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白百合の君  作者: 九月
第三章 16歳の私 〜ディプトリス学園魔法学科1学期〜
32/36

風紀委員の仕事。

今日で白百合の君は、初投稿から1年が経ちました。なかなか更新できない日々が続き、読者の方々には大変ご迷惑をおかけしました。これからも頑張って投稿していきますので、白百合の君をどうぞよろしくお願いします。

次の日になり、初授業を受けた。今まで家庭教師の人に勉強は教えてもらっていたから、なにかもがとても新鮮だった。大勢の同級生に囲まれて受ける授業。休み時間の友人とのおしゃべり。昼ごはんは大きな食堂に行き、何百人の人々と食べる。なにかもが私にとって初めての経験で、とても楽しかった。

私の幼い今までの過去は辛いものではない。あれはすべて私のためを思ってくれた家族がしてきたこと。私は愛されていたし、家から出られないのは仕方がなかった。だから別に自由のないあの孤独な日々を恨んでいるわけではない。だけど、やはりこの生活のほうが好きだなと、新しい幸福な時間を噛み締めて思ってしまう。

またSクラスのレベルの授業にしっかりとついていけるかも心配だったが、何とか大丈夫のようでホッとした。どの授業も面白く一日はあっという間に過ぎ去った。しかしガイウス先生の授業が一番分かりやすく、面白かったのは驚きだった。やる気のなさそうな感じのする人だったが、素晴らしい先生のようだ。だからクラスの人たちにも好かれているのだろう。



楽しい時間はあっという間に過ぎていく。



そして憂鬱で仕方がない放課後になった。



サーシス達としばしの別れを告げ、一人あまり人気のない廊下をとぼとぼ歩く。サーシス達が風紀委員室までついていこうかと声をかけてくれたが、お断りをした。そこまで迷惑をかけるつもりはない。でも、みんなの優しさはとてもうれしかった。いい友人たちを持ったなとしみじみ思う。オレンジ色の夕焼けが窓から差し込んでいた。ふと何の気もなしに右耳の耳たぶに触れる。



『決してばれてはいけない。決して油断してはならない。決して心を許してはならない。』



学園に送り出す父が、最後に言った言葉を思い出す。

分かっているわ、お父様。私は何があっても決してこの約束を違えない。




扉の前に立ち、深呼吸をする。

ここに入れば私はおそらく、もう二度と今日のような平穏な日々には戻れない。

それでも踏み出さなければ。たとえそれが私にとって良くないことであろうとも。


ゆっくり右手を上にあげ、ノックをする。



「アリエルです。」







ゆっくりとドアを開ける。

そこには昨日よりも明らかに大勢の人がいた。男ばかりが、一斉にこちらに視線を送り、戸惑ってしまう。見たところ知らない人ばかりだ。普通クラスの風紀委員の人たちだろうか。


「いらっしゃーい。」


戸惑っていると一番奥の席に座っていた風紀委員長が手をヒラヒラ振りながら、返事を返してきた。

知っている人がいてホッとする。


風紀委員長は手招きをして私を呼んだ。


「はーい、みなさんご注目。

これから風紀で働いてくれはる、アリエルちゃんです。皆仲ようするように。」


促され一応の簡単な自己紹介をする。


「高等部から入学してきました。一年Sクラスのアリエルです。

至らないことも多々あると思いますが、よろしくお願いします。」


大勢の人の視線から逃げるように礼をして、そそくさと風紀委員長が座っているソファの隣に立ち、あいまいな笑顔を浮かべる。

まだ人の視線には慣れない。


「委員長、女の子だなんて聞いてなかったんですけど。」

「可愛いね。」

「うわっ好みドストライク。」

「Sクラスにこんな子いたっけ?」


「アリエルちゃんって呼んでもいい?」

「彼氏いるの?」

「どんな人がタイプ?」

「好きなものは?」



シーンとしていた部屋が一気にざわつき始めた。

質問攻めでオドオドしている私を見かねて、風紀委員長が立ち上がり、背中に隠してくれた。


「アリエルちゃんが怖がってるから質問はまた後で。


早速やけど、アリエルちゃんはカトーの所に行って、仕事教えてもらい。」



くるりと振り向き、そう告げた風紀委員長の指先には、ヒラヒラと手を振っているカトー先輩がいた。



「これからお願いします。」


「ああ、よろしく。セド先輩はまだ来てないんだ。まあ椅子に座れよ。」


どこからか引っ張ってきてくれた椅子に礼を言って座る。


「授業お疲れ様。どうだ?初授業の感想は?」


ニコニコしながら聞いてくる。緊張をほぐそうとしてくれているのだろう。椅子を用意していることといい、こんな質問をするといい、とても気配りのできる人のようだ。さすが風紀委員のオカンといったところだろうか。


「はい、とても・・楽しかったです。」


危ない危ない。もう少しで「とても新鮮だった」と言うところだった。アリエルは平民、庶民の設定だ。平民は幼いころから初等部といわれる学校で授業を受けているのが一般的で、貴族は家庭教師に教えてもらうのがこの国の一般的な教育法だ。つまり、私は既に授業を受けた経験があることになっている。これでは新鮮という単語は矛盾が生じる。自分の一つ一つの言葉にも細心の注意を払っていかないと。


「そっか、よかったな。

じゃ、仕事について説明していくから、しっかりと聞いておいてくれ。なにか分からないことがあったら、その都度質問してくれ。」


「はい。」






仕事内容は比較的簡単なものだった。書類の記入や風紀委員が動いた事件の始末書の制作等、書類の仕事がほとんどのようだ。



「まあ、こんなもんかな?

