第十三話 サンタクロースからの小さいプレゼント
こん、こん。シリカは再びドアをノックした。
「サンタクロース様。皆、クイズを解き、宝探しを終えました。プレゼントを皆が待っています」
そうシリカが告げると、すぐに「了解でーす!」と明るい声が聞こえた。声が聞こえてきた方向に皆が視線を向けると、木の上に金髪の少女が立っている。
「お姉ちゃーん! この子たちもうクイズ解いちゃったって! むずかしくしたよね?」
金髪の少女が教会の屋根のほうに向けてそう呼びかける。すると、教会の屋根の上から白髪の少女が姿を現した。悔しそうに唇をかみながら。
「わたくしのクイズは完璧だったはずだわ。なのに解いたっていうことは……」
「この村の人たちは、私たちのことを良く知ってくれているってことだね!」
金髪の少女はフォローする気があるのかないのか、白髪の少女の発言を遮って、のほほんと告げた。その内容に、子供たちがはしゃいだ。
「サンタクロースさん! ちゃんと証拠持ってきたよ!」
先ほど最後の問題を解いて見せた少女が手を大きく振りながらそう言った。すると、二人の少女はそれぞれの場所から身を乗り出した。
「ほぉ、それは楽しみだぁ! 見せてごらん?」
「わたくしにも見せてもらえない?」
白髪の少女と金髪の少女が地面に降り立って、そう尋ねる。金髪の少女は白髪の少女が立っているところへ駆け寄った。
子供たちは彼女たちに群がり、シリカが手渡した回答用紙を見せる。白髪の少女と金髪の少女は紙を順番に見ていく。そして全て見終え、うん、と頷き合った。
「皆ちゃんと解けているね。えっと、ちょっと待っていて!」
「プレゼントをとってくるわね」
そういい、少女たちはたんっ、と地面を蹴って飛びあがり、教会の屋根に降り立った。おお、と子供たちが拍手をする。運動神経がかなり向上しているようだ。
シリカは冷静に分析した。ちょっとおっちょこちょいなティリアと、インドア派のフィリア。シリカの記憶の中にある二人は、そんなに運動神経はよくなかった。やはり変わっているのだろうか。
「持ってきたわ」
「みんなにあげるね」
彼女たちは一瞬にしてそれぞれ大きな袋を持ってきた。白髪の少女は自分の袋を開き、小さなプレゼントを子供たちに渡していく。子供たちの顔に笑顔が広がっていく。ちら、と彼女は大人たちのほうを見た。シリカとシノルが顔を見合わせて頷き、他の大人たちにアイコンタクトをした。すると、大人たちもおそるおそる少女たちに近づいていく。
「大人の方も同じ答えだったんですよね?」
シノルが代表して頷くと、金髪の少女がにっこりと微笑んで、大人たちにプレゼントを配り始めた。大人たちは誕生日でもないのにプレゼントをもらったことがなかったので、ぼんやりとそれを眺めている。
白髪の少女はプレゼントを全員に配り終えたらしく、「開けてごらん?」と子供たちに促している。子供たちは大きな歓声を上げてプレゼントを開封した。すると、次々とさらに大きい声で喜びの声が上がった。
「私のやつはお人形さんだ!」
「私のは服!」
「俺はかっこいいマントだ!」
「僕は本だよ」
子どもたちは大はしゃぎして、それぞれのプレゼントを見せ合う。たいていがおもちゃで、皆早速遊び始める。白髪の少女が金髪の少女に視線を向け、それに気づいた金髪の少女大人たちにプレゼントを渡しながら一瞬視線を躱し、ウインクをしあった。
そういえば、聖女たちはくつ下を作らせている際、「何か欲しいプレゼントってあるの?」と尋ねていたとシリカは思い出す。
白髪の少女のところに、一人の少年が近づいていく。白髪の少女がかがみこんで少年と視線を合わせた。
「ねえねえ、靴下に入っていたお菓子のプレゼント……あれってサンタクロースさんのものなの?」
「ええ、そうよ。貴方たちが喜びそうなクッキーにしておいたわ。苦手だった子がいたかしら?」
白髪の少女が心配そうに問いかけると、少し遠くにいた子供たちがバット顔を上げた。
「全然!」
「大好き!」
白髪の少女が胸をなでおろす。話しかけた少年も、すごくおいしかった、と喜びを語る。少女はそれを頷いて嬉しそうに聞いていた。
子どもたちの話を聞く限り、夜にはくつ下の中にお菓子がいれられたらしい。参加賞、ということだろうか。シリカはそんなことを考えながら、金髪の少女からプレゼントを受け取る。
「さあ、あなた方も開けてみてください!」
金髪の少女が配り終え、明るく呼びかけた。大人たちはプレゼントを開ける。そこに入っていたのは、それぞれの仕事に関わるものだった。大人たちはさらに目を丸くしてプレゼントを見つめる。
「これは……手帳?」
「綺麗な糸……」
「設計図か?」
「これは、程よい香りのする……」
こちらも好みのものが配られたようだ。皆少しずつ笑顔が広がっていく。反応が悪いものではない。たくらみ成功、とばかりに金髪の少女が笑っているのをシリカはしっかりと見た。金髪の少女がぱん、と手を叩いた。皆が騒ぐのをやめ、金髪の少女を見る。
「皆は宝探しもちゃんとできたようだし、おっきいプレゼントを渡すねー!」
「ちょっと待っていてくださいね」
白髪の少女がくすっと笑い、胸の前で十字を切った。すると、少女たちの姿が掻き消えた。子供たちは騒ぎだす。一度見せられているので、驚きというよりかは、これから何が起こるのかということに対する期待のほうが大きく出るようだ。大人たちは驚きもせず、じっとお少女たちが消えた空間を見つめ続ける。
何とサンタクロースさんがくれたのは小さいみんな好みのプレゼント! 大きいプレゼントとは一体何なんでしょう……?




