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【第1章】濡れ衣令嬢の平民ライフ
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2話 妖精に会えるお菓子屋さん

『会いにいける妖精』をコンセプトにしたのは正解でした。

貴族社会を追放された令嬢でも、やり方と実力次第ではお金儲けはいくらでもできるのです。



「いらっしゃいましまし」



「何になさいますか?」



お客様に声をかけて接客しているのは人間ではありません。

このお菓子屋さんのあちらこちらに無数にいる手のひらサイズの二頭身の妖精です。



「うわぁぁああ!!かわいい!!お母さん見てみて!!本当に妖精さんいたよ!!」



「まぁ……本当ね。こんなに簡単に会えるなんて思いもしなかったわ……それもこんなにたくさん。」



店にやってきた親子連れのお客様は感激の声を上げました。


初めてきたお客様の反応はいつもこんな感じなので見慣れた物です。


改めまして、ここは元令嬢の私が『ノノ・シュガー』と名前を変えて運営している小さなお菓子屋さん。


店名は『妖精のお菓子屋さん』


由来は書いて字の如くです。



「『家で何かなくなったら、妖精さんが幸運を運んできた証拠』、なんて話は昔からよく聞きますが…まさか実在するなんて。」



「この国の言い伝え、『妖精のイタズラ』のことですか。確かに、私も彼らを見るまで言い伝えの存在だとばかり思ってました。」



「……それがこんなにたくさん……どうやってこんなに集めたんですか?」



お客様が驚くのも無理はないでしょう。


そもそも本来妖精は、人前に出たりはしません。

だから、これまで言い伝えとしてだけの存在で、人に姿を見られることはありませんでした。


妖精の姿を見るのは愚か、本当の『妖精のいたずら』だって、一生に一度あるかないか...…もはや人々は実在しないものと認識していた存在です。


それがこんなに大勢の妖精が人慣れしたどころか……



「奥様〜お嬢様〜」



「小腹がすいた時にはクッキーなんていかがですか?」



「満足感をお求めなら、バナナマフィンなんかもあります」



「このキャンディーなんか綺麗でっせー」



「このチョコレートで溶けるような幸せも〜」



「「「「「「おひとついかが?」」」」」」



人間の肩や頭、もしくは台や棚に乗って、人間と視線を合わせて、こんな押し売りレベルの接客営業をしているのです。 


それをしてるのも一人や二人ではなく10人それ以上……無数に店内にいる。


普通に考えてこれはあり得ないこと。


だからお客様がどうやって彼らを集めたのか気になるのは当然のことなのです。


しかしそれはトップシークレット、教えることはできないのだ。

だから私は適当に話を濁すと、注文の品を袋に詰めていった。


そんな私の様子を見ながら、女の子のお客様がこんなことを聞いてきた。



「ねえ、おねぇちゃん」



「なぁに?」



「このようせいさん、おなまえ、なんていうの?」



「名前……知りたいのですか?どうして……」



「この子と仲良くなりたいから!」



そう言って女の子は、妖精が乗った手のひらを私の方に向けた。

ピンクのワンピースをきた二頭身の妖精だ。


妖精の懐きようを見ると、短時間で仲良くなったらしい。

なるほど、名前を知りたくなるのも当然だけれども……



「でも『AB』ってしか言ってくれないの」



実は妖精とのコミュニケーションの上で、これが一番難しい。


彼ら(ようせい)には妖精語というのが存在するそうなのですが、その言葉を人間が聞き取ることはできません。

頑張って人間の言葉に言い換えても、イニシャルでしか名前を言えないのです。


希望者には、私がイニシャルにちなんだ名前をつけるのですが、毎日入れ替わり立ち替わり無数の妖精が来るのでキリがなく、名前をつけたところで、2桁以上の妖精の名前を覚えるのは至難の業。


結果、9割の妖精の名前はイニシャルだけなのです。


なので、お客様からまだ名前をつけていない妖精の名前を聞かれた時は、こう答えることにしています。



「よかったら名前をつけてあげてください。」



そのほうがお客さんも妖精も喜びます。

女の子は『A B』と言葉を何回か句呟いて、必死に名前を考えました。



「じゃあね、アビー」



そして1分くらい考えてその名前が出てきました。

アビーと名付けられた妖精は、喜びの舞を踊り出した。


よほど嬉しかったのだろう。


こうなると、次にどのようなオーダーが来るかというのはおおよそ察しがつきます。



「お姉ちゃん、アビーちょうだい!」



ほら、想定通り。


しかし、彼らは私のペットではありません。


彼らは自由な生き物。


あくまで彼らのとある好意で、お手伝いをしてくれているだけなのです。

だから私がどうこうできる話ではありません。



「ごめんね、妖精さんは売り物じゃなくて、お友達なの。だからあげられないな」



「そーなの?」



そいうと女の子はすごく残念そうな表情を浮かべます。

この断り方は、妖精さんを人道的に見る意味での答えですが、まぁ全く利益を考えずに言っているかと言えば嘘になる。


そんな残念な表情を浮かべている彼女に私はこう言いました。



「だから、会いたくなったらまたおいで」



これをいうと、大抵の人はもう一度来たくなります。

リピーター獲得です。


ほら見てください、この女の子、また来たいというような表情をお母様にキラキラとした表情で訴えています。


少し困ったような表情を浮かべてはいましたが、お母様は『また来ます』と言って商品を受け取るとお店を出て行きました。



ちょうどそんな時、時計から鳩のおもちゃが飛び出して、5時になったお知らせをしてくれました。



「さて、今日も終了!みんなーお片付けして!」



「「「「「「「「はあーい」」」」」」」」」



そういうと、妖精たちは閉店の準備を始めました。

妖精1「ここまでよんでくれて、ありがとうがらし!」

妖精2「もし面白ければ評価お願いいたしまうす♡」

妖精3「ブックマーク、お星様、感想、レビュー、どれでもよろしです」

妖精4「いただけると制作の励みになりますです」


妖精たち「「「「よろしくです〜!」」」」

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