第95話 アーミアのお仕事
前世では極度の人見知りだったアーミア。
身内の、それも家族と認識する者以外とは、
まともに会話が出来なかった。
まぁ、結婚して子供が出来てからは、
それも随分と改善されたんだけどね。
社交性は無きに等しかったね。
今も・・・
アーミアとサラーラのお仕事は、
各地の教会で開かれる集会に顔を出して、
信徒達を祝福する事なんだ。
具体的には「祝福の飴ちゃん」を配るのよ。
一人ずつに手渡しであげるの。
集会に参加できる人数には限りがあるのね。
だいたい千人くらいかな?
信徒はそれぞれ固有の番号を持っていてね、
今回は○○番から□□番までって具合で
参列するの。
でも一定のお布施をすれば特別枠があってね。
順番に関係なく祝福してもらえるのよ。
無料枠の経費はそれで賄うんだよ。
富の再分配ってやつね。
特別枠の担当はサラーラ。
「あなたに精霊の祝福を。」
サラーラは元々サービス精神旺盛だから、
相手の目をしっかり見て、にこやかに
微笑みながら渡してあげるんだ。
そっと手を添えて丁寧にね。
「あぁ~、聖女様ぁ~、ありがたやぁ~」
みんな目に涙を浮かべて飴ちゃんを受け取る。
両手で包み込む様にして胸に抱く。
毎朝にペロッとひと舐めだけして、また包んで
大事にしまい込むんだ。
出来るだけ長持ちする様にね。
ペロペロキャンデーだから一年くらい粘る人も
いるらしいよ。
アーミアは無料枠の方ね。
「・・・に・・・の・・・を。」
それに引き換え俯いて、ボソボソと
何を言っているのか分からないアーミア。
サコマドロップみたいな一粒を手のひらに
ポトンと落とす。
呆気なしの愛想無し~
無料枠とは言え、どえらい差だな!
「???あ、ありがとうございます?」
いまいち有難味が無いから、
大抵は帰り道に食べちゃう。
なんならガリガリ噛んで、すぐに無くなる。
「はぁ~疲れた~」
「もう少し愛想よくしたら?お姉様。」
「だぁってぇ、数が多いんだもの~
知らない人ばっかだしぃ~
サラーラも手伝ってよぉ~」
「私とお姉様が並んで配ったらクレームが
殺到するわよ?不公平だぁ~って。」
「なんで?ちゃんと一人ずつ配ってるよ?
前はみんな喜んでくれたのに。」
「それは前世の話しでしょう?」
「そーだけど、同じようにやってるのに、
なんで駄目なの?
もっと感謝してたわよ?」
それはねアーミア。
前世ではサーシアが無茶苦茶だったからだよ。
鷲掴みした飴ちゃんをブワァ~っと投げて
一言も喋らずに帰っちゃったもんね。
みんな慌てて拾ってたからね。
だから娘達が一人ずつ配って呉れた事に
物凄く感激したんだよ。
「どうせなら私もそーしようかしら?」
「駄目よぉ~あれはお母様だから通用するのよ
実績と迫力が違うもの。」
「じゃぁお母様が先にやって、その後で
私がすれば喜ばれるんじゃないの?」
「そうだけど、お母様はお忙しいでしょう?」
「忙しいって言ってもラナ姉様の世話焼きを
しているからでしょう?」
「まぁ・・・そうね・・・」
下の妹達はエミールをラナ姉様、
アリーゼをリコ姉様と呼んでいるんだ。
なんとな~く上の二人と下の二人で、
二組のセットに分かれてるのよね。
「ちょっと過保護過ぎるわよ、ラナ姉様に。
私達は放ったらかしなのに。」
「私達を信頼して下さってるのよ。
ラナ姉様は、ちょっとアレだから。」
「前はもっと構って下さったわ!」
「前世のお姉様は、少しアレだったから。」
「え?どーゆー事?」
「駄目な子ほど可愛いってことよ。」
「私そんなに酷かったかしら?」
シスコンのマザコンでコミュ症なのに狂暴で、
問答無用の魔法をブチ込む爆弾娘だったね!
結婚するまでサーシアにベッタリだったよ。
すっかりエミールにポジションを取られて
ご不満の御様子。
「今度お母様にお願いしてみるわ!」
「何を?」
「一緒に飴ちゃん配って!って。」
「いやぁ~それはぁ~」
***
「えぇ!もちろん宜しくてよ!アーミア!」
「ありがとう!お母様!」
だよねぇ~
娘のお願いを断ったりしないよねぇ~
それにアリーゼから釘を刺されてるんだよ。
邪魔だから付いて来るなって。
ガックシ落ち込んでた所にアーミアからの
お願いが来たから飛び上がって喜んでるよ。
すんげぇ~張り切ってる。
きっとロクな事にならない・・・




