間章① 作戦
どんどん準備は進み、あっという間にクリスマス二日前。明日はクリスマスイブというところまでたどり着いた。準備はもうほぼ終わり。フィリアとティリアは、教会の屋根に上って村を見下ろしていた。幼いころはこうやってよく森の家の屋根に上ったものだ。フィリアとティリアは横に並んで腰かけていた。
「ねえ、フィリア。明日はどんな日になるのかな」
「そうね。楽しい日になるとよいのだけれど」
フィリアは少し小さくかすれた声で言った。ティリアはそっとフィリアの背中に手を回す。フィリアの身体は少し震えていた。きっと、寒さのせいだけではないだろう。ティリアは優しい声で語りかける。
「大丈夫だよ、きっと。皆、楽しんでくれているでしょ。それに……明日は私たち、サンタクロースになって皆に幸せを届けるんだよ?」
ティリアの諭すような言葉に、フィリアは頷いた。ティリアはじっとフィリアの様子を見ていたが、やがてため息をついてバシッと強めに背中をたたいた。痛っ、とフィリアは声を上げて、思わず立ち上がる。そして、自分の背中をさすった。
「痛いよ、ティリア。何するの」
「くらーい顔しているフィリアにお仕置きしたんだよ」
ティリアはいたずらっぽく笑いながら、腕を少し上げてフィリアの脇腹をくすぐった。
「やっ、やめてっ、あっ、ああっ、ううっ」
変なうめき声をあげて、フィリアが身体をよじる。耐え切れなくなって屋根の上に座り込み、そしてついに笑い出した。ティリアは満足げに頷いて、フィリアからはなれる。そして立ち上がった。彼女のツインテールが風になびく。笑いを収めたフィリアは、ティリアを下から見上げた。ティリアはフィリアを見下ろし、ふふっと不敵に笑う。
「さあ、フィリア。クリスマス大作戦の始まりだよ!」
クリスマス大作戦。それは、フィリアとティリアが毎晩毎晩練ってきたものだ。皆を楽しませる、とっておきの作戦。そしてそれは———フィリアはそこまで考えて、首を振った。それは、今は考えなくていいことだから。
「うん、そうだね、やろう!」
フィリアも立ち上がる。二人は手をつないで、お互いに顔を見合わせて頷く。そして、お互いの手にぐっと力を込めた。お互いの存在を、互いにつなぎとめるように。
これは、シノルもシリカも知らない、聖女たちだけが知るお話。聖女たちは何かを決意した。それは、どのような結果をもたらすのでしょうか。