セド先輩、これくらいですよね?」



途中から説明に参加してくれていたセドリック先輩は、コクリと頷いた。



「何か質問ある?」


「いえ。大丈夫です。」


「まあ、何かわからないことが出てきたら、俺か、セド先輩にいつでも聞いてくれたらいいよ。」


「いつでも聞いてくれ。」


「はい、分かりました。」


椅子に座ったまま頭を下げる。

顔を上げると、カトー先輩は微笑みを浮かべ、セドリック先輩は相変わらずの無表情だった。



「終わったー?

終わったんやったらちょっとアリエルちゃんこっち来てくれへん?」


「はいはい、終わりましたよ、委員長。

アリエル、行っていいよ。」


「では。失礼します。」



呼ばれた先に行くと、さっきの風紀委員たちがソファに勢揃いしていた。


「なんか、アリエルのこと知りたいねんて。ちょっと相手したって。まあ、ソファに座り。」


「あ、はい。


あの、何か?」


突然そう言われても困る。ぐるりと彼らを見渡した。


「はいはーい!俺の名前は、テッド。よろしくね。アリエルちゃん!」


ソファの後ろから意を乗り出し、手をまっすぐに伸ばしながらオレンジ色のつんつん頭の男の子がニコニコしながら言う。


「はい、よろしくお願いします。テッドさん。」


「俺アリエルちゃんと同い年だから、呼び捨てでいいよ!」


「あ、そうなんです「敬語もなし!」


「そうだね、よろしくテッド。」


嬉しそうに笑うテッドが、まるでどこかで見た犬を彷彿されて、笑みが零れてしまう。


「テッド!抜け駆けか!」

「笑ったらさらにかわいいな。」


そうして今部屋にいる人たちは順々に自己紹介をしていった。



風紀委員の人たちは面白くて、いい人ばかりのようだ。すっかり打ち解けて、おしゃべりに花を咲かせていたとき、ガチャリと扉が開いた。



皆の視線を一身に集めて入ってきたのは、赤い髪に深緑の瞳、片方だけ髪がかけられた耳には銀色のピアスがザクザクと刺さり、そして背がすらりと高い男。

そう、入学式の時に見た、風紀委員長フェリクス先輩、いや竜胆様だ。


「遅かったなあ。なんかあったん?」


「面倒な奴らに捕まっただけだ。」


冷たい視線が委員長を見てから、私に移った。


「誰だ。」


「あ、そうそう昨日お前おらんかったもんな。

新しく一年のSクラスから入ってきてくれたアリエルちゃん。

優しくしたってな。」


「アリエルです。よろしくお願いします。」


ソファにから立ち上がり頭を下げる。

顔を上げると竜胆様は私を一瞥し、委員長が座る席の奥にある右側の部屋に姿を消した。


「まあ、気にせんといて。あいつはいつもあんな感じやから。」


風紀委員長が困ったように私に言う。


「あいつ女嫌いなんだよ、基本的に。」


カトー先輩が書類を見つめながらさらりと言う。


「女嫌いですか?」


「そ。あいつ顔よし、頭よし、運動神経よしの上にSSクラスだろ?

いつも女の子の注目の的でさ、キャーキャー言われんのがうるさいし、からまれるのがめんどくさいんだってよ。

俺からしたら羨ましい限りだけどな。」


その言葉をかわ切りに、他の風紀委員たちが羨ましいと不満を述べ始めた。


「ですが、風紀委員になるには様々な条件があるから風紀委員は憧れの的だと聞きましたよ」


「アリエルにそう言われると照るな。」


藍色の髪をきっちりと七三分けにし、黒縁メガネがよく似合う綺麗系の顔立ちのスーイ先輩が少し頬を染めて言う。


「まあ、俺たちは自分の仕事には誇りを持ってるからな。」


そう言って胸を張ったのは、赤茶色の髪に、少したれ目の爽やかな印象を人に持たせるハーヴィル先輩だ。


確かに風紀委員長や竜胆様には及ばないが、どう見ても皆カッコいい、もしくは綺麗な顔立ちをしているイケメン、美形集団である。


「皆さんとてもかっこいいですし、私は、竜胆様より皆さんのほうが好きですよ。」


あんな冷たそうな人より私は風紀委員のみんなのほうが話しやすくて好きだ。


「アリエルちゃん、俺は?俺は?」


「委員長も好きですよ。もちろんカトー先輩もセドリック先輩も。

皆いい人ばかりですから。」



そう、皆いい人ばかりだ。

しかし、それを打ち消すくらいの問題は彼らのファンだ。別に他の人に迷惑をかけないのなら親衛隊はあっても全然構わないと思う。しかし、過激派がいることは事実。私と接触があるのは間違いない。

一番面倒なことになりそうなのはも、ちろん委員長の世片の会、竜胆様の竜胆の会の親衛隊だ。しかし、一般の風紀委員にも二人には及ばないが、親衛隊は存在する。ということをサーシス達から聞いた。


こんなにいい人たちに、風紀委員室以外では話しかけないでくださいとは言えない。


いっそ性格が悪いとか、荒々しくて近づき難いとか、冷たい人達ばかりだったらこの言葉を言えるし、親衛隊の問題が起こる可能性がほとんどゼロになるのに。







明日から彼らと会ったらどうしよう。






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