第97話 サナのお仕事
「ちゃうちゃう!もっと肩の力抜かな!
イメージが大事やっちゅうたやろ~
そんな怖い顔で睨んどったら、
めっさ重たそーやんけ。」
「は、はい・・・」
「ええか?頭ん中で絵ぇ書いて動かすんや。
得意やろ?
毎晩ネ~チャン動かしとるやろが。」
「あ、いや、まぁ、えへへへへ」
「それとおんなじや。
呪文を思い浮かべてやな。
それをふわぁ~っとさせてやな。
そいで、そのまんま読んだらええねん。
もっぺんやってみ?」
「キャ、キャリュキュノワ~リュ!」
「呪文を浮かべるんやぞっ!
ネェ~チャンちゃうぞっ!」
「す、すみません!」
「それとな、ちゃんと発音せぇ~や。
カルクナ~ルや。
舌巻き過ぎなんじゃ、カメレオンか?
いや知らなんだらええねん。
そこ引っかかるなや、聞き流さんかい。
もう~しゃぁ~ないな!
ほたらこないしょ!
呪文を書いた看板持ったネェ~チャンを
想像せぇ~や。
そのネェ~チャンがフワフワ浮いとるんや。
どや?浮かんだけ?
ほな看板の呪文読んでみ?」
「カ、カリュクナァ~リュ!」
「おぉ!出来たやないかい!
今度からそれで行こか!
ネェ~チャンに礼言~とけ。」
「はい!ありがとうございました!」
オッサンでは無いよ?サナだよ?
サナが生徒に魔法を教えているの。
ここはダモン魔法塾師範養成所。
精霊教の修道士を対象に、宣教師や司祭を
養成する所だよ。
生徒の個性に合わせた教え方で高い信頼を
得ているんだ。
***
「ルーシャ分校でっか?」
「えぇそうです、ここはジャニスに任せて
新校開設を指揮して下さい。」
キキル連合の首脳会談で、ルーシャ王国から
分校の開設を強く要望されたんだ。
実際、モルゴン分校だけでは需要に対応が
出来ないからね。
そろそろ新設しないとなぁ~って考えてた
ところだったのよね。
「スタッフは現地調達ですかいな?」
「講師を二人連れて行って、
後は現地で育成して下さい。
2年で出来ますね?」
分校の立ち上げはサナのお仕事だもんね。
モルゴン分校の時は5歳だったよね。
こんな幼女が?って最初は舐められたけど、
爆裂魔法で小山を吹き飛ばして見せたら、
みんな素直になったね。
「そーでんなぁ~、初級クラスやったら。」
「えぇ、それで構いません。」
「了解ですわ!
ほいで?いつから行きますのん?」
「早い方が良いですね、準備が整い次第。」
「10日で準備しまっさ。」
「それでお願いしますね。」
「ところで、お母はん。」
「何ですか?」
「ラナ姉さん、婚約しやはったんでっか?」
あれ?言って無かったの?ルルナ。
相変わらず報・連・相が疎かだねぇ。
いやね、精霊ってそーゆーとこ有るのよ。
何でかは分からないんだけどね。
人間になった今でも、そのクセが抜けない
のよね。
「えぇ、そうですよ。
ハイラム聖教国の第五王子です。
来年には王太子となりますから、
その際に正式に婚姻の儀を執り行います。」
「第五?末っ子のバビルでっしゃろ?」
「えぇ、そうですよ。」
「上をすっ飛ばして立太子でっか?」
「えぇ、そうですよ。」
「文句出まへんかいな?」
「文句など言わせませんよ。」
「またサーシア様の気まぐれですかいな。」
「違います!
エミールの名誉を守るためです!」
実は斯々然々でと経緯を説明したよ。
「そら災難でしたなぁ。」
「全くですよ!乙女の貞操に傷をつけられて、
泣いていましたよ!可愛そうに。」
「いや・・・バビルが・・・」
***
さぁ~急いで準備しないとね~
講師二人の人選と、計画書の作成と、
ルーシャの地政面も頭に入れとかないとね。
「サナちゃぁ~ん」
「うぎゃぁ~~~~~!
おっ!おっ!お父ちゃん!
う、後ろから声かけんといてって
ゆーてるやろぉ!」
「ご、ごめん・・・」
サナの父親~
オラン~
もう娘が可愛くって仕方が無い!
サナはなんだかんだで修羅場をくぐって
来たからまだ大丈夫だけどね。
ジャニスは怖がっちゃってねぇ。
最近でこそ慣れたけど赤ん坊の頃は
抱っこすると泣き出してね。
「お、鬼どすえ~大江山の鬼どすえ~」
「ジャニス、お父ちゃんや。
鬼とちゃう、よ~見てみぃ・・・
・・・すまん・・・鬼やったわ・・・」
顔が怖い~~~
「そや!お父ちゃん!頼みがあんねん!」
「ん?何だい?」
嬉しそうだねぇオラン。
「一緒にルーシャ行ってくれへんかいな?」
「ルーシャ?いいよ!」
「分校作るねん、二年計画や。」
「ジャニスは?」
「あの子はお留守番や、こっちの面倒を
見やんといかんしな。
手ぇ~空いた時は帰って来たらええわ。」
「うん、わかった!」
オランは聖騎士の階位を持っているんだ。
もちろんルルナの騎士だよ。
虎の穴の教官をしている。
魔法講師としても優秀なんだ。
でも顔が怖い~~~~




