第93話 エミールのお仕事?
『まだ始まらないのかしら?』
「とっくに劇は終わりましたのにね。」
『段取りが悪いですわぁ~』
「ちょっと見て来ましょうか?」
『駄目よぉ、内緒で来ていますのに。』
サーシアとルルナだ~
一応は庶民風に変装してるけどさぁ、
めっちゃ目立つよねぇ。
二人とも子持ちのアラサーだけどね、
どう見ても二十歳前後の花盛り。
しかも超~美形!
小柄で華奢な体形に愁いを帯びた眼差し、
儚げな佇まいのサーシア。
同じく小柄でも健康的で、陽だまりに戯れる
小鳥の様なルルナ。
詐欺だ!
見てくれ詐欺だ!
みんな騙されるなよっ!
身内以外の存在価値を無視する人格破綻者と
その後援会会長だからな!
「お、おい、見てみろよあれ。
すんげぇ~美人だぜぇ。」
「この辺のもんじゃねぇ~なぁ。」
「あんな色の白い肌見た事ねぇ~ぞ。」
「顔小っちぇ~~~」
だから騙されるなって!
「お前、声かけて来いよ。」
「お、俺が?」
「あぁ、いつもやってるだろ。」
「いやぁ~ありゃ無理だ。」
「なんで?」
「勘ってやつだ、住む世界が違うぞあれは。」
おぉ~さすがナンパ慣れしてるねぇ~
その勘は当たってるよん!
「なぁにビビってんだよ、お前が行かねぇなら
俺が行くぜ。」
「やめとけって、あーゆーのに手を出すと
ろくな事にならねぇよ。」
「まぁ~見てなって、酒代おごれよ?」
「ちょっと待てって!おいっ!」
あぁ~行っちゃったぁ~
いきなり殺しはしないだろうけどさ。
いや、どうかな?
予測不能だよ~
「よぉ、ねぇ~ちゃん!どっから来たんだ?」
『遅いですわねぇ~いつまで待たせるの
かしらね。』
「何かあったのかも知れませんよ。」
「カエル料理の美味い店が在るんだ。
一緒に行かねぇか?」
『やっぱり見に行った方が良いかしら?』
「その方が良さそうですね。」
「おいっ!聞いてんのかよ!」
『ん?何ですの?あなた。』
「何か用ですか?」
「おぉ、ちょっと俺達に付きあえよ。」
『お断りしますわ。』
「所用が有りますのでどいて下さい。
さぁ行きましょうサーシア。」
「そんなつれない事言うなよぉ、
お前ぇ達みてぇな別嬪さん初めて見たぜ。
おごってやるから一緒に酒でも飲もうや。」
『ドゥゲィザー』
「げふっ!」
ほらぁ~言わんこっちゃない~
サーシアの重力系精神魔法ドゥゲィザー。
およそ5Gの重力で地面に押さえつけるんだ。
体重の5倍の圧力だね。
同時に精神コントロールで土下座させる。
大抵は気を失うよ。
良かったね、殺され無くて。
『さぁ、参りましょうルルナ。』
「はい、サーシア。」
***
「で?見ましたの?どうですの?」
「ひ、ひへひゃへん・・・」
顔面をボコボコにされた男が、アリーゼに
詰問されている。
あの後、エミールの悲鳴を聞いたパイパイに
取り押さえられて侍女軍団にリンチされたの。
エミールは蹲って泣いている。
一番見られたく無い所だもんねぇ~
「大丈夫よエミール、泣かないで。
見て無いそうよ。」
「う、嘘よぉ~目が合ったもの~
正面から目が合ったものぉ~」
「いい加減な事を言うと承知しませんよ!」
「ひょ!ひょんひょえふ~ひへひゃへん~」
真正面からなのが幸いだったね。
いやね、パイパイが作ったオマルはね
白鳥の形をしていたの。
頭の所にハンドルが付いてるやつ。
正面から見るとスカートまくって
パンツをずらして白鳥に跨った
変態ライダーだけどね。
お股丸見えでは無いのよ。
斜め前からだったらヤバかったね~
「お、おひょひゃひほえははや、はひはは?
