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第一話 クリスマスとは


「くりすます?」

 不思議そうな声が、昼の教会に響く。シリカという名の少女は、掃除の手を止めた。水色のふわりとした少し長めの髪に、紫色の瞳を持つシリカは、この教会のシスターである。彼女が視線を向けた先にいたのは、声を上げた一人の青年、シノル。

 シノルは濃紺の短めの髪にヘーゼル色の瞳を持つ、この教会の牧師である。

 シリカは少し首をかしげながら、シノルのほうに近づいていく。そして、シノルの前に立つ二人の少女の姿を認めた。

 金色の髪に、翡翠色の瞳を持つ少女ティリアと、白い髪に深紅の瞳を持つ少女フィリア。二人は、この村でシリカやシノルとともに暮らす聖女である。

 大方聖女たちがシノルにそのくりすますという何かに関することを言ったのだろう。シリカもくりすますという単語を聞いたことがない。シリカが近寄ってきたことに気づき、三人ともシリカのほうに視線を投げかけた。

「どうかしたの、シノル?」

 シリカがそう尋ねれば、シノルは困ったように頭を掻き、視線をわずかに上にあげる。

「えっと……フィリア聖女とティリア聖女が、くりすます、というお祭りを開きたい、と急に言い出して……、くりすますって、なんだ?」

 どこか異国の言葉だろうか。シリカは首を振った。シノルと一緒に育ってきたようなものなのだから、シノルが知らないものはシリカも知らないのだ。そのことはシノルにもわかっていたのだろう。困ったように頭を掻き続けている。彼の考えこんでいるときの癖だ。シリカは、聖女たちを見た。すべてを知っているのは、この聖女たちだけだろう。

「えっと……フィリア様とティリア様が昨晩考え込んでいらしたのは、クリスマス、とやらに関係するのですか?」

「そうです!」

 素早く反応したのは、ティリアだ。フィリアも遅れて頷く。この二人の聖女は感情が豊かである。そして、ティリアのほうはおしゃべり好きである。いつもはおいしい料理に目を輝かせ、これはどのように作ったのですか、と興味津々にティリアが尋ね、シノルが返してくれた答えをフィリアが真剣に聞いたりなどにぎやかな食卓になる。

 しかし、昨晩の彼女たちは少しおかしく、ティリアもフィリアも何もしゃべらずに真剣な表情で黙々と食べ進めていたのだ。だから、なにかあるのだろうと感づいてはいた。

 フィリアは小さく深呼吸をして、シリカの瞳をまっすぐに見つめた。シリカも彼女と視線を合わせる。

「クリスマスという存在を我々が知ったのは、昨日のことです。旅人さんが教えてくださりました。クリスマスは、ほかの街では毎年開かれるお祭りの名前だと仰っていました」

 フィリアがシリカに説明し始めた。シノルも横で静かに聞いている。

 クリスマスは、初代大聖女の誕生を祝うお祭りであること。十二月二十四日と二十五日に開かれること。豪華な料理がふるまわれること。町中が飾られること。サンタクロースが訪れること。

それらを説明し終え、フィリアはふう、と息をついた。シリカもシノルもそのお祭りのことは知らなかった。おそらく、村の民も知らないだろう。


ちょっと短めです! フィリアとティリアからクリスマスの存在を教えてもらったシリカとシノル。彼女たちはどう動くのか。お楽しみに!

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