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【第1章】濡れ衣令嬢の平民ライフ
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9話 妖精さんとカツカツ生活


「今日の賄いはマドレーヌです」



「「「「「「「「「「うわぁーい!!」」」」」」」」」」



私は賄いの出来立て新作マドレーヌをお皿に山盛りにして従業員室に持ってくると、本日お手伝いをしにきていた妖精たちが歓喜をあげて机の上に飛び乗ってきました。



ここにいる、人数にしておおよそ10人強の妖精たちは、今日お手伝いしたと《《思われる》》妖精です。


妖精は自由な生き物、朝からいる子もいれば、朝だけしかいない子もいたり、夕方だけ来た子もいれば、実は手伝ったわけではなくお菓子を食べに来ただけの子も混ざります。


実際今日一日で何人の妖精が入れ替わりやってきたのかわかりませんが、この時間に賄いのお菓子を食べに来るのはいつもこのくらいの人数です。


お皿を置くなり、手のひらサイズの妖精たちはそこに群がり、口に運び始めました。



「これ新作?」



「マドレーヌはすでにありますが、初めてのお味」



「よくお分かりで、紅茶フレーバーで作ってみたんです。いかがです?試食も兼ねているので、感想教えてくださいな。」



「いつもより香りが素敵です〜」



彼らは口に運ぶと、妖精たちは次々にニヘラと幸せそうに笑ってマドレーヌを味わっていました。


この世に天国があるとすれば、ここのことなのかもしれません。




「腕上げたな」



「ほんと美味しくなった」



「プロ仕込み」



「最初は黒焦げだった」



「あれは苦かった」



「たまに生焼けだった」



「クタクタだった。」



「昔のことは忘れてよ」



せっかくの天にも登るような浮かれた気分が台無しです。



「みんなのおかげでお店は繁盛だよ」



「お役に立ててる?」



「バッチリ!おかげで毎日お菓子ほぼ完売してるからね」




私はそう答えると、そろばんとノートを取り出し、今日の打ち上げ帳簿をつけ始めました。


いわゆる締め作業というやつです。


個人のお店とはいえ、オーナーの仕事は多忙です。


そんな私の元へ、マドレーヌを食べ終わった妖精から、ゾロゾロとやってきました。


彼らは私が何をしているか理解はできませんが、興味はあるようです。



「いつも何書いてんの?」



「今日、お菓子がいくつうれて、どれだけ儲かったかっていう数字の日記みたいなもんです。」



「へー、難しいでんな」



「儲かりまっか?」



「ぼちぼちでんな」



「でもお店のお菓子売り切れなら、ザックザクなのでは?」



「ザックザクだとどうなる?」



この質問を妖精たちだけで答えを出すのは難しいようです。

誰も返事ができないので、妖精たちは私の顔をじっと見つめました。


訳:解説求む。


お金の概念のない彼らに説明するのは難しいですね……しかし強いて説明するのであれば……



「生活が豊かになって、人やとえて、買う材料や機材も増えて、お菓子の種類も増やせう……感じですかね。」



「「「「「「「おおお」」」」」」」」



以外にも妖精たちの反応は上々でした



「お店も広くできるかも!」



「職人さんも増やせるかも?」



「設備も充実できるかも!」



「オーブン増やそう」



「もっと豪勢なお菓子が食べられるかも!」



「カフェテリアなんか作ってもいいのでは?」



「いーといんというやつ?」



妖精の想像力は豊かでした。

なぜちょっと説明しただけで、教えなかったそんなことまで想像できてしまうのでしょう。


まぁ、でもそれはザックザック儲かった場合のお話です。

カフェの夢は少し惹かれますが、妖精の夢は砕かなければいけません。オーナーとして。



「あー……それは無理かな」



「どうしてー?」



「毎日売り切れ」



「大繁盛なのに」



「王侯貴族に売るお菓子とか、高級なお菓子とか売ってれば、いいんだけどね……。ここは庶民向けにリーズナブルな値段でお菓子を売ってるから。儲けは少ないの。」