ひょおひょっへほほいははへへふ。」
「お!音は聞いたんだぁ~!うわぁ~ん!」
『今直ぐその耳を削ぎ落としなさい!』
「お母様!来ていらしたのですか!」
『話は聞きましたわ、エミールを辱めて
生きて居られるとは思わないことね!』
「お母様~~~」
『あぁ~エミール!可愛そうに!
さぁ、お母様と一緒に帰りましょうね。
パイパイ、そやつの耳を削ぎ目と喉を潰して
密林の奥へ捨てて来なさい!』
「いえす!まむ!」
「お!お母様!それはやり過ぎですわ!」
『あら?どうして?アリーゼ。
エミールが泣いているのよ?当然でしょう?』
「お花摘みを偶然見ただけですわ。」
『苦しみ抜いて死ぬべきではなくて?』
「エミールも不用心だったのです。」
『まぁ!エミールは何も悪くありませんわ!』
「悪いなんて言ってませんわ!」
『あぁぁぁルルナぁ~アリーゼがぁ~
アリーゼがぁ~~~~~~』
「サーシアをイジメてはいけませんよ、
アリーゼ。」
「イジメてませんわよ!ルルナはお母様に
甘過ぎますわよ!」
「べ、べつに甘いわけでは・・・」
うわぁ~ルルナに飛び火したよぉ~
レイサン家唯一の常識人アリーゼ。
誰もアリーゼには勝てない。
怒らせると口を利いて呉れなくなるんだ。
サーシアはそれに耐えられない。
だから~
『じゃ、じゃ、じゃぁどうすれば良いの?』
「エミール、あなたはどうしたいの?」
「わ・・・私は・・・」
「バビル!バビル!そなたはなんてことを!」
控室で待機していたバイアスが業を煮やして
家来に様子を見に行かせたんだ。
そしたら末っ子のバビルが聖女に無礼を
働いて成敗されようとしていると聞いて
飛んで来たんだよ。
「おや、知り合いですか?」
「ル、ルルナ様!こやつは私の息子バビルに
御座います!」
『まぁ!そうなの?』
「い、いったいどのような粗相を致したと
言うので御座いましょうか?」
「エミールの貞操に傷をつけたのですよ。」
言い方ぁ~~~ルルナ言い方ぁ~~~
でもまぁ、かつての貴族社会だったらそうか。
下半身モロ出しの所を見られたら傷物だよね。
今はそれほどの大打撃でも無いと思うけどな~
サーシアもルルナも前の感覚を引きずってる
からなぁ~
「な!なんと・・・大それたことを・・・」
いや、サーシアとルルナが大げさなだけで、
アリーゼが止めてるから大丈夫だよ。
「この上は、我が手で始末を致しまする!」
こらこら!話をややこしくするな!
剣を抜くな!
「ひひふへ・・・」
「バビルよ、そなたもロンドガリアの男だ。
潔く覚悟を致すが良い。」
「・・・はひ・・・ひひふへ・・・」
「あ・・・あの・・・待って・・・」
さすがにマズいと思ったエミールが止めに
入った。
「お待ちなさい!剣を収めなさいバイアス!」
「しかし、リコアリーゼ様・・・」
「二度も同じ事は申しませんわよ?」
「はっ!」
剣を収め片膝を付き命を待つバイアス。
内心は、ほっとしている。
「エミール、あなたが沙汰を下しなさい。」
「私は・・・その・・・ちゃんと・・・」
『責任を取れと言う事ですわね!』
「王の息子なら王子ですからね、
嫁ぎ先として不足は無いですね。」
「え?いや・・・そう言うわけじゃ・・・」
「それなら彼を王太子にしなさい。
聖女の夫として相応しい地位を。」
「お、お姉様・・・待って・・・」
「承知致しました!」
『安心なさいなエミール。』
「名誉は守られましたよ。」
「先を越されちゃったわねぇ~」
『あら?あなたも結婚したいの?アリーゼ。』
「相手がいませんわ、お母様。」
「え?え?結婚?え?うそ・・・」




