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第五話 初めての試み


「誰か外に出てみたい人はいますか?」

 いっきに広場が静まった。大人たちはおろか、子供たちでさえもだんまりだ。外に積極的に出ようとしたのは、ここにいない聖女たちだけだ。皆がなすりつけあうように隣の人をつつき始めた。

「……俺が出ます」

 そういいだしたのは、長い時間をかけて何かを考えていたシノルだった。シリカは反対の言葉を出さず、ただ頷くだけにとどめた。トレルはじっと彼を見つめる。村人たちはどよめいた。

「トレルさん。トレルさんは外のことを良く知っていますよね。的確な場所はご存じでしょう。俺を案内してもらえませんか」

「それは構いませんが……良いのですか? 牧師様が外に出てしまわれると、シスター様だけになってしまうのでは?」

 村人たちがこくこくと頷く。シリカはしばらく考える様子を見せたが、やがてシノルにこそこそと何かを話す。シノルは頷いた。

「外への偵察は日帰りにしましょう。そうすれば、あちらに泊まったりはしないので、シリカ一人でもなんとかなるでしょう。聖女様たちの旅は一週間だったので、さすがに長期間空けることは厳しいと判断しましたが、一日・二日くらいならば大丈夫でしょう。シリカもできると言っていますし」

 シリカは微笑んで余裕を示して見せた。子供たちの中には、行きたいけど先ほどの雰囲気で行きたいといいだせなかった子たちがいたようだ。皆で輪になって話し始める。そして、数人が手を挙げた。皆瞳を煌めかせている。村にこもりきりだったので、外の世界を見るのが楽しみで、それだけでも冒険になるのだ。子供たちはシノルの周りに集まった。

「牧師様、僕も行く!」

「私もついていきます!」

「俺も!」

「私も!」

 子どもたちとシノルが行くといったからか、大人たちの中からも何人か行くという者が出始めた。そして、十数人規模でほかの街に偵察に行ったり、針葉樹を探し出したり、必要なものを買いに行ったりすることになった。聖女たちが考えたクリスマスで村を彩るという計画が、ようやくスタートを切った。


 それから、クリスマスの間まで、村一体となってクリスマスの用意をした。聖女たちが帰ってくるまでの間に、トレル・シノル率いる偵察隊はもみの木を探し出した。トレル曰くその木はずっと使えるらしいので、まずは小さめのものを用意するそうだ。そして、それは根ごと掘り出すらしい。

 一日目にトレルがいい感じのもみの木を探し出し、男たちは村に戻って運搬用の道具をそろえる。そしてその後二日間かけてそのもみの木を村まで運搬してきた。村人たちはもみの木はおろか、針葉樹も初めて見るので、みんな興味津々だ。その次の日に陶器職人が前の三日間のうちに作っておいた大きい鉢に入れた。これでクリスマスツリー確保。


 その間女子供が何をしていたかというと、真剣にクリスマスらしさを議論していたのである。シリカが率いる何人かの運動が好きである女性と子供たちで村中を回ったり高台から見下ろしたりして、村の地図を作った。地図は二日間で作り終わり、その二日間、残りの女性たちは何をしていたかというと、どんな料理を出すか、どんな服を作るのかということを議論していた。そして残りの二日間で村のどこに出店を出せばよいのかなどを話し合った。


シノルとシリカは聖女たちに感化されているのか、多少は外に出ることに忌避感を覚えていません。皆はシノルとシリカを信頼しています。二人がいれば、聖女たちがいなくなっても大丈夫そうです。あ、そろそろ聖女たちが帰って来るかな……?

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