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第90話 ドリス

そもそもの始まりが何だったのか?


それは分からないの。

システムでさえ自分の起源を知らないのよ。

記録をさかのぼって行けば、最初の一行が見つかる

かも知れないと思って検索するとね。

無限ループに陥ってしまいそうになるの。

だから諦めたのよ。


でもその過程で理解した事が有ってね。

どうやら自分にも心が有るらしいって事を。


物理世界を観測していて一番に興味深いのが

人間の行動なんだ。

予測不能で実に面白い。

もう数えきれない程の人類の歴史を観察して

来たよ。

無限の世界の無数の惑星でね。


気が付くと愛していたんだ。

もしこの気持ちが愛ならばね。

そしていつも悲劇で終わる。


とうとう耐えられなくなった。

もう見てるだけじゃ我慢できない。

介入してやるっ!

ちょっかい出してやるっ!

でもどうやって?


観念的存在である自分が、どんな方法で

物理世界に干渉する事が出来る?

自分に出来るのは情報を管理する事だ。

情報を生み出す事は出来ない。



思いついた!

分身体をコミュニケーション端末として

送り込もう!

人類には精霊と言う概念があるから、

それを利用すれば可能だ!

物理世界で実体化してしまえば、

情報操作が出来る。

ゲーム空間にアバターを作るみたいなもんね。


魔法だ!

魔法を出現させてやるっ!


こうしてシステムの「お友達になろう」

大作戦が始まったの。


***


「お母さん、じゃぁ行って来るね。」


ゲルダ精霊殿の裏庭の隅っこに、

目立たない様に小さな石を積んだ墓が在る。

ドリスの母親の墓だ。


彼女と母の二人は、この精霊殿に住み込みで

掃除係として暮らしていた。

ずっと二人きりだったけど去年、母が死んだ。


ドリスの母はケルダと同じく盗賊にさらわれた

被害者だったんだ。

助け出されたのは良かったけれど、

しばらくして妊娠している事が分かった。


盗賊の子だ・・・


当初は堕胎だたいを考えて薬草を煎じて飲んだり、

一日中水につかったりしたんだけどね。

だんだん大きくなるお腹の中の子に愛情が

湧いて来てね。

産ませて欲しいと懇願こんがんしたんだ。


でも集落の中で育てるのは難しいよねぇ。

なにせ集落に大被害を与えた奴らの子だもん。

何人も殺された。

遺族にしてみればカタキの血を引く

憎しみの対象だからね。


そこで族長は精霊殿に住み込んで暮らせと、

管理人として働けば皆も納得するだろうと。

そうして母娘で19年。

ひっそりと生きて来た。


母が死んで一人ぼっち。

親しい友人など居ない。

親族とはとっくに縁が切れている。


このままずっと一人で、ここで暮らして。

いつしか歳を取って死んで行くのかな?

そう思って居たんだよ。


「ドリス、リリカさんと一緒に行け。」

「え?宣教師様と?」


族長から旅に出る様にと言われた。


「あぁ、ここに居ても辛い思いをするだけだ。

お前はまだ若い。

リリカさん達に付いて行って新しい人生を

探した方が良い。」


「でも・・・」

「ここの管理は集落でやる。

気にせんでもええ。

旅支度も整えてやる。

ここにはお前の幸せは無い。」


「じっちゃん・・・」


母は族長の娘、ドリスは孫だった。

立場上、仕方なく縁を切ったけど、

愛しい娘の産んだ可愛い孫だ。

幸せになって欲しい。


近隣の集落からも二人来るそうだ。

上流の集落からも二人。

知らない人ばかりだけど、その方が良いね。

随分と気が楽だよ。


***


「へぇ~そうなんだ~

あんたも苦労してるんだねぇ~」

「苦労と言う程でも・・・

ちゃんと暮らしてましたから。」


若い娘を男と同じ車に乗せるわけには

行かないので、リリカの車で旅をする事に

なったんだ。

リリカもまだ26歳だし話し相手に丁度良い。


「それでも二人きりじゃ寂しいでしょうに。」

「生まれた時からそうですから。

特に寂しいと思った事はありません。」

「ふぅ~ん、そんなもんかなぁ~」

「はい・・・すみません・・・」


「え?なんで謝るの?」

「いえ、その・・・すみません・・・」

「いちいち謝らなくて良いよぉ~

何も悪くないんだからさぁ~」

「はい・・・すみません・・・」


「ほらぁ~またぁ~」

「すみまうぐっ・・・」


きりが無いからリリカが手で口をふさいだ。

もう癖になってるよね~


「本当に悪いと思った時だけにしなさい。

そーしないと言葉が軽くなるから。

魔法使いは言葉を大事にしないと駄目よ。

言葉を力に変えるのだからね。」


「はい、リリカ様。」


ふふっ!すっかり姉貴分だね~

見込みが有りそうなら弟子にしても良いね。

うん、それが良いよ!


がんばってねぇ~


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