逃げ出したダチョウ
動物園から逃げ出したダチョウを捕まえたオランウータン。「こいつが逃げたりしてすんませんね」みたいな顔をしてるけど、オランウータンも動物園から逃げた側。
なのに捕まえた側みたいな顔をするので、罰が当たる話
むかーし、むかし、動物園から逃げ出したダチョウがいました。ダチョウは、意外とすばしっこく、商店街を走り回り、人間たちが網を持って捕まえようとするけれども、なかなか捕まらず、ニュースになりました。そして、人間がなかなか捕まえられなかった、ダチョウを、同じく動物園から出てきていたオランウータンが捕まえました。ダチョウを捕まえたオランウータンは、「まあまあ、こいつも悪気はないと思うんですけどね」みたいな、得意気な、ちょっと腹立つ顔をしました。
かけつけた動物園の飼育員は、「いやいや、なんか、こっち側みたいな顔してるけど、お前も動物園に帰るんやで?」とオランウータンに言いました。
オランウータンは、それを聞いて余裕を出す感じでちょっと笑いました。
「いやいや、ちょっと笑って、冗談みたいにしようとしてるけど、お前も動物園帰るんやで。何をこちら側みたいな顔してんの?ダチョウ捕まえたからってこちら側みたいな顔せんといて?お前はダチョウ側やから」
オランウータンは、それを聞いて真剣な顔になりました。
「おかしくないですか?ダチョウを捕まえたのにダチョウ側ってどういうことですか?ダチョウを捕まえたらダチョウ側じゃないでしょう?」
このやりとりを聞いていたダチョウが突然、声を出しました。
「すいませんねえ。オランウータンは、昔からこういうとこあるんですよぉ。
こういう、なんというか、権力あるほうの右腕感を出してきたりしよるんですよ。権力側、みたいな顔するんですよぉ。こいつが、進化して、人間になったら、BARで飲んでて、自分も客のくせに、常連客ぶって、他の客が入ってきたら『いらっしゃい』って言うタイプのオッサンになりますわ。
こいつが進化しないほうがいいと思いますわぁ」
これを聞いたオランウータンは「いやいや、それはお前やん、おもろ!それ全部お前やん!」と言いました。
動物園の飼育員は、二人を遮って、「まあまあ、二匹とも!話は園で聞こう」と、刑事ドラマで警察が「話は署で聞こう」と言う時みたいな感じで言いました。
この飼育員は飼育員で、ちょっとイタイのでした。
その飼育員のセリフを後ろで聞いていた、動物園の園長は、飼育員に「お前もちょっとイキッてて、イタイから、人間の中では、ダチョウ側やな」と言いました。
飼育員は、顔を真っ赤にして「え、なんでそうなります?ダチョウを捕まえて、イキってるオランウータンにそのことを指摘して、お前もやでって言うてた側の人間なのに、なんで僕がダチョウ側なんですか?ダチョウ側ってなんですか?」と言いました。
「いや、動物園帰ろう、でいいところを、わざわざ動物相手にイキって、話は園で聞こう、って言うたから。オレ、動物園のこと、園って言うて、イキってる奴、この仕事ずっとしてるけど、お前以外で見たことがない」と園長は答えました。
飼育員は、「じゃあ、みんなはなんて言ってるんですか?」と聞きました。
園長は「動物園って言うてるよ」と答えました。
さて、このやりとりを全部中継で観ていた、残酷な王さまがいました。
王さまは、とりあえず全員拷問することにしました。
まずはダチョウです。
王さまは「早くラクになりたければ、『動物園好きです』と言え」と言いました。
ダチョウは、拷問のめちゃくちゃ前半で「動物園好きです」と言いました。
次は、オランウータンです。
王さまは「わたしはダチョウ側です、と言え」と命令し、そして拷問をはじめました。
オランウータンは拷問の最初のほうは「ダチョウを捕まえたのに、ダチョウ側なのはおかしい」とはむかっていましたが、拷問の前半のホイッスルがなり、後半の拷問に入る前の作戦タイムの時に王さまに向かって「わたしはダチョウ側です」と言いました。
王さまはたいそうよろこび、今度は、「わたしはダチョウですと、言え」と言いながらオランウータンに拷問をはじめました。
オランウータンは、最初のほうは「それはさすがにおかしいでしょう。ダチョウ側はわかるけど、ダチョウでは絶対にないでしょう!」と反発していました。
「観てください!ホラ!全然ダチョウじゃないでしょう!ホラ!ほら!ダチョウじゃないでしょう!王さま!ダチョウじゃないところを見て!」と叫んでいましたが、拷問がAメロ、Bメロ、からサビにいく感じになったので、とうとう「わたしはダチョウです」と王さまに言いました。
あと、もう拷問されてないのに、サービスで「あっしが、人間に進化したら、自分も客なのに、新規の客がBARに入ってきたら、『いらっしゃいませ』とか、言うてしまうタイプですわあ』と関西弁を使いました。
王さまは「そんなんもうええねん」と言いました。
次は飼育員です。
王さまは飼育員に「動物園のことをこれから、なんて呼ぶ?」とまず聞きました。
飼育員は「これから、動物園って言いますと答えました。
拷問する前からこのザマかよ、と思った瞬間、飼育員がボソっと「今までもずっと動物園って言ってましたし」と言ったので、王さまはイラッとしました。
「お前、話は園で聞こうって言うてたやないか!!!!」
王さまは、何も質問をしないタイプの拷問をはじめました。
飼育員は「動物園のことをイキって園って言ってました!嘘ついてすいません!」と泣いたので、王さまは拷問をやめて、「それやーん。それを最初からできたら最高やーん」と、少年サッカーの顧問みたいな褒め方をしました。
それを観ていた動物園の園長が王さまの近くに行き、「こいつこういうとこあるんですよぉ。すいませーん」と言いました。
王さまは、そんな園長に「お前はなんか可愛いなあ」と言いましたとさ。
おしまい。
芸人、ネタ作家、短編小説家。“理系の変な奴”は自分で髪の毛を切ります。それが私。ついでの用事が二個ないとお墓参りに行かないです。
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