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平民の身分ながら、ひねくれ者の第三王子様により生徒会の書記に任じられましたので、学園都市の謎を解いております。【貴族学園の不文律】  作者: ヤマモトユウ


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14/25

ある平民が、貴族学園の編入試験で不正を行った理由。(3/8)


 過去のオディロンは、ジルベールに問いかけた。


「どこの商家が後見を? あ、国外の豪族ですか?」

「後見はありませんな。王都東地区の教会の推薦状を持っておりまして、それで受験を」

「教会? ああ、無償で勉学を教えているんでしたね。なるほど……」


 ならば、十中八九、不正だ。

 オディロンはそう思った。青空教室で少し学んだ程度の貧民が通れる試験じゃない。ましてやほぼ満点だなんて、あり得ない。


「不正の手段は?」

「今回の受験者には、全問正解者がおりましてな。その者の解答を盗み見たのでは無いか、と」

「全問正解? そりゃすごい。誰です?」

「トランティニャン商会の子息です。学園にも多額の寄付を。それほどの知力となれば、前途洋々。編入後は生徒会入りもあり得るでしょうな」


 意味深に言ってくる。オディロンは肩をすくめた。


「“生徒会書記は当代で最も賢き者が務めるべし”ってやつですか。またそんなカビの生えた古くさい不文律を……。姉上達も兄上達も、そんな不文律、無視していましたよね。知人、友人ばかりで固めて――」


 その時、教室内から怒声が響いた。どん、という強い音も。


「いい加減に認めたらどうだね! 不正をしたのだろう!? この薄汚い平民が!」


 オディロンは顔をしかめて、もう一度小窓を覗いた。


「少し、言葉が強すぎますね」

「ですな。自分が監督した試験で不正が起きたとなれば、沽券に関わりますから。自ら作問し、全員の答案を採点するほどの力の入れようでしたし。かなり熱が入っているようですよ」


 ジルベールは顎髭を撫でた。


「先刻、採点中に、突如として叫び、あの受験生を呼び出したのです。それからは休みなく尋問を。平民は『やっていない』の一点張りですが。……どれ、少し休憩するよう、進言するとしましょう」


 ドアをノックして、ジルベールが中に入った。


「ヤニック先生。一旦、休まれては如何ですかな」

「いいえ、ジルベール殿! 邪魔をしないでいただきたい! これは我が輩の、いえ、学園の威信の問題なのです! 不正を見逃せば名折れとなりましょうぞ!」


 そのとき、平民がオディロンを見た。

 オディロンもまた、その平民と目が合った。

 黒い瞳に、少し気圧された。何を考えているのか、まるでわからなかったから。

 平民が、ふいに顔を正面に戻し、言った。


「小生は不正をしておりません」

「黙れ! ならば、何故、こんな高得点を取れたというのだ! 一問以外、全て正解だぞ!? カンニング以外ありえんだろう!」


 平民が怪訝そうに眉をひそめる。


「……はて。小生は全問、自信を持って答えたのでございますが」


 オディロンは「変な一人称だな」と思った。


「お教え頂きたく存じます。小生はどの問題を間違えたのでございますか?」


 いま、そこが気になるのか……と、オディロンは首を傾げた。

 ヤニックが不愉快そうに片眉を上げた。


「なんだ、その態度は! 一問だろうが全問だろうが、貴様ごとき平民に答えられるわけがない! どの問題であろうが同じことだ!」

「まあそういきり立たず、落ち着いてください、ヤニック先生」

「しかしですな――! って、オ、オディロン殿下……!」


 ようやく、そこでオディロンもいると気づいたらしい。

 ……その時、オディロンは、若干の違和感を得た。ヤニックのことは前から好きではなかったが、今日はいつにも増して、好きになれない空気を纏っている。

 そう、それは、いかにも――嘘つきの貴族らしい、雰囲気を。

 そこで、平民が再び口を開いた。


「……なるほど、そういうことでございますか」


 平民が、オディロンをじっと見た。また気圧される。


「第三王子、オディロン様だとお見受けし、申し上げたく存じます。小生は、祖国、我が父、王都東地区貧民教会、そして神明に誓って、不正をしておりません。しかし――」


 ヤニックがまた怒鳴ろうとしたが、オディロンが手で制した。

 平民は、オディロンが王族だと分かってなお、特に態度を変えることもなく、淡々と言った。


「――この試験には、決して見逃せぬ不正がございます」



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