秘密。
全てを言い切って、私は一息をついた。あの言葉に嘘偽りは無かった。ただシアに苦しんでいるのは自分だけじゃないって気づいてほしかった。シアと私との苦しみは比較出来ないほど差があるけど。
「今は生きたいと勿論思ってる。シアにも会えたしね。」
そう明るく言うと、私の背中にコツンっと何かが当たった。
「振り向かないで。そのままでいて。」
その正体はシアだった。どうやら私と背中合わせに座ったようだ。
「全部、全部思い出した。思い出したよ、エル。ありがとう。ありがとう。ありがとう。」
シアは涙声で私にお礼を言い続けた。私は何も言わず、シアの体が震えているのを背中で感じた。
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「でも、乱暴に思いだ出せてゴメンね。」
シアが落ち着いた後、私はまず謝った。シアの目元は赤くなっていた。
「ううん。本当は心のどこかで分かってたんだ。エルは僕に踏み出す一歩をくれたんだよ。恨んでなんか無いよ。忘れたままだと僕は危なかったんだよね。ありがとう。」
シアは文句1つ言わず、許してくれた。
「礼を言われるようなことしてないわ。戦ったのはシア自身だし。」
「ううん。エルは僕にとって女神様だよ。僕を優しく助けてくれる。本当に。
…でも、あの、……エル、あの話は………。」
シアは少し言いづらそうに小声で尋ねてきた。
「誰にも言わないでね。お父様にもお母様にも言ってないの。言ったら心配するだろうし。それにもう過去の事だから。」
シアだから言ったのだ。魔力の暴走の辛さを知っているシアだから。それに家の人たちに言えば、絶対に面倒なことになるのは目に見えている。私はこの話を家族にすることは一生ないだろう。胸のうちに閉まっておくつもりだ。
「うん。分かった。僕とエルだけの二人の秘
密。ありがとう、エルの気持ちを教えてくれて。母さんと父さんのことは今でも正直に言うと辛いけど。でも、でもエルがいるもんね。大丈夫。大丈夫だよ。」
シアはまるで太陽のような温かいとってもいい笑顔で話してくれた。私もシアが完璧にとは言わないが、少し前進してくれたことに嬉しくなってにっこりと微笑んだ。
「!!!!」
するとシアは真っ赤になってワタワタし始めた。私は魔力の暴走で熱が出たのかと慌てたが、シアは吃りながら大丈夫だとしか言ってくれなくなった。
そんなことをしていると、お父様とお母様がやって来て、ベットにいるシアに、大丈夫か??とか、気分は悪くないか?とか世話を焼き始めた。私はベットから降りてそれを少し離れたところから見守っていた。シアの両親は亡くなってしまったけれど、私の両親がシアの第2の両親となってくれるだろう。
一歩ずつ一歩ずつでいいから、シアには未来を歩んで欲しい。過去を忘れるんじゃなく、過去と共に。
暇潰しに眺めた窓の外には庭が広がっている。表向きは庭師として働いているスティルがせっせと、シアが燃やした木を植え替えて庭を綺麗にしていた。
私にはもう1つ両親に言っていないことがある。それはあの夢のなかの真っ白な世界のことだ。ただの夢だと割りきれたならそれまでだが、私はどうしてもそう思うことが出来なかった。もしかしたら、私はここを、家族を、シアを捨てなければいけなくなるかもしれない。
そんなことが一生なければいいと祈っている
けれど…………




