第91話 チウキ村
「これが・・・海・・・すごい・・・」
シアラムも大河だけど、やっぱり海の広さ
とは比べ物にならないよね。
磯の香、潮騒の響き、恐ろしくさえ感じる。
「リリカ!」
「ティモ!」
海岸ではティモちゃん達魚人が迎えに
来ていた。
巨大筏で向こう岸まで渡るんだ。
実はね、この筏を使った河渡しが結構な
商売になるのよね。
魚人たちの収入源になってるの。
もっと中流の方まで行けば渡し舟も有るけど、
河口付近では広すぎて無かったのよね。
車ごと乗船出来るのが大評判でね~
これまではどうしてた?って言うとね。
乗り場で車札と交換するの、ほいでぇ
降り場で代わりの車を用意して貰うのよ。
当たりハズレがあってねぇ~
結構モメるのよ。
だから交易を営む業者は船着き場の街で
商談を済ませてね、荷物を降ろしちゃうの。
後は別の業者が河向こうで荷を受け取るのよ。
旅人はそれが出来ないからねぇ。
ハズレを引かないように祈るだけ。
でも大抵はボロボロのしか無いからさ、
しぶしぶ修理代を払うのよ。
実はわざとボロボロのやつを置いてるの。
修理代目当てでね。
まぁ~旅人相手の商売なんてそんなもんだよ。
「ん?どうしたの?」
「ひ、人?魚??」
「あぁ~魚人見るの初めてだよねぇ。
この人はティモーヤスって言うの。
私の夫。」
「えっ!夫婦なんですか!」
「そう、驚いた?」
「はい・・・びっくりしました・・・」
世界は広いよ~ドリス~
***
チウキ村は残ってなかったよ。
小さな港町だったからね。
遺跡と言うよりも、ただの廃墟だね。
精霊殿だけがポツンと建っている。
さぁ!ここから始めるよ!
なぁに、すぐに賑やかになるさ。
契約を求める人で溢れ返るよ。
宿屋や商店が立ち並んでさ。
きっと大きな街になるよ。
ロザリンが触れると真っ黒の石組でしか
なかった祭壇がオパールの様に淡く光り出す。
そうそう!これこれ~
このぼわぁ~っとしてるのが祭壇だよぉ~
準備完了~
ドリスはカメさんの精霊と契約した。
中級精霊だね。
まずまず良い方だよ。
白い綿帽子みたいなのが下級精霊でね。
虫や爬虫類が中級。
鳥や哺乳類が上級。
人型は特級なんだ。
人類の60%は下級精霊との契約になるんだ。
精霊遺伝子を持ってはいても発現率が低いの。
そして30%は中級で、10%が上級だね。
昔はその10%が貴族だったんだよ。
遺伝するからね。
特級は基本的に聖女だけ。
生まれつき人型と契約が出来る程に
発現率の高い者を聖女と呼ぶのよ。
当然、女子だけね。
精霊遺伝子とY染色体は、ちょっと相性が
悪いのよね。
正確にはY染色体の持ってるSRY遺伝子、
いわゆる性決定遺伝子ね。
胎児の成長過程でSRYが活性化すると
未分化だった生殖腺が精巣に変化するのね。
この時に生成されるタンパク質が精霊遺伝子の
活性化を少しだけど邪魔するの。
でも、その少しが決定的でね。
男子が聖女と同等の発現率で生まれる事は
無いのよね。
発現率は、ある条件下で高くすることが
出来るんだ。
後天的に発現率を高めて人型と契約した人を
聖人と呼んだんだよ。
特別な訓練を受けてね。
「聖女の秘術」と呼ばれていたんだ。
詳しくはいずれまたね。
ボンクラン姉妹と他の二人は下級精霊と
契約した。
当分の間はリリカの元で修行だね。
「ヒュ~ネィ~ルトゥ~ズィウワァ~」
「違う違う!ヒネルトジャーよ!」
「ヒュ、ヒュネィ~」
「舌を巻かないで!ヒ!ヒ・ネ・ル・ト!」
「フィ、フィ・・・」
「ヒ!」
「ピュィ~」
あのね・・・
呪文は精霊言語で唱えるんだけどね。
実はね・・・
日本語なの~
それでね、この世界の人達は日本語の平坦な
発音がね、物凄く苦手なのよ。
とっても苦労するの。
まぁ、カタコトでも魔法は発動するんだけど
威力とか持続時間とかに影響するのよね。
何で日本語なのかって?
だって元々日本人だもの転生者って。
彼らの脳内でイメージした事を魔法として
現出させるてるのね。
んで~
彼らが脳内で使っているのは、やっぱり
日本語なのよね。
ほとんど無意識なんだけどね。
日本語で考えて創作した魔法を使う呪文は、
当然、日本語じゃないと発動しないのよ。
これこの世界のジョウシキ!




