違和感。
馬車の外にいたのは天使のような顔立ちの男の子だった。
キラキラと輝く金髪に、大きな蒼い瞳が特徴的だ。背丈は隣に立っているお父様と比べて考えるならば、私とさほど変わりはないように見えた。
「さぁ、シア君。」
お父様に促され、シア君は少し前に出て、私の目をしっかりと見つめた。蒼い瞳に濁りはなかった。
「初めまして。シア・ナディア・ラークインです。これからよろしくお願いします。」
ぺこりと礼をした。
私は立ち上がって、シア君を見つめ返した。
「エルリア・シャティス・ヴィルヘルムです。これからよろしくお願いします。」
本当に綺麗な蒼い瞳だ。私は眩しく感じて目を少し細めた。
「じゃあ、お互いの挨拶も終わったことだし、取り合えず中に入って、帰りながらお話をしようか。」
__________ガラガラガラガラ
「シアは好きな食べ物はある?」
「う~ん、果物はどれでも好きかな?エルは?」
「私は、甘いものならなんでも好きかな。」
話をするうちに、いつのまにか私達は名前で呼び合うようになり、他愛ない話をして盛り上がっていた。
シアはとても明るく、話上手の聞き上手で、話をしていてとても楽しいものだった。
そんな二人の様子をお父様はただ静かに見守っていた。
シアとは本当に気が合うと私は思った。だが、それと同時に寒気を感じていたのも事実だった。
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家に着き、シアの世話はアーリアに任せ、私とお父様は書斎で話し合った。
「お父様……。」
言葉にならなくて私は言葉を濁してしまった。
「エルリアの言いたいことは分かるよ。」
お父様は静かに言った。
「シアはとても明るくて、普通の男の子のでした。ですが、あまりにも普通過ぎます!!」
そう、シアの場合普通なのはあり得ないのだ。何故ならシアはたった1週間前に両親を亡くしたのだから!
私は衰弱し、憔悴した子供を想像して身構えていた。話すことも出来ないだろうと思っていた。だけどシアはどうだろう。見た目は健康そうだし、更に私の目をしっかりと見て、話しまでしたのだ。
「シア君は、忘れているんだよ。いや、厳密に言えば、忘れるように自分が仕向けて、実際に忘れてしまったと言うのが正しいかな?悲しい記憶に蓋をしてしまったんだよ。彼は全く覚えていないそうだ。なにもかも。あの日のことを。」
お父様はただただ静かに言った。
シアは耐えきれなかったのだろうか?その絶望に。
「だけど、悲しい記憶に目を背け続けることなど不可能だ。いつかは向き合わなければいけない。今はこれで良くても、将来何かの拍子で思い出した場合、あの子は壊れるだろう。
私達も出来るだけ手助けはするよ。だけど、エルリアの力が一番必要になる。悪いね、エルリア。エルリアに一番負担をかけることになる。」
「いえ、構いません。大丈夫です。
取り合えず、思い出させなければいけませんね………」
思い出したあとのシアはどんな風になるのだろうか?あの明るさは見る影もなくなるのだろうか?そんなことを思うと思い出させることに罪悪感を感じるが、ここで向き合わなければ、恐ろしいことになる。
魔力は平均的には、25歳程まで増え続ける。大人になってから思い出してシアが正気をなくしてしまった場合、被害が甚大なものとなるだろうことは容易く想像できる。しかもシアは元々魔力が多いのだ。下手をすれば町ひとつ消えるかもしれない。
どうすればいいだろうか?問題は山積みだ。




