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3話

「は……?」


目が覚める。


見知らぬ天井だった。


白い。


いや、白いというより豪華だ。


彫刻が施された天井。


シャンデリア。


どう見ても俺の六畳アパートじゃない。


「アルト様!?」


慌てた声が響く。


視線を向けると、そこには綺麗なメイド服を着た女性が立っていた。


二十代くらいだろうか。


美人だ。


いや、そんなことより。


誰?


「アルト様がお目覚めになられました!!」


女性は叫ぶように言うと、勢いよく部屋を飛び出していった。


その後ろに控えていたメイド達も一斉に動く。


「公爵様を!」


「奥様をお呼びして!」


「アルト様がお目覚めになられました!!」


パタパタと足音が遠ざかっていく。


そして部屋には静寂だけが残った。


「……夢か?」


ぽつりと呟く。


いや、でも妙にリアルだ。


俺は確か――。


ライブ帰りだった。


ミリリン最高だった。


推し仲間の女の子がいて。


信号無視して。


トラックが来て。


俺が飛び出して。


その後は――。


「……あ」


思い出した。


轢かれた。


俺、トラックに轢かれた。


頭がぐわんぐわんする。


考えがまとまらない。


夢なのか。


死後の世界なのか。


それとも。


「いやいやいや、そんな訳……」


そこまで言いかけて。


俺は違和感に気付いた。


声が高い。


そして。


視界に入った自分の手が。


やけに白くて小さかった。


「へ……?」


混乱がさらに加速する。


アルト?


今、俺のことか?


いや、それより。


なんか小さくなってないか、俺?


いやいやいや。


まず情報を整理しよう。


俺は確かトラックに――


そこまで考えた瞬間だった。


バン!!


勢いよく扉が開いた。


「アルト!!」


「アルトちゃん!!」


二つの声が重なる。


そして部屋へ飛び込んできたのは――


絶世の美男美女だった。


「……ほわー」


思わず見惚れる。


何だこの人達。


顔面偏差値が高すぎる。


映画俳優?


モデル?


いや、そんなレベルじゃない。


美形という言葉が服を着て歩いているような二人だった。


男性は金髪碧眼の威厳ある貴族。


女性は息を呑むほど美しい銀髪の美女。


二人とも現実離れしている。


「アルト! 大丈夫か!?」


「アルトちゃん! 心配したのよ!」


ものすごい勢いで駆け寄ってくる。


距離感が近い。


近すぎる。


完全に我が子を見る親のそれだった。


「えっ?」


俺は思わず声を漏らす。


誰?


いや本当に誰?


混乱する俺をよそに、美男美女は安心したように顔を見合わせた。


その時。


隣にいたメイドが咳払いをする。


「旦那様、奥様」


穏やかな声だった。


「アルト坊ちゃまも目覚めたばかりでございます」


「まずは落ち着いて差し上げてくださいませ」


「む……それもそうだな」


「そうね……ごめんなさいアルトちゃん」


二人は少し距離を取る。


だが視線だけはずっとこちらを見ていた。


まるで宝物でも見るような目で。


その視線を受けながら。


俺はようやく一つの可能性へ辿り着く。


……待て。


まさか。


これ。


異世界転生ってやつじゃないよな?

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