思い出された記憶。
私は冷静にシアを見つめた。
立ち上がりもしなかった。私はシアが完全に思い出すように最後の言葉を告げる。
「同じように、その魔力は両親の体を貫いた。
そう、あなたがしたようにね。」
言うやいなや、私の持たれていた木は消し炭になった。見上げた木は黒焦げで、所々火が見えた。
目の前にいるシアは顔に表情が無かった。まるで能面。人形のようだ。
「あなたは乗り越えないといけない。現実を見なさい、シア。」
そう私が言うと、シアの人差し指から私に向かって雷の魔法が来た。
「氷よ楯となれ。」
私は咄嗟に自分の前に氷の壁を作り防いだ。だが、今の私の魔力ではギリギリだ。やはり、ネックレスを取らないと…。
私はネックレスを外し、ゆっくりと立ち上がった。
ハァ……
まだまだ春の季節だが、私が息を吐くと息は白くなる。そして、私の足下には霜が降り、草木も白くなった。
シアは私の魔力が一気に膨れ上がったことに恐れをなしたのか、ジリジリと後ろに下がり始めていた。理性はなくとも、本能で危機を察知したようだ。私はそんなことを気にもせず、ゆっくりとシアに向かって歩いていく。歩くたびに、周りの草木が凍っていった。
「来るな来るな来るな来るな!!!」
シアはイヤイヤをするように首をふった。
「私の目を見なさい。」
そう言うと、シアは両耳を両手で押さえ、うずくまった。
私は目の前でしゃがみこみ、シアの頬に触れた。私の手が冷たいのか、ぶるりとシアは震えた。顔を上げさせ、私の目と合わせた。シアはがくがくと震え始めた。
私は目だけを元の紅色に戻した。シアの蒼い瞳の中に私の冷めきった顔が写っていた。
「…あ…あ…あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ…」
するとシアは叫び声を上げてガクリと気を失った。そして一筋の涙が頬を伝った。
私は目をもとに戻し、スティルを呼んだ。シアを部屋に運んでもらい、私はネックレスをつけ直した。後はシア次第だ。もし、もし、起きても理性が無かったら…いや、シアを信じよう。
見上げた空はシアの瞳と同じ色だった。
####################################
【その後】
「お嬢様!!!周りに誰も入れないように魔法をかけましたね!!!何かあったらどうするのですか!!」
「いや、周りに被害があったら嫌だし……。」
「影はお嬢様を守るためにあるんですよ!!」
「ええ……。そうだけど。」
「お嬢様、どれ程心配しかたかっ!!」
「アーリアまで……。」
「旦那様と奥様が帰ってらっしゃったら、この事は報告させていただきます!」
「待って!スティル!!それは止めて!!」
「決定事項ですから。というより、既に報告書を送っております。」
…………死んだ。




