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平民の身分ながら、ひねくれ者の第三王子様により生徒会の書記に任じられましたので、学園都市の謎を解いております。【貴族学園の不文律】  作者: ヤマモトユウ


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13/22

ある平民が、貴族学園の編入試験で不正を行った理由。(2/8)


 高等部への進学直前。三月のある日のことだった。

 オディロンは学園本校舎の廊下を歩いていた。

 片手に持った紙の束を眺め、物憂げな雰囲気で嘆息する。


「誰も彼も、王家との繋がりを作りたくて必死だな……」


 書類に記されているのは、生徒会役員の候補者リストだ。

 より正確には、希望者のリストだと言うべきか。位の高い貴族から豪商まで、我こそは、と声を上げた者達の名簿である。


 オディロンの前任の生徒会長は、双子の姉たちだった。

 双子なのを良いことに、気分で「今日はわたくしが生徒会長ね」なんて切り替えていたため、色々大変だったと聞く。

 その姉達の卒業決定と、オディロンの進学が重なり、急遽、オディロンが四月から生徒会長を務めると決まったのである。

 あの自由人な姉達のことだから、もう何年かは、だらだらと学生をやるものだと思っていたのだが……、いや、その理由は、いまは問題ではない。


 問題は、役員がいない、ということだ。

 貴族学園生徒会は、学園都市全体の運営にも関わる。

 信頼できない者を置くわけにはいかなかった。


 ●


「役員を頼めるご友人、いらっしゃいませんものね。中等部では女生徒を甘言で誑かして遊び呆けてばかりで、ろくな人間関係を築いておられませんでしたし」


 カロルは呆れ顔で紅茶を飲んだ。

 オディロンは頬を引き攣らせつつ、


「とにかく、当時の俺は悩んでいたんだよ」


 話の続きを進めた。


 ●


 資料を片手に持ち廊下を歩く三月のオディロンは、ふと、前方に人だかりがあると気づいた。

 学園付きのメイドや教師が小教室の前に集まって、何やら話し合っている。


「失敬。何かトラブルですか? ジルベール先生」


 顔見知りの老教師に声をかけると、彼は厳しい顔つきで振り返った。


「おお、オディロン殿下。ご機嫌麗しゅう。……いや、実はですな。平民特待生の編入試験で、不正があったのだそうで」

「不正?」

「ええ。担当したヤニック先生が、いま、疑いのある受験者を問い詰めているところです」


 オディロンは書類を小脇に挟んで、教室の扉の小窓から中を覗き込んだ。


「へえ、それは面白――じゃない。大変ですね、先生」

「殿下、あなたはまたそういう……」


 半ば物置のように使われている小教室らしい。

 壁際に積まれた荷物以外には、簡素な椅子が二脚、テーブルを挟んで置いてあるだけだ。

 椅子の片方には担当したという太った男性、ヤニック教授が座っている。


「不正をしたんだろう!? 貴様!」


 泡を飛ばして叫んでいる。


 そして、椅子のもう片方には、背の低い女子が座っていた。

 パッチだらけ、つぎはぎだらけのワンピース。おさげの長い黒髪はボサボサで、学園でよく見る豪商の子女達とは、まるで雰囲気が違う。

 端的に言うと、怪しい。


「……彼女が不正を?」

「はい。一問を除いて、全て正解だったそうです。あんな格好の者が、それほど正解できるわけがない、だから不正に違いない……と」


 ●


 カロルは話を聞いて、顔をしかめた。


「格好だけで決めつけるなんて。……仕方ないのでしょうけれど。平民特待生の編入試験は難しいと聞きますし」

「そうだな。豪商の子息が、何年もみっちり家庭教師を付けて勉強して、それでも半数は落ちる試験だ。優秀な文官の候補を探すための制度でもある。だから、試験内容にダンスやマナーは一切関係ない。問われるものは、算学、法学、史学の三つだけ。特に難しいのは――」


 オディロンも、一口、紅茶を飲んだ。冷めている。メイド長を呼び戻すか。いや、いまは唇が潤えば、それでいい。


「――算学の最後の大問だ。三つの小問で構成されているんだが、一つ目の小問で大問全体の鍵となる数字を導き出し、その鍵を用いて二つ目、三つ目の小問を解くという、そういう形式だ」

「では、その一つ目の小問を落とすと……」

「三問全てを間違え、大問を全て落とすことになる。毎年、九割以上の受験者が間違える、難しい問題だよ」


 苦笑する。


「教育を受けてきた貴族の令息、令嬢達も、まずわからないだろう。西方王国各地の学校や商家から、見込みがあると推薦された、学問に秀でた者だけが受験できる試験。それが平民特待生編入試験――つまり、実質的には『平民の中でも金持ちしか受けられない試験』だ。なのに、ミネットは当たり前みたいな顔して、そこに座っていた」


次回の更新は、また来週の土日になると思います。

師走はなんやかんや忙しいですね。誰の師でもないのに。


当作品は推理作品での日間総合ランキング入りを目指しておりまして、


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