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第十話 サンタクロース


 目の前に現れたこの二人の少女は得体のしれない少女である。それにいまだ聖女様たちは現れない。だから最悪の状況を考えてしまう。

 もしこのサンタクロースたちが聖女様たちの容姿を真似しているだけだったら? もし自分たちをだまそうとしていたら?

 考えれば考えるほど、少女たちを信頼することが出来なくなっていく。子供たちを止めたくなる。でも、もし止めて自分たちが聖女様たちと同じように姿を消すことになったら? イレギュラーな状況が続き、頭が混乱し、どんどん悪い方向へと思考が向かってしまう。大人たちは頭を抱えた。

 子供たちの相手をしていた少女たちは、大人のほうに向きなおる。そして頭を抱えている姿を見て、顔を見合わせて困ったように笑った。

 シリカはその表情を知っていた。聖女様たちが初めてこの村に来た時。聖女様たちは村人たちを救おうとしたが、得体のしれない彼らに皆警戒心を抱いた。その時にうかべた笑みと似ている。自分たちはみんなの助けになりたいだけなのに、どうしてうまくいかないんだろう。そういう表情。

 少女たちは何枚かの紙を取り出して、大人たちの方に差し出した。

「大人の皆様もやってみたらどうですか?」

「きっと楽しいですよ」

 しかし、誰もそれを受け取ろうとしなかった。誰も何かを話そうとしなかった。はしゃぐ子供たちの姿とは対照的に、大人たちはだんまりを決め込んでしまう。その中で、シリカは自分が動くしかないと考えた。

「サンタクロース様……あなた方は、何をなさりたいのですか」

 シリカの問いかけに、少女たちは少しうつむいた。しばらくそうしていたが、やがてゆっくりと顔を上げる。大人たちの視線が集まる。

「我々は、もっとクリスマスを盛り上げたいと思ったのです。だからこそ、この企画を立ち上げました」

「子供たちは喜ぶだろうと思いました。でも、それでは大人たちは楽しめないだろうという懸念もありました。だから、無理強いはしないつもりです」

 白髪の少女がそっと一枚の紙を懐から取り出した。メモ帳サイズの紙だった。それをシリカの手にそっと握らせる。そして、彼女は笑った。どこか、寂しそうな雰囲気を漂わせて。

「そこに来てください。きっと少しは楽しめると思いますよ」

 金髪の少女が手を振る。すると、白髪の少女と金髪の少女の姿が霞んで、次の瞬間消えていた。その場に残らない。彼女たちがいたという痕跡が、どこにも見当たらなかった。

 皆、呆然とした。子供たちはしばらくしてからまた騒ぎ出したが、大人たちは衝撃から抜け出しきれない。大人たちは悟っていた。彼らは聖女様たちだと。根拠を上げろと言われたら困る。ただ、彼らは聖女様たちだと、そう感じるのだ。

 だとしたら、明らかに様子がおかしい。いつもはあんなに不思議な現象を起こさないからだ。そして、あんな突拍子もないことをするとは思えない。あの服はサンタクロースの装いだろう。トレルもそう言っていた。サンタクロースは赤色と白色の服を着ると。

 でも。それだけではなかったのだ。シノルもシリカも知りえないもの。〝ナニカ〟に彼女たちはなったのだ。

「あの二人の様子はおかしかった」

 シリカはつぶやいた。大人たちはそっとシリカに視線をやる。うつむき、手の中にある紙を握りしめながら、彼女は言葉を絞り出す。

「聖女様たちは変わった。得体のしれないものに。でも、それはたぶん、彼女たちの欲望が原因じゃない。だって、聖女様たちはこの村のことが大好きだから。だからこそ、彼女たちはここにとどまることを望むはず。これは——私たちに覚悟を問うためのイベントでもあるのかもしれない」

 静寂が立ち込めた。シノルがシリカの手から紙を奪う。そして、その紙の内容を読んだ。そして、はぁぁぁぁ、と深いため息をつく。

「教会の中で……って、解かせる気満々じゃないか」

 シノルの呆れたような言い方に、くすっと誰かが笑いを漏らす。やがてその笑いの波は伝染していき、大人たち皆が笑い出す。子供たちが黙り込んで、不思議そうな顔で大人たちを見た。

「じゃあ、解くしかないね。聖女様たちに会うためには。そして、聖女様たちが残した謎を解くには」

 シリカはそう締めくくった。全員が頷く。皆、少し怖かった。でも、恐らくもっと怖いのは聖女たちだと、皆が思っていた。


大人たちはサンタクロースが聖女たちだとほぼ確信しているようですね。でも、些細なところが聖女たちと一致しない。この違和感の原因は、何なのでしょうか……?

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