第89話 ボンクラン姉妹
復活ぁ~~~つ!
あの頃のぉ~~~
輝きはぁ~~~
この胸の中でぇ~~~
いつまでもぉ~~~~~~
***
魔法が復活して人々が最初に驚いたのは
精霊が見える様になった事だね。
人型精霊以外の下級精霊まで認識できる。
こんなに居たのかっ!
って感じね。
未契約の精霊は、薄っすら透けてるから
直ぐに精霊だと分かるよ。
モスピの祭壇が再稼働した事で、現在の
人類の精霊遺伝子の構造が登録されて、
それに合わせて同期周波数が調整されたの。
後は各地の稼働済みの祭壇で契約すれば良い。
もちろん精霊教会が管理していない祭壇は
休眠状態のままだよ。
宣教師が派遣されて、何なら力ずくで
管理下に置く。
独占するに決まってるじゃん!
宗教統一が目的なんだからさ!
無理強いはしないよ?
嫌なら入信しなくても良いよ?
でもさぁ~
周りのみんなが魔法を使ってるのに
指を咥えて見て居られるの?
便利だよぉ~
楽しいよぉ~
お布施だってちょっとで良いんだよ~
コスパ最高だよぉ~
もう人生観変わっちゃうよ~
次に仰天したのが魔法通信。
通信と言うよりも郵便かな?
クチバシの大きい鳥の姿をした精霊が
お便りを運んで来るの。
上位の精霊と契約しないと無理だから
今の所は精霊教本部からの一方通行だけどね。
これまでに縁の有った集落の長に、
サーシアからのお手紙が届いたんだ。
<宣教師が行きますから宜しくね。>
相変わらずだなぁ!
他にも色々と言う事は沢山あるだろうが!
精霊殿の管理の事とか、入信のお誘いとか、
魔法の便利さとかさぁ。
まぁ、百聞は一見に如かず。
実際に見るのが一番だけどさ。
そんなわけだからリリカたちは行く先々で
大歓迎されてね。
質問攻めに合ったんだよ。
今はゲルダ遺跡の近くの集落。
あそこの精霊殿は、いつからかそう呼ばれて
いるんだ。
「入信したら、直ぐに魔法が使えるのか?」
「どんな精霊と契約出来るんだ?」
「契約料はどれくらいかかるんだ?」
気になるよね~
「精霊契約の後で講習を受けて貰います。
どんな精霊と契約するのかは人によって
違います。
精霊契約に費用は掛かりません。
講習を受ける時に授業料を頂きます。」
講習で呪文を教えて貰ってね、
祭壇で使用者登録をするの。
登録しないと呪文を唱えても無効なんだ。
登録不要なのは聖女だけ。
その場で即席で作った魔法が使えるの。
聖女だけの特権だね。
新規入信者特典サービスで無料の呪文も有る。
手のひらから水が出る「ヒネルトジャー」
照明魔法具を光らせる「アカルイパショナル」
お湯を沸かせる「ユーワック」
水を凍らせる「カチコッチン」
下級精霊との契約でも使える魔法だよ!
これだけでも生活は激変するよっ!
コップ一杯の水なんて楽勝だし、
頑張れば風呂桶もイケるかな?
照明具なんて大量に発掘されてるから、
大抵の人は持ってる、お皿としてだけど。
火が無くても調理が出来るし、
凍らせて食料の保存が可能になる。
「今すぐ入信するから魔法を教えてくれ!」
デモンストレーションで幾つかの魔法を
披露して見せた。
入信希望者が続出したよ。
でも赴任先は決まってるからねぇ。
「精霊殿を管理して司祭の受け入れ準備を
整えて置いて下さい。
早くして貰えるように頼んで置きます。
どうしても待てない人はチウキまで来て
下さい。」
リリカの赴任するチウキ村は、かつて
デカシーランドと呼ばれた地域に在った
小さな港町なんだ。
バルドー帝国の植民地だった所。
今でも在るのかなぁ?
「リリカさぁ~ん!あんたに逢いたいって
人が訪ねて来てるよ~」
「?そうですか?どうぞ通して下さい。」
暫くすると、がっしりと体格の良い二人の
御婦人が入って来た。
「いやぁ~ん!お久しぶり~!」
「あら?でもちょっと違うわね~」
「そうねぇ~もっと美人だったわね。」
「迫力も凄かったわよ。」
「思い出しただけでチビリそうよぉ~」
「やだぁ~お姉様ったらぁ~」
なんだぁ?こいつらぁ?
「あの・・・どちら様でしょうか?」
「忘れちゃったのぉ?傷つくわぁ~」
「私達をこんなにしておいて~」
ん?なんか見覚えが有るぞ?
「私はアイク。でも今はアイリーンよ!」
「ビリーよ!ビリージーンって呼んでね!」
あ~~~!思い出した!
ボンクラン兄弟だぁ!
そうかぁ~
本当に姉妹になったんだぁ~
噂を聞きつけて飛んで来たんだってさ。
ぜひ入信したいって。
ようやく事情が呑み込めたよ。
「あれはルルナ様ですよ、私は弟子の
リリカです。」
「あら、そうなのね。」
「おかしいと思ったのよねぇ。」
あれから心を入れ替えて真っ当な商売を
しているのだとか。
住民も戻って来て町も賑わいを取り戻した
そうだよ。
町の発展の為に魔法を使いたいんだってさ。
うんうん、良い心掛けだね!
ゲルダ地区からは3人が同行する事になった。
ボンクラン姉妹も一緒に行くと言ってる。
イクアナ車が2台増えて4台になった。
まぁ、これくらいならどってこと無いよね。
「カルクナール!」
リリカが4台の車に重力魔法を掛ける。
子供がちょんと押した程度でもスス~っと
動かせるよ。
んじゃぁ~出発ぁ~つ信仰ぉ~~~!




