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平民の身分ながら、ひねくれ者の第三王子様により生徒会の書記に任じられましたので、学園都市の謎を解いております。【貴族学園の不文律】  作者: ヤマモトユウ


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12/22

ある平民が、貴族学園の編入試験で不正を行った理由。(1/8)


 その日、生徒会室にミネットはいなかった。

 いるのは、ソファに座るオディロンと、その対面に座るカロル・ド・ラ・カッサータだけである。


「――フィーリクス殿と、仲睦まじく過ごしているようで、安心したよ。生徒会長として、君たちのその後には心配もあったからね」


 オディロンは膝に肘をついて顔の前で指を組み、いつもの微笑みを湛えている。


「ええ、順調そのものですわ。昨日も、街のカフェで話題のスイーツを一緒に頂きましたの。それがふわふわで、とっても美味しくて――いえ。今日はのろけ話を聞くために、わたくしを呼んだわけではないでしょう?」


 カロルもまた、優雅に微笑んでいる。

 つまり、至極ありがちな王侯貴族のよくある会話(・・・・・・)の様相だ。


「予想はついているんじゃないかい?」

「ええ、もちろん。副会長職の打診でしょう?」


 カロルは事もなげに言った。


「さすが、カッサータ家のご令嬢だ。その通り。我が生徒会は慢性的な人手不足でね。書記以外の役員を任命しなきゃいけないんだが、信頼できる相手はそういない。その点、君は家柄も人格も確かだし、とても信頼できる――」

「あら」


 わざとらしく眉を上げて、カロルがさも意外と言いたげな声を上げた。


「生徒会に大恩があるわたくし、カロル・ド・ラ・カッサータなら、裏切られる可能性が少ない――と、思っているだけではありませんの?」

「……。……そういう、いかにも貴族らしい、『察する能力の高さ』も、私は実に副会長向きだと思っているんだ」


 オディロンが、はあ、と大きく息を吐いた。


「少しだけ腹を割って話そうか。()はね、そもそも貴族って生き物を信じていないんだ。息をするように嘘を吐き、水を飲むように人を裏切る。信頼できるわけがない……」


 例外も、いなくはないが。嘘を吐くのが下手な筋肉馬鹿とか。

 だが、そういう馬鹿は、それはそれで生徒会に入れられない。馬鹿なので。


「だから、生徒会に入って貰うなら、恩を売った相手か、いっそしがらみのない平民の方が安心できる」


 カロルは内心で(人間不信ですわね……)と呟く。

 王族の第三王子。きっと、侯爵令嬢であるカロルであっても比にならないくらい、彼を利用しようと企む者達に囲まれてきたのだろう。

 正直、打診を受けること自体は、まったくやぶさかではない。恩は恩だ。

 しかし、だ。


「お返事を考える前に、ひとつ、お聞かせ願いたいことがありますわ」

「なんだい?」


 カロルには、確認しなければならないことがある。


「ミネット書記のことです。彼女は一体、何者ですの?」


 フィーリクスの誇りを守った、あのちんちくりんの生徒会書記。


「彼女にも、もちろん感謝しております。彼女の頭脳なくしては、わたくしはフィーリクス様と一緒にカフェに行くことなど出来なかったでしょう。けれど、あの方……謎の人物ですわよね? どこかの豪商の子女というわけでもないようですし」

「調べたのかい?」

「淑女ですもの。噂程度なら、いくらでも耳に入ってきますわよ。高等部からの編入生で、平民特待生。この春に突然、学園都市に現れ、学園一の頭脳を持つとして書記に大抜擢された、謎の才女。……その正体については、下世話な噂もありますわね」


 指折り数えてみる。


「東方からやってきたスパイ説。没落した大貴族の娘説。王家お抱えの暗殺集団の秘蔵っ子説、なんてのもありますわね」

「あと、俺のそういう遊び相手(・・・・・・・・)って噂もあるな。誰も彼も、下世話な噂話が大好きで困ったものだ」

「では、噂話ではない、ミネット書記の真実とは? お教えくださいませ、オディロン殿下。彼女は、どこの誰なのです?」


 カロルは、それなりに踏み込むつもりで、問いを投げかけた。


「真実。真実、か……。王都東地区出身の孤児だと、本人は言っている。書類上もそうなっている。だが、それ以上のことは、俺もよく知らない」

「……ちょっと待ってくださいな。殿下、あなた――素性の知れない方を身近に置いておいでですの……!?」


 オディロンは肩をすくめた。


「言っただろう。貴族って生き物よりは、よほど信頼できる。……し、ミネットは不正を許さず、嘘も吐かない性格だ。役員にはもってこいだろう?」

「素性を知らないくせに、何故そう言い切れますの? 何か、そうと判断できることがあったんですのね?」

「ああ」


 美貌の生徒会長は、ふと、窓の外に視線を向けた。


「そう、あれは――」



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