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平民の身分ながら、ひねくれ者の第三王子様により生徒会の書記に任じられましたので、学園都市の謎を解いております。【貴族学園の不文律】  作者: ヤマモトユウ


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17/23

ある平民が、貴族学園の編入試験で不正を行った理由。(6/8)


 『生徒会書記は当代で最も賢き者が務めるべし』


 信じて金を積むには、いささかカビの生えた古くさい不文律だ。とはいえ、商家の子息が生徒会に入れば、どれだけの利益を生むだろうか。

 だって、生徒会は学園都市全体の運営にも関わるのだから――関連する出入りの業者が、全てトランティニャン商会を通して契約することになるだけでも、相当な額のマージンを得られるだろう。


 オディロンは、机に座ったままの平民を見た。


「ミネット。推測の続きを言ってくれ」

「では、僭越ながら。……採点時、模範解答例の不備に気づいた試験官様は、さぞお焦りになられたことでしょう。不備を正せば『全問正解できたほうがおかしい』ため、不正と癒着が露見してしまいかねません。もっとも、こんなもの見なかったことに出来たはずでございます。……出来たはずでございました」


 それが出来なかったのは、ミネットがいたからだ。


「小生が、その模範解答例の不備によって、次席合格になってしまうこと。これが問題だったのでございます。もし小生が答案用紙を見直せば『正解のはずの問題が不正解になっている』と気づいてしまうでしょう。そうなると、大変まずいこととなります。トランティニャン商会のご子息様が、本来であれば、あり得ない解答をしていた――不正を行っていたと判明してしまうのでございます」


 ゆえに、とミネットは言葉を繋いだ。


「試験官様は、小生を排除しなければならなくなったのでございます。それも、検算が行われないように、小生自らが不正を認め、去って行くような形でなければならなかった。だから強い言葉で尋問し、認めるように迫ったのでございます。――いえ、もはや迫るしか無かった。そうではございませんか、試験官様」


 ヤニックは、脂汗まみれの顔を歪め、怒りと焦りで体を震わせながら、何かを言おうと試みた。

 だが、喉の奥から捻り出した声は、


「この……ッ、薄汚い野良猫がァ……!」


 という、何の打開策にもならない、罵声だけだった。

 それはもはや、自白に等しい。

 ……オディロンは嘆息した。


「……ジルベール先生。今日の試験問題、全問題の精査と、模範解答例の作り直しをしてください。それから、全受験生の採点のやり直しを。今すぐに」


 事態の変化に目を白黒させていたジルベールが、はっと居住まいを正した。


「は、はい! 承知いたしました!」


 ジルベールが出て行った後、オディロンは「さて」と呟いた。

 小部屋に残されたのは、十分に事件を楽しんだオディロンと、微動だにしないミネットと、そして小刻みに震える哀れな犯人(ヤニック)だけだ。


「わ、我が輩は………不正など……」


 オディロンは、ぐい、と顔をヤニックに近づけて、笑った。


「ここまで見透かされて、まだ白を切るつもりですか。――いい加減に認めたらどうです? 不正をしたんでしょう? 自白するまで、終わりませんよ?」


 ●


 カロルは、ほう、と吐息を漏らした。


「それで……ミネット書記は、無事に首席合格を成し遂げた、と。では、カンニングを行ったトランティニャン商会の子息と、ヤニック先生――ではありませんね。ヤニック氏は、どうなりましたの?」

「子息は不合格、ヤニックは解雇。学園都市から追放されて、今はどこにいるともわからない」


 オディロンはくすくす笑った。


「この時、俺はもうミネットを気に入っていた。俺を利用しようとする人間はごまんといるが、大抵、それを悟らせないよう、愛想笑いを浮かべてお為ごかしを口にするものだ。だが、ミネットは違った」


 あの瞳は、ただ、オディロンに果たせ(・・・)と言っていた。

 権力を持つ者の義務を果たせ、と。


「そして、彼女は俺にそれ以上を求めなかった。それ以上は、何も」



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