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警視庁陰陽課異聞禄:東京怪奇譚  作者: 渋谷直樹
九折町山神祭事事件:ええ日じゃあ
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九十九折町山神祭事事件:ええ日じゃあ 其の拾伍

 山が見えた気がした。草木が青々と茂り、小川が流れ、獣や虫がポツポツと産まれ、死んで行く。


 それで良いと思った。


 人里が見えた。産まれたり死んだり、そこまでは同じ。しかし、泣いたり叫んだり、喜んだり怒ったり、ほかの連中とは違って、随分と忙しそうだった。


 火を焚いていた。沢山集まり、ごっちゃになっていた。ほーほーほー、どうやら、これは私の為のものらしい。


 居なくなった。


 ちょっともしない内に、だぁれも居なくなってしまった。


 つまらないと思った。


 最初は腹を立てたりもしたが、やはり誰も来なかった。


 しかし、それもまぁ良いか。そう思う事にした。


 寝るのにも退屈し、飽きるのにも面倒になった。


 音がした。大きな大きな音がした。懐かしい気がした。


 ひょいと覗いた。


 これはこれは、また大勢集まってごっちゃになっている。


 歓迎されている。求められている。招かれている。


 ほー

 ーほー

 ほー。


 ◇◇◇◇


 神楽台に座る、禰宜原の奏上する祝詞が終わった。静かだった。まるで、朝靄に煙る深山のように、ひんやりとした静寂だった。


 その静けさの終わりを告げるように、宙に浮き飛び回っていた金属の残骸たちが、一つ、また一つ、ポロポロと地面に落ちていった。


 ガラン、だとか、カコン、といったような音が、拍子木を打つように順繰りに鳴った。


 等間隔だった音が早くなる。隙間がなくなり連打される。音は、神楽台に座る禰宜原へと一直線に向かっているように思えた。


 そして、全て相整(あいととのった)ったと言わんばかりに、ガシャァンと一際大きな音がした。


 ビクンと禰宜原の頭が跳ねた。


 力が抜けたようにだらりと頭が垂れ下がった。もぞもぞと背中が蠢き、ぬるりと顔が上がった。


「おっほ♡」


 笑顔だった。

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