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ガラスの置物

作者: しろぎつね
掲載日:2026/04/05

だいぶ時間が空いてしまいました。

2か月ぶりの投稿になります。

ある日のこと、商店街を歩いていると少し雰囲気のあるお店が目に入りました。

看板には”黄昏工房”とあります。

「あれ?、こんなお店ってあったっけ」

この前来た時にはシャッターが閉まっていたような気がしましたが、誰か物好きな人がお店を始めたのでしょうか。


看板の下には「見学歓迎。誰でもどうぞ」とありました。

幸い今日は時間もあるのでお店を見てみることにしました。

「こんにちは…」

ドアを開けると店内には棚が並び、そこには様々ガラス製品が並んでいました。

その中に蝶の姿が彫刻されているガラスの置物がありました。

とてもきれいだったので近くに寄ってよく見ようとした時、奥の部屋から人が出てきました。


「やあ、すみません。お待たせしちゃいましたね」

店主を名乗る男性は、

「お嬢さん、そのガラス製品が気に入りましたか?」

と尋ねます。

「ええ、でも何か不思議な感じがして」

店主は少し驚いた顔をして、

「ほう、これがわかるのですか」

と言いました。

「この作品はうちで作ったものなのですが、ご興味があれば見て行かれますか?」

「いいんですか?」


店の奥の作業場らしきところに案内されると、たくさんのガラスのブロックが置いてあります。

「このガラスに彫るのですよ。普通はレーザーを使って彫るのですが、うちは少し特殊な電磁波を使います」

店主は説明しながら機械を動かし、花の形に彫刻していきます。

機械の側の台に置かれている花の絵にそっくりでした。

そして出来上がった作品をよく見ると、ガラスの中に彫られているのになんだか揺れているように見えます。

「不思議ですね」

「原理は詳しくは言えないのですが、写真でも作ることができますよ」

少し考えて、

「人の写真でもできますか?」

と聞いてみました。

「ええ、できますよ」

そして彼の写真を提示しました。

彼は最近忙しいのかなかなか会ってくれず、少し寂しい気分だったのです。

「ここに写真を置いて、このボタンを押すと動きます」

ボタンを押して彫刻が終わるのをじっと待っていると、ガラスの中に模様ができていきます。

無言で眺めていると、やがて機会が止まり、ガラスの中には写真と同じ姿の彼ができていました。

やはり揺れているように見えます。

「すごい、なんだか生きているみたい」

「大した技術でしょ。これは売り物ではないのでお持ち帰りになってください」

「よろしいのですか?」

「ええ」


お礼を言って店をあとにしました。

店主も作業場の灯りを消して、店のカウンターに戻っていきました。


その夜、ガラスの置物を窓辺にそっと置きました。

揺れる姿を見ながら物思いにふけるのでした。


店の機械の側に置いてあった花の絵は、夜中誰もいない作業場の中でゆっくり消えていきました。


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