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平民の身分ながら、ひねくれ者の第三王子様により生徒会の書記に任じられましたので、学園都市の謎を解いております。【貴族学園の不文律】  作者: ヤマモトユウ


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18/22

ある平民が、貴族学園の編入試験で不正を行った理由。(7/8)


 全てが終わり――つまり、ヤニックが自白し、衛兵に連行され、また試験に関する諸々の再検査も行われ――オディロンは、伸びをした。

 本校舎を出て空を見上げる。まだ明るい。受験生の数がそう多くなかったから、思っていたよりも早く終わった。


 オディロンは、自覚的に『自分が一番美しく魅惑的に見える笑顔』を浮かべて、ミネットに振り返った。


「さて、ミネット嬢。せっかくだし、これから――待て。どこへ行こうとしているんだい?」


 が、ミネットは足早に去ろうとしていた。

 しかも、こちらの微笑みをちらり(・・・)と見た上で、顔色一つ変えずに。


「学生部でございます。幸いにも入学させていただけますので、諸々の手続きをいたしませんと」

「手続きなら、あとでも良いんじゃないかな」


 オディロンが、すっとミネットの手を取った。


「改めて、ご挨拶を。マドモアゼル・ミネット。私はオディロン・シエール。西方王国第三王子で、次期生徒会長だ。君のおかげで、大変な不正を防ぐことが出来た。ありがとう。学園を代表して感謝するよ」


 微笑みを浮かべ、指に口づけを落とす。

 こいつは良い手駒になる、という確信があった。手懐けておきたい。そして、女性を良いように扱うのは、オディロンの得意技だ。

 ちょっと笑いかけて、触れて、甘い言葉の一つ二つ――「私は君を頼りにしているよ」とか――囁けば、あとは勝手に都合よく動いてくれる。


「どうだろう、これから私と紅茶でも。学園の内庭を眺められるテラスがあるんだ、きっとミネットも気に入ると――」


 だが。しかし。

 ミネットは、オディロンが出会ったことのない女性で。

 そして、かなりの変わり者であった。


「はぁ」


 ミネットが発したのは、そんな気のない相槌だけ。


「そうでございますか。では、小生もご挨拶を。名はミネット、姓はございません。平民でございます。それと、紅茶は結構でございます」

「……ん? あ、あれ……?」


 爽やかな笑顔のまま、オディロンは固まった。

 掴んでいた手がするり(・・・)と抜けて、ミネットは一礼した。


「では、小生はこれにて。学生部は安い下宿を紹介してくださいますでしょうか。思ったよりも時間がかかってしまいましたね……」

「え、あ……ちょ、ちょっと……?」


 ミネットは足早に歩き去って行った。

 オディロンは、目を丸くして、その背中を見つめた。

 ややあって復活したオディロンは、何故か感動していた。


「……はー。ああいう奴もいるんだな」


 それから、ふと、まだ小脇に抱えていた資料の存在を思い出した。

 ぱらぱらと捲って、候補者の名前を流し読みして、


「うん。これはもういらないな」


 そう呟き、ぐるりと丸めてポケットに突っ込んだ。

 小走りでミネットに追いつき、その背中に声をかける。


「ちょっと待ってくれって、なあ。ミネット、私の――()の話を聞いてくれ。さっき、ジルベール先生が言っていただろう? 貴族学園には、守らなければいけない、いろんな不文律があるんだ。その中にはな、こんな不文律もあるんだ。曰く、“生徒会書記は――」



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