第99話 サーシアのお仕事
現在の精霊教本部はダモンに設置されている。
精霊殿に併設する大聖堂の中に在るんだ。
同じ敷地内に聖女一家の住む屋敷が在って、
毎朝に、一目見ようと人が集まって来るよ。
娘達は愛想よく手を振ったりして、その度に
「わぁ~!」とか「きゃぁ~!」とか歓声が
上がっている。
サーシアとルルナは全く無愛想で、
一瞥もしないで通り過ぎて行く。
それがまた良いみたいで「はぁ~」とか
「ほぅ~」とか熱っぽい溜息が流れるんだ。
まぁ、それでバランスが良いのだろうね。
娘達がアイドル的な人気で親近感を、
サーシアとルルナは圧倒的な権威で
安心感を醸成しているのだね。
***
『今日は何をするのかしら?』
「ハイラム技術省からの定期報告ですね。
午後からは司祭3名の任命式があります。」
ハイラムには、かつて隆盛を誇った魔法科学の
資料が大量に保管されているんだ。
でもその殆どが理解不能の状態でね。
何せ学術論文だから専門用語の羅列なんだよ。
さぁ~~~っぱり解らん!
精霊に聞いても無駄だよ?
発動の手続きをしているだけで、
内容を理解してはいないからね。
魔法具職人ルルベロにしたって、
こうして欲しい!って要望を叶えるだけで、
何故そうするのかなんて知ったこっちゃ無い。
それに以前は魔法が使えなかったから、
呪文が書いて有っても、それが何の魔法か
皆目見当が付かなかったのよ。
でも今は取り敢えず唱えてみる事で、
何が起こるか試せる様になった。
でも慎重にね!
強力な攻撃魔法とかだったら大変だからねぇ。
手探りで少しずつ解読が進められているんだ。
今日はその進捗状況の報告を受けるのよ。
「-----でありまして、第三書庫の”イ”から
”ハ”までは映像技術に関するものである事が
判明いたしました。」
「エイガノッコスですか?あれならもう
再現が出来ていますよ。」
「それがどうも録画後の映像を加工する技術
の様でして。」
「録画後の?」
「はい、映像の不鮮明な部分を修復する
魔法ではないかと考えております。」
『今なんと言いまして?』
「あら?珍しいですねぇ。
技術系の話しに興味を持つなんて。」
『技術に興味なんてありませんわよ。』
「ではどうして?」
『どうでも良いでしょう?そんな事。
それよりも呪文はどうなっていますの?』
「呪文はどの様なものですか?」
「はい、それが三つの呪文の複合魔法でして、
これがまた難解なのです。
互いにどのように作用しあって-----」
『いいから早く見せなさいな!』
「とりあえず見せて下さい。」
「は、はい、これで御座います。」
【ウスメアケール】
【ユメカナエール】
【コッソリミール】
おろっ!こではっ!あれかっ!
あれなのかっ!
『間違いありませんわね・・・』
「何か心当たりが有るのですか?」
『で、伝説のモザイクキャンセラーですわ!』
「直ぐに焼却しなさいっ!」
「え!しょ、焼却で御座いますか?」
あぁ~ルルナはそーゆーのに厳しいからなぁ。
パンチラこそが至高のエロイズムだと言う
主義だから、モロダシは認めないんだよ。
『まっ!待ってルルナ!待って頂戴な!』
「これは存在してはいけない魔法です!」
『お願い!これは!これは人類の夢なのよ!』
「そんな夢は見なくて結構ですよ!」
そうか~
サーシアが最初に転生した頃の地球では、
まだAI技術が発展して無かったもんねぇ。
あのねサーシア、実はね・・・
いや・・・
なんでもないよ~
例え内容が品性下劣なものであったとしても
焚書は「知」に対する冒涜だと説得して、
封印する事で、どうにか落ち着いた。
良かったね!サーシア~