「だったら、もっといっぱいお菓子を売ればいいじゃないの。」



「いっぱい宣伝したら、お菓子もっと売れる」



「オーナーの魅力でお客を呼ぶです!」



「我々も全力でお手伝いします!」



「みんな落ち着いて、無理なものは無理なのよ。一人で作れるお菓子の量は、今のが限度。妖精さんに手伝ってもらっても……」



「じゃあ雇おう」



「それは無理ですよ。人を雇うお金までは稼げてないですし。お店もこじんまりしてて狭いし。」



「人が雇えないということはカフェ併設も無理?」



「カフェを作るという案には惹かれるんですけどね……やっぱりお金がありません、カツカツです」



そう、毎日売り切れになる程捌けてはいるのですが、実は経営的にはかなりトントンなのです。



リーズナブルな金額で完売しても売り上げはほぼ家賃と材料費で消えていくのです。


「今はなんとか一人で生きていけるだけのお金は稼げてますが……今でもかつかつなのに……物価が今後上がるようなことがあれば……家賃払えなくなるかも。そのひぐらし分しか稼げてないから貯金の余裕もないし」



「家賃?」



「物価?」



「物価上がるとどうなるの?」



しまった、また説明の難しい質問をされてしまった。

質問をスルーという手もあるのですが、前それをやったら寝るまで「なんでなんで」と詰め寄られたので、疑問は解消しなければいけません。


私は近くにあった保存食用の金平糖を取り出し、残った賄いのマドレーヌを手に取りました。



「えーっとわかりやすくいうと、例えばこのマドレーヌ、1つ売れると10個金平糖がもらえます。」



「おー」



「やったー」



「でもマドレーヌを作るために材料が必要になります。その材料を手に入れるには金平糖が2個必要です。」



わたは金平糖を並べた10個のうちから2個取ると、口の中に運びました。



「あー無くなった」



「8個だ」



「材料費が金平糖2個の間は、この残った8個の金平糖をみんなで分けっこして食べれるのですが……材料を買うための金平糖がさらに2つ必要になったら……」



そう言ってさらに2つ金平糖を残りの8個の中から取り上げました。



「食べれる分が減ってしまう!」



「そして、もしこの状態で家賃が金平糖5個必要だとしたら……?」



「金平糖1個しかないです!」



「1個をみんなで分けっこするのはひもじいです!」



「もし、家賃が払えなくなったらどうなるの?」



「ここを追い出されると思う。」



「ここ追い出されたらどうなるの?」



「お店閉めるしかないわね……」



「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」



妖精たちは一斉にフリーズしました。

よほどショックなお話だったようです。



「そうしたら、もうお菓子は食べれない?」



「今、そんなにまずい状況なの?」



「お店の危機?」



「あ……今はまだ大丈夫だけど……もし客入り維持ができなくなったら……そうなるかもってだけで……」



取り繕いましたがすでに遅し。



「た………た………………」



「「「「「「大変だああああああああああああああああああ」」」」」」」」



あんなにたくさんいた妖精は、文字通り蜘蛛の子を散らすように逃げていきました。



「えぇ………」



ただの想像だけの話で、妖精たちは大きな勘違いをしてしまったのです。

まるで今すぐ潰れてしまうみたいな……


まぁ、いいか。


明日には誤解が解けて、戻ってくるでしょう。


この時、私はあまり深く考えませんでした。

まさか………あんなことになるなんて………思わなかったのです。




妖精1「ここまでよんでくれて、ありがとうがらし!」

妖精2「もし面白ければ評価お願いいたしまうす♡」

妖精3「ブックマーク、お星様、感想、レビュー、どれでもよろしです」

妖精4「いただけると制作の励みになりますです」


妖精たち「「「「よろしくです〜!」」」」

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