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第十五話 正体


 シリカとともに入ったのはシノルのみで、他の者たちは空気を読んで教会の前に残った。

「……ティリア様とフィリア様、ですよね?」

 教会の扉が閉まり、教会の中に四人だけになった後、シリカは改めてそう問いかけた。大人たちは昨日何度も聖女様と呼んだが、そのどれにもこの少女たちは反応しなかった。けれど、今回のシリカの問いかけには、反応した。

「ええ。シリカもシノルも、子供たちも大人たちも、わかっていたようですね」

 金髪の少女、ティリアがそうぼやいた。白髪の少女、フィリアも苦笑をうかべている。シノルは呆れたように腰に手を当てる。

「バレバレです。髪の色も声色も同じなんです。そりゃあわかるでしょう」

「ですよね……」

 フィリアは苦笑を深めた。聖女たちは身をひるがえし、とん、とんと軽い足取りで主祭壇のほうへと向かう。そして、二人そろって主祭壇の前に立った。主祭壇を挟んで、聖女たちとシリカ・シノルは向かい合う。シリカはこくりと息を飲み、シノルは一度深く深呼吸をする。

「貴方たちは、何者ですか」

 シノルはそう問うた。シリカも真剣な面持ちで聖女たちを見つめる。

 聖女たちの行動は、昨日からおかしかった。元々の聖女たちであればできぬ魔法のような行動。高すぎる身体能力。何か原因がないとあんな風にはならない。何が彼女たちに起きたのか。それを、二人はずっと知りたかったのだ。そして、恐れていたのだ。彼女たちがこの村から去ってしまうことに。遠い存在になってしまうことに。

 今も、日の光を背で受けている二人の聖女は、遠い存在のように感じられる。神々しさが増している。

二人の聖女は微笑んだ。でも、二人にとってはそのほほえみは慈悲のほほえみではなく、残酷な運命を告げるほほえみのように見えた。フィリアはそっと目を伏せた。

「わたくしたちは、〝人ならざる者〟です」

 フィリアはそう告げた。シリカはその言葉に衝撃を受け、呆然と口を開ける。シノルはくしゃりと髪をかきまぜ、顔をゆがませる。

「人……ならざる者?」

「人じゃないということだ、シリカ。もう聖女様たちは、昔の聖女様たちじゃない」

 ふるふると頭を振り、シリカは座り込んだ。覚悟していたはずなのに、現実が受け入れられなかった。シノルはきつく目を閉じ、腕を組んで近くの椅子に寄りかかる。予想していたことではあったが、彼女たちが遠い存在になったことを突き付けられたのだ。だって、おとといまでは普通に、同じ人間として楽しく過ごしていたのに。一日で、人ではなくなってしまったというのか。ティリアもフィリアも静かに二人を見つめている。

「大聖女様は……シャーロット様は、そう仰いました」

 ティリアも肯定の意を示した。二人の口から告げられた。フィリアの妄言ではなかった。シノルは閉じていた眼を開いた。そして、いまだ現実を受け入れられていないシリカの肩にそっと手を置いた。しかし、彼女はまだ現実を受け入れられていないようだった。平静に見えていたが、あんな言葉を告げられれば衝撃も受けるだろう。シノルも、何度も何度も頭の中でそう告げられることを想像していたからこそ乗り切れた。

 シノルは彼女の横に跪き、シノルは聖女たちを睨みつけるように見据えた。

「フィリア聖女、ティリア聖女。教えていただけませんか。大聖女様とお話したことを、全て」

 ティリアとフィリアはお互い顔を見合わせた。しばらくの視線の交換の末、お互いにうなずきあった。そして、シノルとシリカを二人は見つめた。シリカもぼんやりとした瞳で二人を見上げる。最初に話し始めたのは、フィリアだった。


まあ、聖女たちもわかっていたようですね。正体がばれてるっていうことは。でも……なんだか、すごく不穏な話が始まりそうです。

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