔を絶やさず面白おかしいことを楽しんでいるように人々は捉えている。だけど






『あなたは美しいが冷淡だ』







だけど私は委員長、あなたにはこの花言葉がふさわしいと思うわ。




あの人は恐らく本性は酷く冷静で時には冷酷な判断も、例えそれが大切な人の害になったとしても下せる人物だろう。




そう考え、頭を振る。いやいや何を一体私は考えているんだか。まだ関わったばかりの人ではないか。どんな人なのか、まだ何も知りやしないのに。


肌寒さを感じて、私はそそくさと寮に入った。





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