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白百合の君  作者: 九月
第三章 16歳の私 〜ディプトリス学園魔法学科1学期〜
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入学式。

次の日、入学式が執り行われる日になった。



私は、とても大きな体育館の新入生の席の一番後ろに座った。



もちろん、隣にはサーシスが座っている。



壇上には、なかなか渋みのある、若いころはかなりの美形だったのだろうと思われる男の人が入学の式辞を述べていた。



「あの人が学園の理事長?」



「ううん、違う。

あの人は理事長代理。または校長ともいうけど。

この学園の理事長はとてもお忙しい方らしくて、ほとんど表に出てこないの。

中等部から通っている私も実はしっかり見たことがないし。

噂によると、理事長は若くて美形みたいだよ。

代理もかっこいい方だけどね。」



「そう。」




_____次は生徒会からの祝辞です。



「来た!!

今日のメインイベントが。」


サーシスは嬉しそうに私に話しかけた。



壇上の端から登場した人は、ふわふわしていそうなミルク多めのミルクティー色の髪は肩にかかる程度の長さで、茶色い瞳の男性・・・男性?



「あの前にいる人、高等部の人?」



「れっきとした高等部三年生男子、ミカエル生徒会長だよ。」



私の驚愕した表情に笑いが堪えられなくなったのか、くすくす笑い始めた。



「アリエル本当にいい反応をしてくれるね。


まあ、会長が高等部の人に見えなくても当然。


身長が165cmしかないことに加えて、かなりの童顔だもの。


目は大きくてそこらへんの女子には負けないくらい可愛らしい顔立ちをしてるしね。


彼のブレスレットはネフライト、白い宝石のことよ。


二つ名は、雛菊様」



「二つ名?」



「あれ、知らない?


この学園では身分は全くといってもいいほど意味のないものなのは知っているよね?

まあ、この国自体が身分を気にしない国だけど。


でも、やっぱり皇太子とか皇族につながる身分の方たちを、いくら学園の規律とはいえ、名前を呼び捨てにすることは憚れるじゃない。


だから、そういう人たちには、昔二つ名をつけて、皆その人を呼ぶときはそれで呼んでたっていう名残がまだ残っているの。

SSクラスの人は、皆二つ名を持ってるし、ほとんどの生徒はそれで呼んでるの。」



「知らなかった。」



お母様もお姉様も、シアさえもそのことについて教えてくれたことはない。

恥ずかしかったのかな?


私がもし二つ名をつけられて、それで呼ばれるなんて恥ずかしさで死んでしまう。

絶対にSSクラスになりたくない。



「ま、エルは高等部からだし、知らないのも当然ね。


じゃあ、どんどん説明していくよ!


次に出てきた人は、三年生、フィオラ副会長。

生徒会ただ一人の女性。


ブレスレットは、ルビー。


二つ名は、薔薇様。



あの人は、二年生、レオンス会計。


ブレスレットは、サファイア。


二つ名は、花王様。」



薔薇様と呼ばれている人は、真っ赤な腰ほどまである長い髪に意志の強そうな翡翠色の瞳をしていた。

凛とした雰囲気が漂っていて、綺麗な人だ。体もすらりとしているが、出ているところは出ていて、スタイル抜群な人だ。



花王様と呼ばれた人は、紺色のサラサラとしていそうな髪が肩にかかるくらいまであり、同じ色の切れ長の瞳はどこか冷たげに見えた。身長は生徒会のなかで一番高い。



「花王様は、皇太子殿下なの。」



「この学園では、身分を探ることは禁止されていなかったっけ?」



「ま、そうなんだけど、さすがに皇太子殿下という身分はバレちゃうのよ。

国の祭典とかでまれに出席なさってるからね。

このことは、公然の秘密なの。」



まあ、それは仕方がないか。

皇太子ともあれば、国の祭りごとに出るのは必須、顔がバレてしまうのも仕方がない。

それにしても、二つ名が花王様とは・・・

この人ほどぴったりの二つ名はないだろう。



「そして、二年生、シア書記。


ブレスレットは、トパーズ。


二つ名は、桔梗様。」



にこにこと笑顔を向けているシアが壇上に立っていた。



よかった。ちゃんと学園生活に馴染めているようだ。




「二つ名は、その人の性格とか内面を表していると言われているの。


雛菊の花言葉は平和。雛菊様はとても優しい人で穏やかな性質の人だから。


薔薇様は、情熱、愛情。頼りになるし、一部の人からはお姉様とも呼ばれてるよ。


花王様は、王者の風格。これは皇太子殿下だし、花王様自体人を従えるカリスマ性にあふれた人だから。


桔梗様は、誠実、気品。おとぎ話に出てくる王子様そのものみたいな容姿をしているから。


ま、こんな感じかな。」



『誠実、気品』ねえ・・・


シアの花言葉に違和感を覚える。


そう、もっとシアにぴったりの桔梗の花言葉は・・・












『従順』













「エル、この花の名前は何?」


まだまだ幼い容姿のシアが、紫色の星形の花を摘んできた。


「桔梗よ。

花言葉は確か、やさしい愛情、誠実、従順、清楚、気品、変わらぬ愛、変わらぬ心だったかな。」


庭の木陰で本を読んでいた私は、顔をあげて、答えた。


「なら、この花は僕にぴったりだ。」


シアはにこにこしながら花を見つめている。


「どうして?」


「だって僕はエルに従順だもの。


エルにあげる。

僕はこの花に誓うよ。僕は永久にエルに従順だ。

僕はエルだけに従うから、エルはずっと僕の傍にいてね。」




シアに瞳はとても真剣で、私は・・・私は・・・





私はあの時なんて答えたのだろうか。


シアの中の優先順位は、1に私、2に私、3に私、4に私だ。


誇張でも自慢でもない。


やっと5くらいで私の家族だろうか。



シアはどこまでも私に従順だ。


天使のような可愛らしい容姿が、サーシスの言ったようにまるでおとぎ話の王子様のような容姿になっても、彼の中の優先順位は変わらない。


恋人でも作ればいいのに。

シアの容姿なら引く手あまただろうに・・・



いや、すでにいるかもしれない。



家に帰ってきたときはそんな話を全くしたことがないが、話すのが恥ずかしかっただけかもしれないし、そんなこといちいち私や、家族に報告しないだろう。



少し寂しさも感じるが、まあ、私や家族以外に心を占める人がいるのは、とても喜ばしいことだ。




「あ、新しいSSクラス生だ!」



サーシスのはしゃいだ声が私の思考の海から意識をもとに戻した。



壇上にいる人物が一人増えていた。



「新入生の、ロータスです。

二つ名は、蓮。

生徒会庶務に任命されました。

どうぞよろしくお願いします。」



新緑のような目に優しい髪色に深緑のような落ち着いた瞳が見えた。



「蓮様ね。

また美形が一人増えたわ。

細いフレームメガネが乙女心にグッとくるね!!!


ブレスレットは、エメラルドかな?」



はしゃいだサーシスの声に苦笑しながら、さっきから気になっていたことを聞く。



「生徒会はSSクラスの人ばかりね。」



「あれ?言ってなかったけ?

SSクラスの人は生徒会か風紀委員会に入らなければいけない義務があるの。

特に生徒会はSSクラスで構成しなくちゃいけないんだよ。」



「なるほどね。」



「次は、風紀委員長と副委員長の紹介よ。

もちろん彼らもSSクラス。」



サーシスの方に向けていた顔を前に向けると、生徒会はとっくにはけていて、違う二人が立っていた。



「まず、金色の髪の毛の人が、三年生のジョット委員長。


ブレスレットは、琥珀。


二つ名は、四片よひら様」



髪の毛が襟足だけが長く、適度に着崩した服はとても似合っているが、ちゃらちゃらした雰囲気が漂っている。

顔には笑顔を浮かべているが、どこか貼り付けた笑顔のように思えてしまうのは、私の気のせいだろうか。



「で、その隣にいる人が、二年生のフェリクス副委員長。


ブレスレットは、ガーネット。


二つ名は、竜胆様。


そして、薔薇様とは姉弟。」



確かに薔薇様と同じ髪色、同じ瞳の色をしている。でも目の色は、竜胆様のほうが濃い色のようだ。

鋭い目つきが、近寄りがたくしている。

さらに片方だけ髪が耳にかけられ、その耳に多くのピアスがついているせいで、余計に近寄りにくくしているように見える。

背はとても高そうだ。もしかしたら、花王様より高いのかもしれない。



それにしても、風紀委員のツートップが風紀を壊しすぎているような……



「これだけ知っておけば、完璧だよ!」



サーシスは満足げに言った。



「あ、ありがとう。」



なにが完璧なのかいまいち分からないまま、入学式は滞りなく過ぎて行った。

花王とは牡丹の別称

四片とは紫陽花の別称です。

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